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カンヌライオンズ2026「Creative Effectiveness部門」受賞作まとめ

この記事のまとめ

カンヌライオンズ2026のCreative Effectiveness部門では、創造性と事業成果の両立を示した作品が評価されました。要点は次の通りです。Grand Prixは、AXA Franceのために制作された「Three Words」(Publicis Conseil)が受賞しました。Gold受賞は「Three Words」と「Pedigree Caramelo」の2作品で、Silver 4作品、Bronze 7作品が選ばれました。審査員長のBertille Toledano氏は、真の変化を起こした仕事を評価軸に置きました。アジアからはショートリスト入りが見られ、日本からはJR Group向けの「My Japan Railway」が名を連ねました。

Creative Effectiveness部門の定義と位置づけ

Creative Effectiveness部門の定義と位置づけ

部門の目的と評価軸

この部門は、創造的なアイデアが実際にビジネスや社会にどんな変化を生んだのかを評価する場です。

カンヌライオンズは長年、世界中でブランドの需要を押し上げてきた仕事と創造的な成果を表彰してきました。2026年は、そもそも突破口となるアイデアを生み出す「入り口」は何かという問いを立てています(参照*1)。あわせて、創造性と効果性を分けずに扱う姿勢も示されています。マーケティング全体に創造性を組み込むこと、そして効果を出す文化と統合することを競争優位の源泉として位置づけています(参照*2)。

つまりこの部門は、アイデアの新しさだけでなく、それが数字と行動の両方をどれだけ動かしたかを見る枠組みだと読み取れます。エントリー要件と評価軸をあわせて確認することで、応募検討や社内の企画評価に活かせます。

審査対象となる作品の条件

この部門の応募条件は、他部門とは大きく異なる独自の性格を持っています。

審査対象は「すでに他の場所で受賞している仕事」に限定されます。そのため、企画の素材そのものを磨き直すデ・ブラッシングの段階は存在せず、審査に上がってきた時点で、すべての作品が一定水準を満たしている前提になります。審査員長のBertille Toledano氏は、この特徴が議論を難しくする要因だと述べています(参照*3)。

この条件があるため、審査は「良し悪し」ではなく「どれだけ変化を起こしたか」を比較する場になります。応募を検討する側は、過去に別部門で評価を得た仕事のうち、事業指標や行動変容の証拠が揃うものを選ぶ視点が必要です。

2026年の審査基準と審査員長の視点

2026年の審査基準と審査員長の視点

審査員長Bertille Toledanoの哲学

審査員長のBertille Toledano氏は、創造性と効果性を切り離してきた業界の慣習を否定します。

長い間、創造性と効果性は別世界の存在のように扱われてきたと指摘します。創造性は楽しい部分、効果性は真面目な部分という分け方です。ここ数年でその線引きは誤りだと証明されてきました。もっとも創造的な仕事は、短期でも長期でも、もっとも効果的でもあると同氏は述べます。データに基づく指標として、創造的なキャンペーンは非創造的なものと比べて4.6倍働くという結果を示しました。これは意見ではなく計測された事実だと強調しています(参照*3)。

この立場は、審査においても「創造的か、効果的か」を二者択一で問わないことを意味します。企画側は、表現の強度と事業指標を同じ土台で説明できる資料設計が求められると読み取れます。

「誠実さ」と「変化を起こす仕事」

Toledano氏は、審査員に対して「違いを生んだ仕事」を探すよう促しました。

Grand Prixに選ばれたAXAの事例について、家財保険にはもともと実質的な差がなく、多くの人が意識もしていない領域だと述べます。そこに文化的な視点を事業の中心に据えることで差別化が生まれたと評価し、これは根本的に異なる発想だと位置づけました(参照*4)。さらに、勝ち残る仕事に求めるものとして「何かを本当に変えた仕事」「持続するブランド価値を築いた仕事」「行動を変えた仕事」「カテゴリーを動かした仕事」を挙げています(参照*3)。

この基準は、認知や好意度といった中間指標だけでは足りないことを示します。応募者は、行動やカテゴリー全体への波及を語れる証拠を用意する必要があります。

Grand Prix受賞作「Three Words」

Grand Prix受賞作「Three Words」

AXAが変えた3つの言葉のインパクト

Creative Effectiveness部門のGrand Prixは、Publicis ConseilがAXA Franceのために制作した「Three Words」に贈られました。

この作品は2025年のフェスティバルでTitanium Grand Prixを獲得しており、常連の参加者にとってはおなじみの企画です。特徴は、その徹底したシンプルさにあります。AXAはフランスにおける家財保険の契約条件を改定し、火災や洪水と並んで「家庭内暴力」を、住居からの転居を認める正当な事由として盛り込みました(参照*4)。2025年4月には、保険契約の転居条項に「and domestic violence(そして家庭内暴力)」という言葉を加えました。この変更により、被害者は違約金なしで住居契約を解除できるようになり、新規と既存の双方の契約者に適用されました。契約変更に加えて、被害者を転居支援につなぐ専用の相談窓口も設けられました(参照*5)。

この事例は、広告表現ではなく契約書の一文を書き換えるという発想の転換を示しています。事業の中核にある約款そのものを創造の対象に据えた点が、他部門との差を生んだと読み取れます。

事業成果と社会的インパクトの両立

「Three Words」は、事業指標と社会的な変化を同時に示した点で評価されました。

一部の女性にとって、家はもっとも危険な場所です。フランスでは3日にひとりの女性が命を落としているという状況があり、このキャンペーンは開始から最初の1か月で121人の女性の転居を支えました(参照*4)。AXAは2025年のフェスティバルで13の受賞を集めて首位に立ち、その中には「AXA – Three Words」による3つのGrand Prixが含まれていました(参照*6)。

