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カンヌライオンズ2026「ダイレクト部門」受賞作まとめ

この記事のまとめ

カンヌライオンズ2026のダイレクト部門は、6月22日から26日にフランス・カンヌで開催された祭典のなかで、応答性と結果につながる創造性を評価する部門として、多くの注目を集めました。本記事の要点は次のとおりです。

  • グランプリはプエルトリコの配達アプリ「UVA」による「Uva Uva Bombón」が受賞
  • 1,325件の応募から、ゴールド7・シルバー13・ブロンズ21の計42作品が選出
  • Uber EatsやHeineken、Heinz、Oreoなど有力ブランドがゴールドを獲得
  • アジア圏ではシンガポールやサウジアラビアの作品が受賞、豪州勢もダイレクトでゴールドとブロンズを獲得

ダイレクト部門の位置づけと審査基準

ダイレクト部門の位置づけと審査基準

ダイレクト部門の歴史と定義

ダイレクト部門は、対象者に狙いを定めて反応を引き出す創造性を評価する独立した部門として長い歴史を持ちます。

ダイレクト部門は2002年に新設されました。当時のダイレクトマーケティングはひとつのチャネルだけで語れるものではなくなり、領域の成熟と多様化を背景に、独立した賞として位置づけられました。2014年には「Response/Real Time」「Social Commerce」「Use of Social Audience」といったサブカテゴリーが追加され、対象となる仕事の幅がさらに広がり、「Home of the Whopper」のようなキャンペーンが受賞する土壌が整いました。今日では、大胆でデータに根ざした仕事を通じて、意味のある個別化されたつながりを築き、測れる事業成果を生む取り組みを表彰する部門として位置づいています(参照*1)。

ダイレクトは、単なる販促手法の枠を超え、消費者との直接的な関係づくりを軸に据えた表現領域として拡張してきたと読み取れます。読者は、応募作を見る際に「どんな反応を引き出したか」を軸に据えると、部門の狙いに沿った理解が進みます。

対象カテゴリーと評価軸

ダイレクト部門は、業種別のカテゴリーを複数用意しており、応募作はそれぞれの分野で評価を受けます。

主なカテゴリーとして、A01「Consumer Goods」は食品・飲料や日用品、家電、衣料などの消費財全般を対象としています。A02「Healthcare」は医薬品や一般用医薬品、ウェルネスを対象とします。A07「Not-for-Profit / Charity / Government」は政府や公共情報、NGO、慈善団体、非営利組織を扱います(参照*2)。

2026年の第73回大会は6月22日から26日までフランス・カンヌで開かれ、ショートリスト審査員には東京のAKQAからNobuhiro Arai氏がエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターとして参加しました(参照*3)。

カテゴリーが分野別に細かく分かれている点は、応募側にとっては自作の位置づけを明確にする指針になります。読者にとっては、業種の異なる作品を横並びで比較しやすくなる仕組みとして受け止めると理解しやすいでしょう。

ダイレクト部門グランプリ「Uva Uva Bombón」

ダイレクト部門グランプリ「Uva Uva Bombón」

スーパーボウルを乗っ取った挑戦者ブランドの一手

2026年のダイレクト部門グランプリは、プエルトリコの配達プラットフォーム「UVA」による「Uva Uva Bombón」に贈られました。

この作品はサン・フアンのDe la Cruz Ogilvyが手がけ、Bad Bunnyが出演したSuper Bowl LXのハーフタイムショーを舞台に、リアルタイムの販促を組み立てたキャンペーンです。仕掛けの核は、プラットフォーム名と同じ響きを持つ「Uva Uva Bombón」という歌詞にありました。パフォーマンスがこの曲で幕を開けた瞬間に販促が自動で発動し、選ばれた商品がアプリ内で1ドルで購入できる状態になり、その提供は曲が続くあいだ、または在庫がなくなるまで継続しました。結果として、すべての在庫はハーフタイムショーが終わる前に売り切れました(参照*4)。

