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ブランドイメージ刷新の成功事例:国内企業は何をどう変えたのかを

ブランドイメージ刷新の成功事例:国内企業は何をどう変えたのかを

はじめに

ブランドイメージは、事業領域の変化や顧客の価値観の移り変わりによって、実態との間にずれが生じることがあります。このずれを放置すると、商品やサービスの魅力が正しく届かず、売上や共感の停滞につながりかねません。

では、ブランドイメージの刷新を成功させた企業は、具体的に何をどう変えたのでしょうか。本記事では、国内企業の事例を「変える前の印象」「介入のアイデア」「使った手段」「変化後の印象」という共通の軸で整理し、自社に当てはめて考えるためのヒントを示していきます。

ブランドイメージ刷新の定義と背景

ブランドイメージ刷新の定義と背景

リブランディングとリニューアルの違い

ブランドイメージの刷新を語るうえで、まず「リブランディング」と「リニューアル」の違いを押さえておく必要があります。リブランディングとは、時代や市場の変化、経営戦略の転換などに伴い、企業や商品が持つブランドの定義やイメージを再構築することです。単なるロゴやデザインの変更といった表面的な刷新にとどまりません(参照*1)。

一方、リブランディングとリニューアルの決定的な違いは、リブランディングが「目的・目標」であるのに対し、リニューアルは「方法・手段」である点です。リブランディングは現在あるブランドを最終的にどう再構築したいかを定義するものであり、リニューアルはそれを達成するためのロゴや商品、販売手法の変更といった方法論にあたります。つまりリブランディングが到達点であるなら、リニューアルはそこへたどり着くための戦略や戦術にあたるのです(参照*2)。

この区別を踏まえると、見た目だけを変えるのではなく、ブランドが届けたい価値そのものを再定義することが刷新の出発点であるといえます。

パーセプションチェンジという考え方

ブランドイメージの刷新を考えるとき、手がかりになるのが「パーセプションチェンジ」、すなわち顧客の認識を変えるという発想です。ブランドにはまず「認知(知っているかどうか)」があり、その先に「認識(どのように知っているか)」があります。認知のないところに認識は生まれないため、認知の獲得自体が不要というわけではありません。しかし、すでに認知されているブランドが伸び悩む場合には、顧客の認識の転換が打開策になりえます。

たとえば洗濯洗剤のアリエールは、他社との差別化のために「除菌力」を打ち出そうと考えました。しかし当時の洗濯洗剤に対する認識は「いい洗剤=小さい洗剤」であり、除菌の必要性は意識されていませんでした。そこでアリエールは、商品の機能を訴求する前に「通常の洗濯では菌は残っている」という認識を広めるPR施策を展開し、大きな成果を収めました(参照*3)。

このように、商品そのものを変えるのではなく、顧客が商品をどう捉えているかを変えることで市場を動かす方法がパーセプションチェンジです。ブランドイメージの刷新においても、自社がどう見られているかを正確に把握し、そのうえで「どう見られたいか」との差分を埋めるという手順が欠かせません。

刷新が求められる5つの契機

刷新が求められる5つの契機

ブランドイメージの刷新に踏み切るべきタイミングは、大きく5つに分けられます。1つ目は売上や認知度の停滞です。商品やサービス自体に問題がなくても、ブランドの伝え方や印象が時代の流れや価値観の変化に合わなくなっている場合があります。SNSやデジタルが進化するなかで、人々が共感するポイントは常に移り変わっています(参照*4)。

2つ目は経営体制の交代です。創業者の引退に伴う事業承継やM&Aによる組織統合、経営トップの交代は、新しいビジョンや方針を社内外に表明し、新体制のスタートを強く印象づける好機となります(参照*1)。

3つ目は事業領域の拡大です。既存の業種名や旧来の印象が新しい事業の認知を妨げるケースがこれにあたります。4つ目は競争環境の激化で、同質化した市場で独自の立ち位置を再定義する必要が出てきた場面です。そして5つ目は、時代のニーズとのずれです。長い年月にわたって成長を続けてきた企業でも、自社のコンセプトがその時代のニーズに合っているかを分析し、必要に応じて刷新を繰り返すことで、今昔問わず愛される存在へと変革を遂げています(参照*5)。

事例分析の読み方と統一フォーマット

事例分析の読み方と統一フォーマット

ここからは国内企業のブランドイメージ刷新事例を紹介していきます。各事例は、次の4つの項目で整理しています。1つ目は「変える前のパーセプション」、つまり刷新前に顧客や社会がそのブランドをどう認識していたかです。2つ目は「介入のアイデア」で、認識のずれを埋めるために企業が選んだ着想や方向性を指します。3つ目は「使われた手段」、4つ目は「変化後のパーセプション」です。

パーセプションチェンジのためには「理想の言語化」と「現状把握」が必要であり、企業やブランド側が「こう認識してほしい」と願っても、顧客がどう認識するかを完全には操作できません。だからこそ、顧客を正しく知ることが出発点になります(参照*3)。この前提を踏まえたうえで、各事例を読み進めてください。

