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カンヌライオンズ2025受賞作品まとめ|グランプリ一覧・注目事例・広告トレンドと日本勢の結果

カンヌライオンズ2025受賞作品まとめ|グランプリ一覧・注目事例・広告トレンドと日本勢の結果

はじめに

カンヌライオンズは、世界中のクリエイティブ作品が集まり、その年の広告やコミュニケーションの方向性を映し出す祭典です。2025年の受賞作品にはどのような傾向があり、それを知らないままでいると、自社のメッセージ開発や発信戦略にどんな影響があるのでしょうか。

2025年は生成AIの急速な進展と人間の創造性の関係が問われ、文化的な文脈を踏まえた「一歩踏み出す勇敢さ」が評価軸として浮上した年でした。本記事では、グランプリ作品の一覧から注目事例の設計思想、日本勢の結果までを順に整理します。

カンヌライオンズ2025の概要

カンヌライオンズ2025の概要

第72回の開催概要と規模

カンヌライオンズ2025は第72回を迎え、2025年6月16日から20日までフランス・カンヌで開催されました。9つのトラック、30のライオンズ(部門)に対して合計26,900点のエントリーが寄せられ、審査が行われています(参照*1)。

主催者は多様性へのアクセス拡大にも力を入れました。十分に代表されていない人材やコミュニティに向けた無料パスの仕組みであるERA(Equity, Representation and Accessibility)パスへの資金を倍増し、200万ユーロ相当の招待枠を確保しています。このプログラムは2年目の実施となりました(参照*2)。エントリー規模と包括性の両面から、カンヌライオンズ2025の全体像が見えてきます。

2025年の新設プログラムと変更点

カンヌライオンズ2025では、クリエイターエコノミーの拡大を受けて3日間の「LIONS Creators」プログラムが用意され、クリエイターとマーケターが知見を交換しパートナーシップを築く場が設けられました。あわせて「Social & Influencer Lions」は「Social & Creator Lions」に名称が変更され、クリエイターが手がけるブランド向け作品を対象とした新しいカテゴリーも追加されています(参照*2)。

さらに、LinkedInを公式パートナーとした「B2B Summit」がカールトン・カンヌ・ホテルに新設され、BtoB領域の創造性を高めるための拠点となりました。もう一つの注目点として、初めて「Creative Country of the Year」という国単位の表彰が設けられ、初代受賞国にはブラジルが選ばれています。長年にわたるクリエイティブへの貢献と、それが成長に与えた好影響が評価理由でした(参照*3)。

グランプリ受賞作品一覧

グランプリ受賞作品一覧

Classic・Craft部門のグランプリ

Film Lions部門では1,642点のエントリーからグランプリが2作品選出されました。1つ目はChannel 4による「Paris Paralympics 2024: Considering What?」で、制作はChannel 4とロンドンの4Creativeが手がけています。2つ目はロレアル パリの「The Final Copy of Ilon Specht」で、パリのMcCannが制作しました(参照*4)。

Entertainment Lions for Craft部門のグランプリは、現代自動車の「Night Fishing」が獲得しました。ソウルのINNOCEANが手がけたこの短編映画は、7台の車載カメラだけで撮影されており、謎のエージェントと未確認の存在が出会う物語を描いています。広告に懐疑的なミレニアル世代とZ世代を対象に、現代自動車の旗艦EVブランド「IONIQ」へ関心を誘導する狙いがありました(参照*5)。映像表現の技法とターゲット設計の両面で、広告の枠を超えた作品が高く評価されています。

Engagement・Experience部門のグランプリ

Social & Creator Lions部門では、バドワイザーの「One Second Ads(1秒広告)」が話題になりました。施策は文字どおり1秒尺の広告をTikTokで大量に配信するというものです。各広告には超有名な楽曲のイントロ部分だけが切り抜かれ、「これ何の曲だと思う」と問いかける構成でした。正解者にはバドワイザーの割引クーポンがDMで届くわかりやすい仕掛けが付き、多くの人が参加するキャンペーンへ成長しています(参照*6)。

