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カンヌライオンズ2026「Creative Brand部門」受賞作まとめ

この記事のまとめ

カンヌライオンズ2026で新設された「Creative Brand部門」の受賞結果と、その意味を整理します。読みどころは次のとおりです。

  • 2026年6月22日から26日まで開催された第73回でCreative Brand Lionが新設
  • 個別キャンペーンではなく、組織の仕組み・文化・能力を評価する新しい審査軸
  • 初代グランプリはAB InBev、73件のエントリーからGrand Prixを含む2つのLionを受賞
  • Creative Brand of the YearはHeineken、日本からは花王がBronzeを獲得

カンヌライオンズ2026の概要と新設部門

カンヌライオンズ2026の概要と新設部門

開催日程と第73回目の位置づけ

カンヌライオンズ2026は、世界のクリエイティビティを称える祭典の第73回として開催されました。

会期は2026年6月22日から26日までの5日間で、応募開始は2026年1月15日でした(参照*1)。全カテゴリーでは、新しいAwards Integrity Standards(応募・審査の信頼性に関する基準)が導入され、応募内容の信ぴょう性、成果の正当性、審査の公正さが譲れない柱として位置づけられました(参照*2)。

この整備は、応募や審査に対する信頼を守るための土台づくりです。新設賞を含めた今回の評価基盤が、どのような姿勢で運営されているのかを読み取る手がかりになります。

Creative Brand Lion新設の背景

新設されたCreative Brand Lionは、これまでの「個別キャンペーンを称える」という枠組みを広げるものです。

70年以上にわたり、ブランドの心をつかみ需要を生み出したキャンペーンを称えてきましたが、2026年からは、そうした突き抜けたアイデアを生む要因そのものを評価対象にすると示されています(参照*3)。この賞は、世界水準のクリエイティブマーケティングを必然かつ繰り返し可能にする仕組み・文化・能力を築いてきた先見性のあるブランドを称え、クリエイティブの潜在力を持続的な事業インパクトに変える実践を評価します(参照*1)。加えて、ブランドから直接応募された作品の比率が2025年の8%から2026年は10%に増えていることも、ブランド自身の存在感の広がりを示しています(参照*2)。

つまり、称賛の対象が「作品」から「作品を生み続ける組織そのもの」へと拡張されたのです。経営や組織づくりの視点で、クリエイティビティを長期の資産としてどう内に組み込むかが問われる場になったといえます。

従来部門との評価軸の違い

Creative Brand Lionは、個別のキャンペーンを表彰しない点が最大の特徴です。

代わりに、世界水準のクリエイティブを繰り返し実現する内部の仕組み、文化、能力を築いた組織を評価対象とします(参照*4)。また、測定可能な事業成長と長期的なブランド価値を生み出すシステム、カルチャー、ケイパビリティを称える設計になっており、単発の話題性ではなく継続的な取り組みが問われます(参照*3)。

この評価軸は、経営層との対話でクリエイティビティを事業戦略に埋め込む姿勢を持つ企業にとって、大きな意味を持ちます。内側の仕組みと文化を言語化して外に示せるかが、これからの競争軸として浮かび上がってきています。

Creative Brand部門の審査基準と仕組み

Creative Brand部門の審査基準と仕組み

組織のシステム・カルチャー・ケイパビリティ評価

この賞の評価対象は、組織のシステム、カルチャー、ケイパビリティという3つの側面です。

世界水準のクリエイティブマーケティングを必然かつ繰り返し可能にする仕組みと文化、そして能力を築いたブランドを評価し、クリエイティブの潜在力を持続的な事業成果へ変える実践を称える設計になっています(参照*1)。さらに、測定可能な事業成長と長期的なブランド価値を生む要素を評価するとされ、継続的な取り組みが問われます(参照*3)。

組織のなかで、意思決定・人材・プロセスがクリエイティビティを支える形で連動しているか。この視点は、経営者や担当者が自社の内側を点検するための実務的な物差しとして機能します。

戦略ペーパーによる独自の審査手法

審査プロセスは、独自の戦略ペーパー方式で進みます。

応募書類は、すべての提出物のための戦略的な文脈を確立する基礎的な質問から始まり、そこで開示された情報は機密として扱われ、組織の規模、複雑さ、戦略的な環境を審査員が理解するための文脈としてのみ用いられます。この普遍的な基礎に続き、各専門カテゴリーには領域固有の卓越性を掘り下げる質問が用意されており、戦略ビジョンとカテゴリー別の卓越性の両方を包括的に評価する二層構造となっています(参照*5)。

この仕組みは、成果物だけでなく、その背後にある戦略の筋道と組織能力を審査員に伝える設計です。経営層の想いや方針を、社外の第三者が理解できる言葉に翻訳する力そのものが、審査の土俵に上がるための条件となります。

審査員長Marcel Marcondesと国際審査団

初代の審査団は、Marcel Marcondesが審査員長を務めました。

彼はAB InBevのGlobal Chief Marketing Officerであり、審査団は世界を代表する組織で変革を牽引してきたブランドリーダーとクリエイティブリーダーの横断的な集まりとして構成されました。クリエイティブリーダーとCMOの双方が交わるこの顔ぶれは、クリエイティビティがどのように大規模な成長をもたらすかを再定義している人々を映し出しています(参照*6)。

審査団の構成は、この賞が「作品審査」ではなく「経営とクリエイティブの結節点の審査」であることを象徴しています。誰が評価するかが、そのまま何が問われるかを示す形になっています。