事業転換型の刷新事例

事業転換型の刷新事例

JTB:旅行会社から交流創造企業へ

変える前のパーセプション:JTBグループは、インサイト調査の結果、旅行以外のビジネスに対する認知の低さを課題として捉えていました。事業会社を含めた多様なビジネスの広がりや深みが社外に伝わっておらず、JTBグループが目指す姿と世の中のイメージの間に乖離が生じていたのです。

介入のアイデアと使われた手段:JTBグループは価値創造の源泉である「つなぐ・つなげる」の思想に基づき、「交流創造事業」を事業ドメインとして掲げました。1988年以来35年ぶりとなるリブランディングでは、JTBマークに込められた思いを受け継ぎつつ、デザインのダイナミックさはそのままに、従来の2色表示から単色表示へ変更しました。さらに、大地や自然など地球が生み出す12色の背景色で多様性や可能性を表現しています(参照*6)。

変化後のパーセプション:旅行事業にとどまらない幅広いビジネスを展開し、顧客や事業パートナーにとっての感動や成果の実現を追求する企業像を打ち出しました。事業領域が広がるJTBブランドの姿を認知してもらうことが、このリブランディングの目的として明示されています。

NTT:通信会社からグローバルブランドへ

変える前のパーセプション:NTTグループは、民営化から40年が経過し、創業時に定めた社名「日本電信電話株式会社」と実際の事業活動との間に乖離が広がり続けていました。国内通信を担う会社という印象が根強く残っていたのです。

介入のアイデアと使われた手段:こうした状況と競争の激しいグローバル市場を踏まえ、NTTグループは国内と海外のブランドを統一するというコンセプトのもとCI(コーポレート・アイデンティティ)を刷新しました。NTT DATA Groupは国内事業においても、曲線モチーフのDynamic Loopを採用し、国内外のブランドを一本化しています。NTT DOCOMO Groupは、国内で定着した赤色をDynamic Loopに適用し、新しいコーポレートロゴとして展開しました(参照*7)。

変化後のパーセプション:技術力と実行力を明確に示し、グローバル企業としてのブランド力を高めることが目指されています。グループ各社が共通のデザイン体系を持つことで、「通信会社」という枠を超えた認識の形成を図った事例です。

ブランド統合型の刷新事例

ブランド統合型の刷新事例

LIFULL:3ブランドをマスターブランドへ集約

変える前のパーセプション:LIFULLは社名変更前、旧社名の「ネクスト」、主要サービスの「HOME’S」、海外や新規事業の「LIFULL」という3つの名称が併存していました。ブランドが分散していたことで、企業としての一貫した印象が伝わりにくい状態にあったのです。

介入のアイデアと使われた手段:社名変更を機に、グループの子会社や運営サービスを「LIFULL」というマスターブランドに統合しました。「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージのもと、住生活情報サービスを提供する企業としてのブランド価値を最大化する方針を打ち出しています。さらに新本社には築約50年の1棟ビルを選定し、自社プロジェクトチームが中心となってフルリノベーションを施すことで、既存建物の有効活用という住生活領域の課題に自らモデルケースとして取り組みました(参照*8)。

変化後のパーセプション:「LIFULL」の名を見たときに「生活がより満たされる、安心して任せられる」というイメージが瞬時に想起されるブランドへ育てていく方針が掲げられています(参照*9)。複数のブランドを一つに束ねることで、企業メッセージの浸透力を高めた事例といえます。

ENECHANGE:サブブランド乱立の解消

変える前のパーセプション:ENECHANGEは電力比較サービスにとどまらず、法人向けや電力小売事業者向けなど多様なソリューションを提供してきました。しかし、それぞれを別のサブブランドとして展開してきた結果、「ENECHANGEは何をやっている会社なのか」が分かりにくくなるという課題が生じていたのです。

介入のアイデアと使われた手段:電力自由化10周年を契機にリブランディングを実施し、「エネチェンジ」ブランドが誰に何を提供するかを直感的に理解できる状態へ整える方針を打ち出しました(参照*10)。

変化後のパーセプション:散らばっていたサブブランドを一本化することで、エネルギー領域における自社の役割を端的に伝えられる体制を目指しています。LIFULLの事例とともに、ブランドの数が増えすぎたことで起きる認識の分散を解消する典型的なパターンです。

商品パーセプション転換型の刷新事例

商品パーセプション転換型の刷新事例

湖池屋:大衆スナックから老舗プレミアムへ

変える前のパーセプション:湖池屋は大衆向けスナック菓子メーカーとして広く知られていました。「親しみ」「安心」「楽しさ」が従来のコアバリューであり、手軽さが強みである一方、価格競争に巻き込まれやすい立ち位置でもありました。

