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BtoBとBtoCのマーケティングの違いを体系的に整理:前提・設計・施策・KPI・注意点まで

BtoBとBtoCのマーケティングの違いを体系的に整理:前提・設計・施策・KPI・注意点まで

はじめに

BtoBとBtoCでは、売る相手が「企業」か「個人」かという前提が異なるため、マーケティングの設計や施策も大きく変わります。この違いを曖昧にしたまま施策を進めると、ターゲットに届かないコンテンツや、成果に結びつかない広告投資が発生しやすくなります。

自社に合ったマーケティングを設計するには、購買プロセス、施策の選び方、KPIの置き方、そして陥りやすい失敗を整理することがポイントです。購買プロセス、施策の選び方、KPIの置き方、そして陥りやすい失敗まで、BtoBとBtoCの違いを体系的に整理しながら本文で詳しく説明します。

BtoBとBtoCの基本定義

BtoBとBtoCの基本定義

BtoBマーケティングの対象と目的

BtoBとは「Business-to-Business」の略で、企業が企業に対して製品やサービスを販売する取引を指します。小売業者や卸売業者など、最終消費者ではなく他の事業者が顧客になる点が特徴です(参照*1)。

BtoBマーケティングは、自社の提供物から恩恵を受けられる組織との関係構築に焦点を当てます。販売サイクルが長く、取引金額が大きく、意思決定に複数の関係者が関与する傾向があります(参照*2)。

したがって、BtoBマーケティングの目的は、1回の取引で完結する売上ではなく、組織間の継続的な関係を通じた長期的な事業成長にあります。商談の土台となる信頼を築くことが、施策設計の出発点になります。

BtoCマーケティングの対象と目的

BtoCとは「Business-to-Consumer」の略で、企業が個人の消費者に向けて製品やサービスを販売する取引形態です。BtoCの焦点は、個人が私的に使う商品や体験を届けることにあります(参照*1)。

BtoC企業は大量の取引を扱い、意思決定の時間枠が短く、幅広い市場への訴求を重視します(参照*3)。

BtoCマーケティングでは、多くの消費者に短期間で接触し、感情やトレンドを起点に購買を促すことが求められます。BtoBが「関係構築」を軸とするのに対し、BtoCは「広いリーチと即時性」を軸に設計される点が大きな違いです。

購買プロセスと意思決定構造の差

購買プロセスと意思決定構造の差

意思決定者の人数と合意形成

BtoBの購買は、個人ではなく複数のメンバーで構成される「購買グループ」によって進められます。ある調査では、1つの購買判断に平均13人が関与し、89%の購買が2つ以上の部門にまたがると報告されています(参照*4)。

購買グループの規模は5人から16人にわたり、最大で4つの部門に及ぶケースもあります。メンバーそれぞれが異なる優先事項や意見を持っているため、合意形成が取引の成否を左右します。合意に至った購買グループは、その取引を「質の高いもの」と評価する割合が2.5倍高いという調査結果も出ています(参照*5)。

一方、BtoCでは購買を決めるのは基本的に消費者本人です。この「1人で決めるか、組織で合意するか」という構造の違いが、マーケティングで届けるべきメッセージの数や内容を根本から変えます。

購買サイクルの長さと複雑性

BtoBでは、取引金額が大きく製品が複雑になるほど、購買にかかる時間は長くなります。たとえば、病院がMRI装置を購入する場合、金額は数百万ドル規模に達し、契約成立まで数か月から数年かかることもあります(参照*1)。

さらに、購買グループの各メンバーは検討中のベンダーに対して1人あたり最大15回の接点を持ち、そのうち70%以上は売り手に連絡を取る前に発生しています(参照*6)。

つまり、BtoBでは売り手が気づかないうちに評価が進んでいるケースが大半です。BtoCの購買サイクルが短期間で完結しやすいのとは対照的に、BtoBでは接点が発生する前段階の情報設計が成果を左右します。

マーケティング設計思想の違い

マーケティング設計思想の違い

ファネルとカスタマージャーニーの設計差

ファネル設計では、顧客が購買に至るまでの段階を可視化し、各段階での摩擦や不安を把握することが要になります。一般的なジャーニーは「認知」「検討」「購入」「維持」「推奨」という段階で構成され、各段階にはウェブサイト訪問、メール、SNSなどの接点が紐づきます(参照*7)。

BtoBでは購買グループの各メンバーが異なるタイミングで情報を取得するため、ファネルの各段階に複数の役割と接点が存在します。BtoCでは1人の消費者が認知から購入まで比較的短い経路をたどるため、ファネルはシンプルになりやすい傾向があります。この構造の差が、コンテンツの種類や配信タイミングの設計を根本から変えます。

売上責任の所在と営業連携

売上責任の所在が異なるため、BtoBとBtoCではマーケティングと営業の関係性も変わります。BtoCでは、マーケティング担当者が行った施策が製品の売上に直結します。一方、BtoBではマーケティング施策から直接売上が立つことは基本的にありません。BtoB事業において売上責任を直接担っているのは営業担当者です(参照*8)。

このため、BtoBのマーケティング設計では「営業にどう引き渡すか」が欠かせない論点になります。マーケティングが創出した見込み顧客を営業が商談化し、受注につなげるという分業構造を前提に、両部門の連携を織り込んだ設計が必要です。BtoCのように「施策が売上に直結する」前提で設計すると、BtoBでは成果が見えにくくなるリスクがあります。