Ogilvyの受賞に関する発信でも、Bad Bunnyがハーフタイムショーでブランド名を歌った瞬間に1ドル商品の販売が解放され、公演終了前に在庫が完売した流れが強調されています(参照*5)。

この事例の中心にあるのは、既存の楽曲・番組・出演者と自社名の言語的な重なりを見つけ、放送や配信のタイミングと販促を機械的に連動させる設計です。

審査員が評価した「勇気」というメッセージ

ダイレクト部門の審査員長は、この受賞理由を「勇気」という言葉で表現しました。

審査員長を務めたアルゼンチンのGUTのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、Joaquín Cubría氏は、「コントロールに取りつかれた業界において、この仕事は勇気こそが最も価値ある通貨であることを証明した」と述べました。さらに、挑戦者ブランドが「1年で最も広告費が高い日」を選んだのは、競合を上回る出費のためではなく、賢さで上回るためだったと指摘し、大胆でシンプルな発想が不確実性を不釣り合いなほど大きな成果へ転換した点を評価しました(参照*6)。

このコメントは、ダイレクトの評価が「予算規模」ではなく「発想の切れ味と結果」に置かれていることを示しています。読者は、自社の予算制約を理由にする前に、既存の文化的な文脈にどう乗るかという設計を検討する余地があると受け止められます。

ダイレクト部門ゴールド受賞作の顔ぶれ

ダイレクト部門ゴールド受賞作の顔ぶれ

Uber Eats「Build Your Own Super Bowl Commercial」

ゴールドの1本として、Uber Eatsの「Build Your Own Super Bowl Commercial」がロサンゼルスのSpecialによって制作され、受賞しました。

Uber Eatsによると、この施策はスーパーボウル週の売上記録を過去比3,600万ドル超上回り、同週のアプリ訪問は370万件の上積みを生みました。獲得したアーンドメディア価値は2億9,000万ドル超で、これまでの最高記録より約30%高い水準となりました。体験に参加したユーザーは32万5,000人にのぼり、体験内での滞在時間は合計80万分に達しました。特典の利用率は38%で、過去の販促と比べて10倍の転換効率を示しました(参照*7)。

この案件はオーストラリアの業界にとっても節目となりました。Special AustraliaとSpecial USはUber Eatsの同キャンペーンでメディア部門のグランプリを獲得し、加えてダイレクト部門でもゴールドを積み上げました(参照*8)。

数値の連なりから読み取れるのは、参加型の体験を大型イベントに合わせて設計することで、話題化と実売の両方を同時に伸ばせる余地があるという点です。

Heineken・Heinz・Corona・Oreoほかの受賞作

ダイレクト部門のゴールドには、世界的なブランドの作品が並びました。

ゴールドの受賞作は次のとおりです。

  • Uber Eats「Build Your Own Super Bowl Commercial」(Special、ロサンゼルス)
  • Heineken「Could Have Been a Heineken」(LePub、ミラノ)
  • Heinz Ketchup「Heinz Dipper」(Rethink、トロント)
  • Corona「Lime Guides」(Grey、ニューヨーク)
  • Oreo「Oreo Cows」(VML、ニューヨーク)
  • Columbia Sportswear「Expedition Impossible」(Adam&eve\TBWA、ロンドン)
  • Coinbase「Everybody Coinbase」(Isle of Any、ニューヨーク)

参照*4

このうちOreo「Oreo Cows」は、クッキーの模様と自然に重なる斑の牛種を主役に据え、メキシコの「牛乳に浸す」習慣を復活させる狙いで展開されたキャンペーンで、Oreoの売上を12%押し上げ、フェスティバル最高位のチタニウム・ライオンも獲得しています(参照*5)。

受賞作の顔ぶれは、飲料・食品・アパレル・金融・暗号資産と業種が横断的です。読者は、自社の業種に近い事例だけでなく、異業種の設計思想からも学べる構図として並べて確認する使い方が有効です。