Creative Effectiveness Lions部門のグランプリはAppleの「Shot on iPhone」でした。ロサンゼルスのTBWA\Media Arts Labが手がけたこのキャンペーンは、10年前に始まったAppleでもっとも持続的かつ効果の高い施策とされ、iPhoneが世界でもっとも売れるスマートフォンになる道筋を支えたとCounterpoint 2025のデータをもとに評価されています(参照*7)。短期の話題性ではなく長期にわたるブランド構築の成果が認められた点が特徴的です。

Entertainment・Strategy・Good部門のグランプリ

Innovation Lions部門のグランプリは、国連ミュージアム「UN Live」とSpotifyによる「Sounds Right」でした。コペンハーゲンのAKQAが制作し、「NATURE」を公式アーティストとして登録することで音楽のストリーミング再生を自然保護の資金に変える仕組みを実現しています(参照*7)。

Dan Wieden Titanium Lions部門では、187点のエントリーから4つのタイタニウムライオンと1つのグランプリが授与されました。グランプリを獲得したのは、AXAの「Three Words」で、パリのPublicis Conseilが制作しています。また、シンガポールは2025年に史上初のタイタニウムライオンを受賞しました(参照*4)。GoDaddyの「Act Like You Know」も注目を集めた作品で、AI搭載のブランド構築ツール「Airo」の発表にあたって俳優ウォルトン・ゴギンズを起用し、本人名義のパロディブランドを立ち上げるユーモアあふれる施策でした(参照*8)。

注目事例の詳細解説

注目事例の詳細解説

AXA「Three Words」の変革力

AXAの「Three Words」は、フランスの住宅保険契約に「and domestic violence(そして家庭内暴力)」というたった3つの単語を加えるという施策です。被害者が緊急番号に電話すると、即座に避難先の手配と支援が受けられる仕組みが整えられました(参照*7)。

Titanium Lions審査委員長のJane Lin-Baden氏は、「AXAは組織的な問題に対して組織的な商業上の解決策を生み出した。何世紀も続いた日用的な商品をブランド選好と成長の推進力に変え、住宅保険というカテゴリーそのものを再定義した」と評価しています(参照*7)。保険という既存の商品構造に社会的使命を埋め込むことで、ブランドの存在理由を再設計した事例として読み解くことができます。

FCB「Caption with Intention」の設計思想

FCB Chicagoの「Caption with Intention」について、Digital Craft Lions審査委員長の田中直基氏(電通ラボ チーフ・クリエイティブ・オフィサー)は次のようにコメントしています。「長い間見過ごされてきた問題に対して、鮮やかにシンプルな解決策を提示した。声の特性に合わせて字幕を動的に変化させることで、機能性とデザインを高い水準の技巧で両立させている。小さなイノベーションでありながら、人間に与える影響は計り知れない」(参照*5)。

映画館での字幕表示という日常的な体験を、音声の個性が反映される新しい体験へ昇華させた設計思想が伝わります。アクセシビリティを技術的な課題ではなくクリエイティブの領域として捉え直した点に、この作品の独自性があります。

Dove「Real Beauty」20年の到達点

Doveの「Real Beauty」は、「自分のことを美しいと思える女性はわずか2%しかいない」という発見から始まったキャンペーンです。メディアが発信する美しさと人々の自己認識との間にある大きなギャップを課題と位置づけ、日常の女性を「Real Women」として描くことで美の基準を問い直してきました。現在では欧米圏だけでなくアジアやアフリカなど世界中で知られるDoveの代表的な事例へ成長しています(参照*9)。

Creative Effectiveness Lions審査委員長のPats McDonald氏は、「何百万人もの若い女性が不安を抱える時代において、Doveの20年にわたる自己肯定感への取り組みはかつてないほど切実だ」と述べています。「Real Beauty」はもはや単なるクリエイティブのアイデアではなく、独自の視点が繰り返し新しいキャンペーンを生む原動力になっているとも評されました(参照*7)。20年という時間軸でブランドの信念を育て続けた結果が、カンヌライオンズ2025の評価として結実しています。

