
この記事のまとめ
カンヌライオンズ2026では、日本から審査員長2名を含む多くの日本人審査員が選出されました。世界の広告・クリエイティブの評価を決める場に、日本の視点が強く反映される年となります。要点は次のとおりです。
- SDGs部門の審査員長にEarth Centric Designの佐藤カズー氏、Innovation部門の審査員長に電通の志村和広氏が就任
- Awarding JuryにDan Wieden Titanium・Design・Filmの各部門で日本人が参加
- Shortlisting JuryにもDirect・Film Craft・Social & Creatorで日本人が名を連ねる
- アジアからは日本が9名でインドに次ぐ人数となり、存在感を示した
カンヌライオンズ2026の概要

開催日程と応募規模
カンヌライオンズ2026は、世界の広告・クリエイティブが集まる国際祭典として開かれます。
開催期間は2026年6月22日から26日までとされ、31部門で世界中からの応募を受け付けます。前年の総応募数は26,900件にのぼり、審査員長は公正な評価と議論を通じて受賞作品を決める中心的な役割を担います(参照*1)。応募規模の大きさは、審査員に求められる責任の重さを示します(参照*2)。
この規模のなかで日本人審査員がどの部門に配置されるかは、日本のクリエイティブがどの領域で評価軸を握るかを読み解く手がかりになります。応募数と部門数を踏まえると、審査員長の判断が世界の潮流に与える影響は小さくありません。
審査体制と新設カテゴリー
審査体制は、審査員長を頂点に、Awarding JuryとShortlisting Juryという二段構えで構成されます。
2026年からは新たに「Creative Brand Lion」が導入され、初代審査員長にはAB InBevのマルセル・マルコンデス氏が就任しました。この部門は、世界水準のクリエイティブ・マーケティングを繰り返し生み出す仕組みや文化を築くブランドを評価する枠組みとして設けられました(参照*1)。加えて、Dan Wieden Titanium Lionsと新設のCreative Brand Lionsの審査ラインアップも公表され、部門ごとの陣容が整いました(参照*3)。
新設部門の登場は、単発の表現よりも継続してクリエイティブを生む体制への注目が強まっていることを示します。日本人審査員がどの部門でどのような役割を担うかを整理する意味も、その分だけ大きくなります。
日本人審査員の全体像

部門別・日本人審査員リスト
カンヌライオンズ2026の日本人審査員は、審査員長からShortlisting Juryまで複数の階層に分かれて配置されています。
アジアからは審査員長5名と審査員44名が選ばれ、審査員長のうち日本からはEarth Centric Design Japanの佐藤カズー氏と電通の志村和広氏が就任しました。アジア各国のなかでインドが12名、日本が9名で、両国が最多の審査員数となっています(参照*4)。
部門別の主な顔ぶれは以下のとおりです。
- SDGs部門 審査員長:佐藤カズー(Earth Centric Design)
- Innovation部門 審査員長:志村和広(電通)
- Dan Wieden Titanium Awarding Jury:田中直基(Dentsu Lab)
- Design Awarding Jury:河野義博(TBWA\HAKUHODO)
- Film Awarding Jury:木下麻椰(TBWA\Media Arts Lab Tokyo)
- Direct Shortlisting Jury:新井信裕(AKQA Tokyo)
- Film Craft Shortlisting Jury:石井義樹(kirameki inc./TAKAKKEI Inc.)
- Social & Creator Shortlisting Jury:澤崎信介(Havas)
所属企業と日本の存在感
所属企業を見ると、日本の広告業界の主要プレイヤーが幅広く参加していることがわかります。
TBWA\HAKUHODOグループからは、SDGs部門審査員長の佐藤カズー氏を含めて計3名がグローバルなクリエイティブの評価に関わります(参照*5)。電通からは志村和広氏がInnovation部門審査員長、田中直基氏がDan Wieden Titanium LionsのAwarding Juryに名を連ねます(参照*3)。加えてAKQA Tokyo、kirameki inc.、Havasといった多様な企業からも審査員が選出されました(参照*6)。
大手ネットワークから独立系まで参加企業の幅が広い点は、日本のクリエイティブ層に厚みがあることを示します。部門横断で日本人が関わることで、評価軸に日本発の視点が織り込まれる余地も広がります。
審査員長を務める日本人