主要施策と媒体活用の比較

主要施策と媒体活用の比較

BtoCの広告・SNS・CRM施策

BtoCマーケティングでは、広い市場にリーチするための広告投資が主要な手段になります。国内のインターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)に達し、推定開始以来はじめて4兆円を超えました。SNS上の縦型動画広告やコネクテッドTVなどの動画広告需要の拡大が、市場全体の成長に寄与しています(参照*9)。

BtoCブランドは感情、突発性、トレンド主導のエンゲージメントに依存する傾向があります(参照*3)。

こうした特性から、BtoCの施策設計では「どれだけ多くの消費者に、感情を動かす形で接触できるか」が鍵になります。SNSや動画広告を通じて瞬間的な関心をつかみ、CRM(顧客関係管理)で購買後の維持につなげるという流れが基本構造です。

BtoBのコンテンツ・ABM・イベント施策

BtoBでは、購買グループの各役割に向けたコンテンツ制作が施策の中心になります。異なる部門や役職のメンバーに対応するコンテンツを用意し、初回の接触時点では営業フォローを急がず、まずは対象企業における各人の役割を見極めることが推奨されています(参照*6)。

また、BtoBにおけるSNS活用は、コンテンツの企画、データからの洞察抽出、文書化、メディア分析、コミュニティ分析など、投稿とモニタリングの両面で広がりを見せています(参照*3)。

BtoCが「広いリーチ」を優先するのに対し、BtoBは「絞った対象への深い情報提供」を優先します。特定のターゲット企業に集中するマーケティング手法(ABM)やイベントを組み合わせ、購買グループ全体に段階的に働きかける設計が求められます。

KPI設計の違いと測定指標

KPI設計の違いと測定指標

BtoBで重視するリード・商談化率・LTV/CAC

BtoBマーケティングの指標は、見込み顧客の獲得数、商談への転換率、顧客獲得コスト、そして顧客の生涯価値に焦点が当たります。高価値な顧客の獲得と維持を通じた事業成長が目的であるため、施策の良し悪しをこれらの指標で評価します(参照*2)。

特にLTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得コスト)の比率は、事業の拡張性を測る重要な指標です。この比率が3以上であればマーケティング費用や間接費をまかないつつ利益を出せる、拡張可能な事業と見なせるとされています(参照*10)。

BtoBではファネルの途中で見込み顧客が離脱しやすいため、最終成果だけでなく中間指標も追跡し、どこで顧客が停滞しているかを把握する必要があります。マーケティング担当者のうち、適切なKPIを追跡できていると自信を持っているのはわずか23%だという調査結果もあり、指標設計の見直しは多くの企業にとって課題です(参照*11)。

BtoCで重視するCVR・CPA・ROI

BtoCマーケティングでは、CVR(購入や登録などの目標達成率)、CPA(1件の成果あたりの獲得コスト)、ROI(投資対効果)が代表的な指標になります。取引1件あたりの金額がBtoBより小さい分、大量の取引を効率よく生み出すことが求められるため、コストと成果のバランスが特に問われます。

最終成果だけを測るのでは不十分で、消費者がファネルのどこで止まっているかを把握するための中間指標の追跡も欠かせません。ファネル内のボトルネックを特定することが、施策改善の起点になります(参照*11)。

BtoBが「少数の高価値顧客を長期で育てる」ための指標体系を持つのに対し、BtoCは「大量の購買を低コストで回転させる」ための指標体系を組みます。自社の取引構造がどちらに近いかを見極めたうえでKPIを設計することが、施策の評価精度を左右します。

失敗例と注意点

失敗例と注意点

BtoBマーケティングで見落とされやすいのが、購買グループ内の合意形成に関する問題です。調査によると、BtoBの購買チームの74%が購買判断の過程で「不健全な対立」を経験しています。具体的には、チームメンバーの目標が食い違う、最善の行動方針で意見が割れる、外部の意思決定者によって結論が覆されるといった事態が該当します(参照*5)。

BtoBの購買はプロセスの途中で停滞しやすいと報告されています。実際に、BtoBの購買の86%が購買プロセスの途中で停滞し、81%の買い手が選んだ提供者に不満を感じているという報告もあります(参照*4)。こうした停滞を防ぐには、ペルソナシート(想定顧客像の資料)を作ることよりも、顧客が現状維持にどれだけ苦痛を感じているかという「課題起点」のメッセージを届けることが有効です。現状維持の痛みに訴えかけることで、提供者を変えることへの抵抗を超えやすくなります(参照*6)。

BtoBでもBtoCでも、自社の取引構造を無視して施策を選ぶと、届けるべき相手にメッセージが届かない状態に陥ります。購買プロセスで誰が、どこで、なぜ立ち止まるのかを把握し、その停滞を解消する設計こそが、マーケティングの違いを実務に活かす出発点です。

おわりに

BtoBとBtoCのマーケティングの違いは、「誰に売るか」の前提から始まり、購買プロセスの構造、施策の選び方、KPIの置き方、そして失敗が起きる場所まで一貫して連動しています。どちらか一方の型を借りてくるだけでは、自社の事業構造とかみ合わない施策を量産してしまうリスクがあります。

押さえるべきポイントは、取引の規模と関与者の数、売上責任の所在、ファネル各段階での顧客の行動、そして指標の設計です。これらを自社の実態に照らし合わせて整理することが、成果につながるマーケティング設計の土台になります。

お知らせ

マーケティング、BtoB・BtoCの違いを踏まえた視点で、経営者の想いを言語化するインナー・コピーライティングが、広告・広報・ネーミング開発や研修を横断的に組み合わせ、社会と事業をつなぐコミュニケーション戦略を支えます。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

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