新しい言葉は250万件の契約に反映され、Toledano氏は、家財保険には本質的な違いがないなかで、文化的な視点を事業の中心に据えたことが差別化を生んだと述べています(参照*4)。この構造は、社会課題への向き合いが競争上の位置づけをも動かすことを示しています。

Gold受賞作と全体の受賞傾向

Gold受賞作と全体の受賞傾向

Pedigree Caramelo等のGold作品

Goldに選ばれたのは、AXAの「Three Words」と、Pedigreeの「Pedigree Caramelo」の2作品です。

後者は、ブラジル・サンパウロのAlmapBBDOがPedigreeのために制作したエントリーです。「Three Words」もGold Lionを獲得しており、Grand Prixとの二重受賞という形になりました(参照*4)。参考事例としてWARCが取り上げる過去のCreative Effectiveness受賞例には、IKEA Portugalの「Hidden Tags」があります。家具の耐久性に対する消費者の認識を変え、隠された製造日を発見させる仕掛けを通じて、価格販促や広告費の追加なしで売上を20%押し上げ、耐久性の認識を17ポイント引き上げ、95,500人の新規IKEA Familyメンバーを獲得しました(参照*7)。

Gold作品の顔ぶれからは、社会的な課題と身近な生活領域の両方で、契約や商品の見え方そのものを変える発想が評価される流れがうかがえます。

受賞作全体の分布と傾向

Creative Effectiveness部門の2026年の受賞数は、階層ごとにはっきりと分かれています。

内訳は、Grand Prix 1作品、Gold 2作品、Silver 4作品、Bronze 7作品の合計14作品です。Grand PrixはPublicis Conseilが「Three Words」(AXA向け)で獲得し、Goldは同じ「Three Words」と、AlmapBBDOによる「Pedigree Caramelo」の2作品でした(参照*8)。

この構成は、頂点に立つ作品を絞り込み、Bronzeで広く事例を拾う設計になっていると読み取れます。応募側は、上位を狙うのか事例登録を目的にするのかで、証拠の作り込み方を分けて考える必要があります。

日本およびアジアの受賞・ショートリスト

日本およびアジアの受賞・ショートリスト

アジアでは、ショートリスト段階で複数の注目案件が挙がっています。

日本からは、Dentsu Inc. Tokyoが手掛けたJR Groupの「My Japan Railway」が、Travel, Leisure, Retail, Restaurants & Fast-Food Chainsの部門でショートリスト入りしました。シンガポールからはOgilvy SingaporeによるVaselineの「Vaseline Verified」が、Global MarketとMarket Disruptionの両方で名前が挙がっています(参照*9)。「Vaseline Verified」は、Creative StrategyのHealthcareとBrand Strategy、Creative EffectivenessのMarket DisruptionとGlobal Marketにわたって名前が挙がっており、拡張性と信頼を軸にしたブランド設計の強さがうかがえます(参照*9)。

ブランド単位で見ると、KitKat、adidas、Vaseline、IKEA、BCP Bankが年間の創造的ブランドの上位10に入り、世界的な広告主とのパートナーシップの厚みが表れました(参照*10)。日本からのショートリスト入りは、鉄道という生活インフラを題材にしたブランド体験が、効果性の文脈でも評価対象になりうることを示す例と読み取れます。

受賞作から読み解く効果的な創造性の条件

受賞作から読み解く効果的な創造性の条件

今回の受賞群からは、効果的な創造性が成り立つための共通点が浮かび上がります。

Toledano氏は、創造性とは礼儀の一形態だと語ります。人々の時間を中断し、耳元で叫び、広告の音量を上げる以上、注意を払うに値するものを差し出す責任があるという考え方です。同氏はそれを「雑音ではなく贈り物」と表現し、時間を無駄にしないことこそ効果性でもあると述べています(参照*3)。同時に、勝ち残る仕事は「本当に何かを変えた仕事」「持続するブランド価値を築いた仕事」「行動を変えた仕事」「カテゴリーを動かした仕事」でなければならないという水準も示されました(参照*3)。AXAの事例については、実質的な差がない領域に文化的な視点を事業の中心として据えたことが、根本的な差別化を生んだと評価されています(参照*4)。

ここから読み取れるのは、次の3点です。

  • 広告表現の外側、つまり契約書や商品情報など事業の中核に手を入れる発想
  • 受け手の時間を尊重する誠実さと、行動や態度の変化という具体的な結果
  • カテゴリー全体の見え方を動かすことを、狙いとして最初から設計に含めること

これらは、経営者の想いを内側から言葉にし、社会との新しいつながりに翻訳する営みと重なります。企画の起点を経営や事業の芯に置き直すことで、効果性は自然に語れるようになると整理できます。

おわりに

カンヌライオンズ2026のCreative Effectiveness部門は、創造性と効果性を対立させない立場を明確に打ち出しました。AXAの「Three Words」がGrand Prixに輝いたことは、契約書の一文という事業の芯を書き換える創造が、社会と数字の両方を動かしうることを示しています。

日本のショートリスト入りやアジア勢の広がりも含めて、効果性の評価軸は表現の派手さではなく、行動やカテゴリーの変化に置かれています。経営や事業の内側にある想いを言葉にし、そこから外へ届ける道筋を持つ企画こそ、次の受賞候補に近づくと読み取れます。

お知らせ

カンヌライオンズ×2026×Creative Effectivenessの潮流に応え、インナー・コピーライティングで経営者の想いを言語化し、社会との新しいつながりを創ります。

株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

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