SDGs部門・佐藤カズー
SDGs部門の審査員長には、Earth Centric Design LabのCEO兼CCOである佐藤カズー氏が選ばれました。
これまで日本人がカンヌライオンズの審査員長に就任した例は少なく、SDGs部門への選出は日本人として初となります。この選出は個人としてだけでなく、日本の広告・クリエイティブ業界全体にとっても名誉な出来事とされています(参照*7)。佐藤氏本人は、カンヌライオンズ2026 SDGs部門の審査員長に選出されたことを深く光栄に感じるとし、不安定な世界情勢のなかでSDGsの意義を世界に思い起こさせる機会となる審査を率いる責任の重さに触れました(参照*8)。
SDGs部門は社会課題と表現力を両立させる難しい領域で、審査員長の視座が受賞作の性格を強く規定します。日本人が初めてこの役割を担う点は、日本のクリエイティブが持続可能性の議論にどう関わるかを示す指標となります。
Innovation部門・志村和広
Innovation部門の審査員長には、電通のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、志村和広氏が就任しました。
志村氏はバイオテクノロジーの経歴を持ち、ブランドコミュニケーション、商品開発、体験デザインを横断する分野で活動しており、電通のFuture Creative Centerで領域横断的なイノベーションを率いています。カンヌライオンズ2026のInnovation Jury Presidentとして、より良い未来を想像するだけでなく、実際に築いていく作品を審査で見たいと語っています(参照*9)。代表作の一つである「TUNA SCOPE」は、マグロの品質を判定する世界初のAIシステムで、水産業界の構造課題に取り組むために日本政府や各国企業と協働して開発されました。志村氏の仕事は、カンヌライオンズ、D&AD、The One Show、Clio、NY ADC、LIA、Spikes Asia、ADFESTなどで評価されています(参照*10)。
技術と社会実装をつなぐ経歴は、Innovation部門で問われる「アイデアの実現力」と重なります。審査員長の関心領域は、応募側が意識すべき評価の方向性を読むうえで参考になります。
Awarding Juryの日本人メンバー

Dan Wieden Titanium・田中直基
Dan Wieden Titanium LionsのAwarding Juryには、日本人として田中直基氏が選ばれました。
田中氏はDentsu Lab, Dentsu, Japan and GlobalのChief Creative Officerです。Awarding Juryのラインアップは、TBWA\WorldwideのChaka Sobhani氏をはじめとする各国のクリエイティブリーダーとともに公表されました(参照*3)。
Dan Wieden Titaniumは業界の枠組みそのものを変える作品を評価する部門で、審査員には既存の広告表現を超えた視野が求められます。日本から参加する審査員がいることで、日本発の実験的な取り組みが世界基準の議論に加わる機会が生まれます。
Design・河野義博/Film・木下麻椰
DesignとFilmのAwarding Juryにも、日本人審査員が名を連ねます。
TBWA\HAKUHODOのシニア・アートディレクター、河野義博氏はDesign Lionsの審査員として、世界の優れた才能と並んで歴史を刻むデザインを評価できることを光栄に感じるとしました。TBWA\Media Arts Lab Tokyoのクリエイティブディレクター、木下麻椰氏はFilm Lionsの審査員として、AIによる転換期にあってカンヌライオンズ最古の部門で新たな基準づくりに関われることに大きな喜びを示しました(参照*5)。2026年の各Juryは、独立系エージェンシーやさまざまな業種のブランドからの新しい視点を含み、世界のクリエイティブ産業の多様性を映しているとされています(参照*11)。
DesignとFilmは表現の完成度が問われる伝統的な部門であり、日本人審査員のコメントからは技術の変化と歴史ある評価軸の両立への意識が読み取れます。
Shortlisting Juryの日本人メンバー

Direct・新井信裕
Shortlisting Juryは、最終審査に進む候補作を絞り込む重要な役割を担います。
Direct部門のShortlisting Juryには、AKQA Tokyoのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、新井信裕氏が日本から参加します(参照*6)。
Directは行動を引き出す仕掛けが問われる部門で、初期段階の選定がその年の傾向を決めます。日本の視点が候補選びに関わることで、地域固有の課題設定が世界の議論に載る土台になります。
Film Craft・石井義樹/Social & Creator・澤崎信介
Film CraftとSocial & Creatorにも、日本人がShortlisting Juryとして加わります。
Film Craft部門には、kirameki inc.とTAKAKKEI Inc.のCEO兼エグゼクティブプロデューサーである石井義樹氏が参加します(参照*12)。Social & Creator部門には、HavasのGroup Executive Creative Directorである澤崎信介氏が名を連ねました(参照*6)。
映像の職人性を評価するFilm Craftと、SNS発のクリエイターを扱うSocial & Creatorは、性質の異なる領域です。両者に日本人が入ることで、表現の緻密さと社会的な広がりの両面に、日本の視点が反映される構図となります。
審査後のコメントと受賞結果