シルバー・ブロンズと注目の日本・アジア勢

シルバー・ブロンズと注目の日本・アジア勢

受賞総数と部門全体の傾向

ダイレクト部門の応募規模と受賞内訳は、部門の競争度を示す基本情報です。

2026年のダイレクト部門には1,325件の応募が集まり、42のライオンが授与されました。内訳はゴールドが7、シルバーが13、ブロンズが21です。部門は狙いを絞った反応駆動型の創造性を表彰するもので、グランプリはサン・フアンのDe la Cruz Ogilvyが手がけたUVAアプリの「Uva Uva Bombón」に贈られました(参照*6)。

応募数に対して受賞は42件で、ゴールド以上に絞ると8件と限られています。読者は、この希少性を踏まえたうえで、各受賞作が何を突き抜けさせたのかという観点で個別作品を読み解くと、部門の評価傾向を把握しやすくなります。

アジア圏の受賞作と日本の動向

アジア圏からもダイレクト部門で複数の受賞が生まれました。

シンガポールのOgilvy SingaporeによるVaseline「Vaseline Originals」と、Publicis KSA / Saatchi & Saatchi MEが手がけたSaudia Airlinesの「Let It Fly」は、ともにブロンズを獲得しました(参照*9)。

オセアニア圏では、Leo AustraliaがSuncorp Insuranceのために制作した「Haven」でダイレクト部門のブロンズを獲得しました。この施策はSuncorp Insuranceのデータを活用し、オーストラリア全土の1,100万戸を対象にリスク評価を提供するデジタル基盤を構築し、暴風雨や森林火災、洪水といった気候関連の脅威に住宅所有者が備えられるよう支援したもので、Hogarth Worldwide、Le Polish Bureau、OMDとの共同制作でした(参照*8)。

参照情報の範囲では、日本発の作品がダイレクト部門で受賞したという記述は確認できません。一方で、ショートリスト審査員に東京のAKQAからNobuhiro Arai氏が参加しており、審査プロセスにおける日本からの関与は継続しています。

受賞作から読み解くダイレクトの新潮流

受賞作から読み解くダイレクトの新潮流

2026年の受賞作を横断すると、いくつかの共通点が浮かび上がります。

ダイレクト部門は今日も、大胆でデータに根ざした仕事を評価し、意味ある個別化されたつながりと測れる事業成果の両立を求めています(参照*1)。グランプリの「Uva Uva Bombón」は、Bad Bunnyのハーフタイムショーの歌詞と連動した1ドル販促を発動させ、公演終了前に全在庫を売り切る結果を残しました(参照*4)。

ゴールドの「Oreo Cows」は、クッキーの模様と自然に重なる斑の牛種を主役に据え、メキシコの「牛乳に浸す」習慣を復活させる狙いで展開され、Oreoの売上を12%押し上げ、チタニウム・ライオンも獲得しました(参照*5)。

Uber Eatsの体験型キャンペーンは3,600万ドル超の売上上乗せ、38%の特典利用率という数値をともなって評価されました(参照*7)。この3本を並べると、文化的瞬間との同期、消費行動の再定義、参加体験の設計という三つの軸が、今年のダイレクトの評価傾向を貫いていることが読み取れます。読者は、自社の販促を考える際に、この三軸のどれを起点に置くかを検討材料として整理できます。

おわりに

2026年のダイレクト部門は、1,325件の応募のなかから、文化的瞬間に対して直接的に反応する仕組みを備えた作品を高く評価しました。グランプリの「Uva Uva Bombón」、ゴールドのUber Eats「Build Your Own Super Bowl Commercial」、そしてチタニウムも獲得したOreo「Oreo Cows」は、それぞれ異なるアプローチで、時代に即することの価値を示しています。

経営や事業の現場で販促を組み立てる際には、既存の予算感覚に縛られず、文化との重なりや消費者の参加をどう設計するかという問いに立ち返る意義があります。受賞作を教材として並べ、自社の言葉や資産と結びつけ直す作業から、次の一手を検討してみてください。

お知らせ

カンヌライオンズ、2026の潮流、ダイレクトな表現を意識して想いを言語化することで、インナー・コピーライティングを核に広報やネーミングまで一貫したコミュニケーション設計を生み出します。

株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

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