介入のアイデアと使われた手段:コーポレートブランドの統合を実施し、創業の原点である「株式会社湖池屋」として新たな一歩を踏み出す方針を掲げました。新CIロゴマークには六角形を採用し、従来のコアバリューに「本格」「健康」「社会貢献」を加えた新しい価値体系を表現しています(参照*11)。企業ロゴや社屋、スローガン、社章、名刺など数多くの接点を刷新し、「ポテトチップスの老舗」というポジションを打ち立てました。2017年2月に発売した新商品「KOIKEYA PRIDE POTATO」は、既存のスナック菓子にはない洗練されたパッケージデザインと高い品質が評価され、年間40億円を達成する大ヒット商品となりました(参照*12)。

変化後のパーセプション:大衆スナックの印象から、歴史と品質に裏打ちされたプレミアムブランドへと認識が転換されました。商品単体ではなく企業全体のブランド体系を変えたことで、新商品の説得力が増した構造が読み取れます。

ヘルシア:トクホ薬的飲料から日常茶へ

変える前のパーセプション:ヘルシアは特定保健用食品(トクホ)として効果効能に対する信頼を得ていた一方、日常のお茶として喉を潤すというニーズへの対応が不十分であることを課題としていました。機能性の印象が強いがゆえに、日常的に飲むお茶としての選択肢から外れやすかったのです。

介入のアイデアと使われた手段:この課題の解消に成長の余地を見込み、無糖茶市場への本格展開を打ち出しました。「ヘルシアからの新提案」として、より幅広い無糖茶ユーザーに対して機能を軸としながら日常飲用を促す方針を明らかにしています。ターゲットは1700万人いるとされる無糖茶ユーザーで、2028年までに2025年比約2.5倍の販売数量成長を目標として掲げました(参照*13)。

変化後のパーセプション:「効くから飲む」薬的飲料ではなく、「体によい日常のお茶」として市場における立ち位置を広げようとしている事例です。既存の信頼資産を捨てずに、認識の枠を拡張するアプローチが特徴的です。

失敗事例に学ぶ刷新の落とし穴

失敗事例に学ぶ刷新の落とし穴

ブランドイメージの刷新は、進め方を誤ると逆効果になります。トロピカーナは2009年にパッケージデザインを変更しましたが、消費者から批判が殺到しました。デザイン変更から1か月で売上は20%減少し、すぐにパッケージを元に戻す事態となっています。失敗の一因は、商品の象徴ともいえるオレンジの写真を消してしまったことです(参照*14)。

国内でも同様の事例があります。ローソンはプライベートブランド商品のパッケージを、ベージュカラーをベースに商品イラストを配置するデザインに変更しました。SNSでは「おしゃれ」という賛成意見と、「見分けがつきにくい」「食欲が湧かない」という反対意見に割れました。デザインとしての統一性はあったものの、コンビニ利用者が求める「必要な商品をすぐに見つけたい」「おいしそうな商品を探したい」という思いが反映されていなかったのです。

さらにSHIROは、ブランド設立10周年となる2019年のリブランディングで、ロゴマークの大幅な変更が「ダサい」「改悪だ」との声を呼び、ネット上で炎上しました。世界進出を目的とした大胆なイメージ改革でしたが、人気商品の廃盤・期間限定化も批判の対象となりました。これらの事例に共通するのは、企業が「どう見せたいか」を優先するあまり、顧客が「どう使っているか」「何に愛着を持っているか」を十分に把握できていなかった点です。

自社で実践する刷新の進め方

自社で実践する刷新の進め方

ブランドイメージの刷新を自社で実践する際、最初のステップは現状分析と課題の特定です。自社ブランドの資産や市場での位置づけ、競合状況を整理し、顧客のニーズとのずれを把握します。売上データや顧客インサイト、SNS上の評価などを多面的に調査し、「認知」「競争力」「共感」の観点から課題を具体的に拾い上げることが求められます(参照*4)。

次に、プロジェクトチームの立ち上げです。なぜリブランディングが必要なのか、その目的やスケジュールの大枠をメンバー全員で共有する必要があります。チームメンバーは各部署から1〜2名をアサインし、全社横断的な意見を反映させることが望ましいとされています(参照*2)。

新しいブランドの方向性が固まったら、社内への浸透、つまりインナーブランディングに移ります。経営層からの一方的な通達ではなく、説明会やワークショップを開催し、リブランディングの背景や目的、目指す姿を丁寧に共有します。全従業員が新しいブランドの価値を理解し、日々の業務で体現できるかどうかが成否の分かれ目です(参照*1)。「内から外へ」、まず社内の言葉と行動が変わることで、社外への発信に一貫性が生まれます。

おわりに

本記事で取り上げた事例は、事業転換、ブランド統合、商品のパーセプション転換という3つの型に分かれていました。いずれの企業も、まず「自社がどう見られているか」を直視し、そのうえで「どう見られたいか」との差分を埋める施策を設計していたことが共通しています。

貴社が変えたいブランドイメージは何か。その問いに向き合うことが、刷新の第一歩です。経営者や担当者が胸の内に抱える想いを言語化し、社内の共感を起点に社会へと届ける道筋を、ぜひ一緒に描いていければと思います。

お知らせ

ブランドイメージ刷新の事例を踏まえ、想いの言語化による内外の共感創出が不可欠です。次に示すブランド情報で具体的な手法と実績をご確認ください。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

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