SDGs部門グランプリと佐藤カズーの総評
SDGs部門の審査結果と審査員長のコメントが公表されました。
SDGs Lionsのグランプリは、ケニアのTHE PARTNERSHIP AGENCY(ナイロビ)による「PAID SICK LEAVE FOR COWS」(TOO GOOD MILK)に贈られました。同部門の総受賞数は9件でした(参照*13)。審査員長の佐藤カズー氏は、グランプリについて、認知を超えて持続的な仕組みの変化を生む見事にシンプルなアイデアであると評し、対立に見える関係を人・ビジネス・他の生物すべての共有価値へと転換した点を挙げました。単一の課題解決にとどまらず、より持続可能な未来を再設計するための再現可能なモデルを提示していると述べています(参照*14)。
審査員長の総評は、SDGs領域で評価される作品の条件を具体的に示しています。応募側が参考にできる基準として、「仕組みへの転換」と「再現可能性」が読み取れます。
日本人審査員が示した評価軸
日本人審査員が語る評価軸には、部門ごとに異なる重心がありつつも共通点があります。
Innovation部門の審査員長、志村和広氏は、審査で最初に見るのは自分がこれまで見たことのない視点かどうかであり、その次に、それが人々に本当に利益をもたらすか、美しいアイデアにとどまらず実装され、採用され、拡張されうるかを問うと語っています。両方を実現する応募作に強く惹かれるとも述べました(参照*9)。
新しい視点と社会実装の両立という基準は、SDGs部門で示された「再現可能なモデル」という視点とも重なります。日本人審査員のコメントを並べて読むと、アイデアの独自性と実装力を同時に問う姿勢が浮かび上がります。
おわりに
カンヌライオンズ2026は、日本から審査員長2名を含む9名の審査員が参加し、審査体制の各階層に日本の視点が組み込まれた年となりました。SDGs部門とInnovation部門の審査員長就任は、社会課題と技術の両領域で日本発の評価軸が世界に接続される機会にあたります。
審査員長や審査員のコメントからは、独自の視点、社会実装、再現可能性という共通した評価の重心が読み取れます。応募や企画を検討する際は、この3点を自作に当てはめて確認する観点になります。
お知らせ
カンヌライオンズ 2026 審査員 日本人の視点が示す、表現の力と想いの言語化の重要性。企業のストーリーを言葉で磨き、社会とのつながりを生み出す橋渡しをお手伝いします。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。
コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。
監修者
梅田悟司(うめださとし)
コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了
1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。
ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。
武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。
CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。
著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。
参照
- (*1) Cannes Lions reveals 2026 Jury Presidents
- (*2) Dentsu Group Inc. – Kazuhiro Shimura Named Jury President of the Innovation Lions at Cannes Lions 2026
- (*3) Cannes Lions announces the Dan Wieden Titanium Lions and inaugural Creative Brand Lions Jury line-up
- (*4) Campaign Brief Asia – Kainaz Karmakar, Kazoo Sato, Kazuhiro Shimura, Anupriya Acharya and Sindhuja Rai named Jury Presidents for Cannes Lions 2026
- (*5) TBWA\HAKUHODO | – Yoshihiro Kono and Maiya Kinoshita Appointed as Jurors for Cannes Lions 2026
- (*6) Cannes Lions announces 2026 Shortlisting Jury line-up
- (*7) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 地球中心デザイン研究所のCEO/CCO・佐藤カズーがカンヌライオンズ2026 SDGs部門の審査員長に選出
- (*8) TBWA\HAKUHODO | – Kazoo Sato Appointed Jury President for Cannes Lions 2026 SDGs Category Marking a Historic First for Japan in the Category
- (*9) Innovation is “The Moment an Idea Changes Reality”: Kazuhiro Shimura
- (*10) Kazuhiro Shimura
- (*11) Cannes Lions announces 2026 Awarding Jury line-up
- (*12) Roastbrief US – Cannes Lions announces 2026 Shortlisting Jury line-up
- (*13) https://www.reasonwhy.es/media/library/ganadores-sustainable-development-cannes-lions-2026.pdf
- (*14) Final winners announced for Glass: The Lion for Change, Dan Wieden Titanium Lions, Film Lions, Sustainable Development Goals Lions and Grand Prix for Good