2025年の広告トレンド

2025年の広告トレンド

生成AIと人間の創造性の共存

カンヌライオンズ2025の公式総括レポートは、今年の祭典が2つのことを明確にしたと記しています。1つ目は、マーケティング業界が深い変革の瞬間に直面しているということです。生成AIの影響はあらゆるステージで語られ、AIをテーマにしていない講演でも頻繁に話題にのぼりました。2つ目は、AIの加速や文化の断片化、クリエイターがメディアの風景を塗り替えている状況の中でも、創造性は依然として人間に属する決定的な差別化要因であるという認識です(参照*3)。

同レポートでは、感情的知性、ユーモア、実体験が「代替不可能な人間の超能力」として称えられたことも報告されています(参照*3)。AIの活用が前提となる時代に、何を人間が担うべきかという問いが、受賞作品の審査基準にも反映されていたことがうかがえます。

Relevant Braveryと文化的文脈の重視

2025年は、作品の文化的背景を深く読み解く姿勢が審査の要点として語られています。PR Lions審査委員長のTom Beckman氏は、公式サイトで「最終選考に残った各作品の文化的背景を深く分析すること」が審査プロセスの核心だったと述べ、また今年の最大のテーマは「サービス」で、際立った作品の多くはサービス企業や製品ブランドにニュース価値のあるサービスを追加したものだったと指摘しました(参照*10)。

もう一つの注目すべきキーワードが「Relevant Bravery」です。直訳すると「関連する勇気」ですが、アイスホッケーやサッカーで試合終盤にゴールキーパーを下げて攻撃に人数を割くような勇気にたとえて説明されていました。つまり、事業やブランドが順調に成長している中で「状況に即してあえて一歩踏み出す勇敢さ」という意味合いです(参照*10)。文化的文脈を読み、適切なタイミングで踏み込む姿勢が、カンヌライオンズ2025の審査全体を貫く軸となっていました。

日本勢の受賞状況

日本勢の受賞状況

カンヌライオンズ2025で電通グループは合計26のライオンを獲得しました。内訳はゴールド7、シルバー4、ブロンズ15です。このうち電通ジャパンはゴールド3、シルバー1、ブロンズ5の計9ライオン、海外拠点はゴールド4、シルバー3、ブロンズ10の計17ライオンでした(参照*1)。日本勢にとって意義深い出来事もありました。Creative Effectiveness Lions部門で日本はゴールドとブロンズを受賞し、同部門での受賞は史上初となっています(参照*7)。

LINEヤフー株式会社が2025年3月に実施した「3.11 防災花火」は、PR部門のショートリスト(受賞候補)に選出されました。PR部門には世界中から1,531作品がエントリーされ、そのうち141作品がショートリストに残っています(参照*11)。特別賞としては、Creative Company of the YearにWPP、Omnicom、Interpublic Groupが、Network of the YearにDDB Worldwide、Ogilvy、FCBが、Agency of the Yearにはパリの Publicis Conseil、サンパウロのAfrica Creative DDB、アメリカのFCB Chicagoがそれぞれ選ばれています(参照*4)。

おわりに

カンヌライオンズ2025は、生成AIの台頭と人間ならではの創造性をどう両立させるかという問いが審査の通奏低音となり、文化的文脈を踏まえて踏み込む「Relevant Bravery」が受賞作品に共通する姿勢として浮かび上がりました。保険契約に3つの単語を加えたAXA、20年の信念を積み重ねたDoveのように、ブランドの内側にある想いを社会との接点に変える設計が評価されています。

2026年のカンヌライオンズでは、こうした潮流がさらに深まることが見込まれます。自社の「内から外へ」のメッセージがどのような創造性と結びつくのか、今回の受賞事例を手がかりに検討してみてください。

お知らせ

カンヌライオンズ×2025の表現軸を意識し、インナー・コピーライティングで想いを言語化して、広告・広報を横断するコミュニケーション戦略へつなげます。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

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