初代グランプリ「AB InBev: Creativity at Scale」

初代グランプリ「AB InBev: Creativity at Scale」

エントリー73件から選ばれた受賞概要

初代の受賞結果は、応募の規模と絞り込みの厳しさを物語ります。

2026年の新設賞であるCreative Brand Lionsには合計73件のエントリーが集まり、授与されたのはCreative Brand LionとGrand Prixの2つのみで、いずれもベルギーのLeuvenを拠点とするAnheuser-Busch InBevによる『AB InBev: Creativity at Scale』が受賞しました。この作品は、クリエイティビティを組織文化に組み込み、グローバル事業の構造化された成長能力として活用する姿を示しました(参照*7)。

73件から2つに絞られた事実は、評価軸の厳しさを裏づけます。初回から一社に集中した点も、この賞が求める水準の高さを示しています。

クリエイティビティを経営戦略に組み込む仕組み

受賞企業のセッションでは、クリエイティビティを経営そのものに埋め込む考え方が示されました。

セッションのテーマは「クリエイティビティを広告活動ではなく、企業成長の経営戦略としてどう組み込んでいるか」であり、AB InBev Global CMOのMarcel Marcondesが登壇しました。強調されたのは「クリエイティビティはマーケティング部門だけの仕事ではなく、企業全体の成長エンジンである」という考え方で、Consumer Insight×Creative Idea×Business Growthを一体化させる仕組みを構築し、会社全体でクリエイティブを考える姿勢を示しました。この方向性は、新設のCreative Brand Lionsが評価する「ブランド自身のクリエイティブ能力・文化・仕組み」と重なります(参照*8)。また、第1回の受賞ブランドとして注目され、ほかの部門にない審査スタイルにも関心が集まりました(参照*9)。

ここで示されたのは、消費者理解、アイデア、事業成長を分断せず一体で回す設計思想です。経営者や担当者の想いを社内の共通言語に変える、いわば内側のコピーライティングが、組織的なクリエイティブを支える基盤になりうるという示唆でもあります。

史上初3度目のCreative Marketer of the Year

同じ企業は、もうひとつの歴史的な栄誉も手にしました。

2026年のCreative Marketer of the YearはAB InBevで、この賞を史上初めて3度受賞した企業となりました。2021年以降、同社はクリエイティビティを成長モデルの中心に据える大胆な戦略転換を進めており、その賭けは成果として表れています。カンヌライオンズの各審査団は結果を継続的に評価しており、2025年だけで10か国からの作品が15の異なるLion賞で称えられました(参照*10)。

新設賞のグランプリと年間マーケター賞の同時受賞は、単発の話題ではなく長期の積み上げがあってこそ実現します。戦略の一貫性と実行の継続性が、外部評価にどう結びつくかを示す事例として参照できます。

関連する栄誉とブランド動向

関連する栄誉とブランド動向

Creative Brand of the Year受賞Heineken

ブランド単位の年間表彰では、別の醸造企業が頂点に立ちました。

Heinekenが今回初めてCreative Brand of the Yearに選ばれ、同社の長年のパートナーであるLePub Milanが2つのGrand Prixを含む26のLion(Gold 8、Silver 7、Bronze 9)を獲得しました。LePubのネットワーク全体では、ミラノ、サンパウロ、メキシコシティ、ニューヨーク、シンガポールの各拠点による作品で12カテゴリーにわたり計34のLionを集めています(参照*11)。Creative Brand of the YearはHeinekenで、KitKatとIKEAを上回りました(参照*12)。

Creative Brand部門の初代グランプリと、Creative Brand of the Yearが異なる企業に授与された構図は興味深い点です。組織の仕組みを評価する新設賞と、年間の成果を評価する既存の栄誉では、光の当て方が違うことがうかがえます。

日本関連の受賞と審査参画

日本からの受賞と審査参画も、複数の場面で確認できます。

花王の3D探索型ホラーアクション/清掃シミュレーションゲーム『しずかなおそうじ』が、Entertainment Lions for Gaming部門でBronze Lionを受賞し、これは花王として初めてのカンヌライオンズ受賞となりました。ゲーム実況配信者とのコラボレーション動画は45万回再生を記録し、ゲームのダウンロード数は公開後30日で計画比7倍を達成、関連の実況配信は3,200本以上に広がりました(参照*13)。審査面では、Dentsu Group Inc.のGlobal Chief Brand OfficerであるJean LinがCreative Brand Lion Juryに、Dentsu LabのChief Creative OfficerであるNaoki TanakaがDan Wieden Titanium Lion Juryに名を連ねました(参照*6)。

初受賞のブランドが具体的な事業成果とともに評価された点と、日本のクリエイティブリーダーが国際審査に加わった点は、同じ祭典の異なる断面から日本の現在地を示します。作り手と評価者の双方に日本が関わる状況は、今後の発信にとって足がかりになります。

おわりに

Creative Brand Lionの新設は、称賛の対象を「作品」から「作品を生み続ける組織」へと広げた出来事でした。初代グランプリのAB InBev、Creative Brand of the YearのHeineken、そして花王の初受賞と日本人審査員の参画という各断片は、クリエイティビティが経営と結びつく流れを映しています。

経営者や担当者が抱く想いを社内の言葉に変え、それを社会と結ぶ形に整えていくこと。内から外へと届く筋道を設計するうえで、今回の各受賞は具体的な参照点となります。

お知らせ

カンヌライオンズ2026で注目されるCreative Brandの本質は、想いを言語化して社会とつながることです。株式会社ユー&ミーはインナー・コピーライティングでその接続性を高め、コミュニケーション設計を通じてブランドの価値を可視化します。

株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

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