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ACC賞とは?特徴・部門・評価ポイントと受賞作品の傾向を解説

はじめに

広告やクリエイティブの仕事に携わるなかで、自社の取り組みが業界でどのように評価されるのかを知ることは欠かせません。ACC賞は1961年から続く国内最大級のクリエイティブアワードであり、テレビCMだけでなくPRやデザイン、イノベーション領域まで全9部門を擁しています。

ACC賞の特徴と評価ポイントを押さえると、応募や社内プレゼンで自社の強みを伝えやすくなります。本記事では、ACC賞の定義と歴史から部門構成、審査で重視される観点、そして歴代受賞作の傾向と代表事例までを順に整理していきます。

ACC賞の定義と歴史的背景

ACC賞の定義と歴史的背景

ACC賞の概要と位置づけ

ACC賞の正式名称は「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」です。テレビやラジオCMの質的向上を目的に1961年から開催されてきた「ACC CM FESTIVAL」を前身とし、2017年にあらゆる領域のクリエイティブを対象としたアワードへリニューアルしました。名実ともに日本最大級のアワードとして広く認知されており、ACCグランプリはクリエイティブに携わる人々にとって大きな目標となっています(参照*1)。

国内で最も規模が大きく権威のあるアワードのひとつとして位置づけられています(参照*2)。こうした位置づけは、60年以上にわたって積み重ねてきた審査実績と、広告主・制作会社・放送局が横断的に参加する運営体制に支えられています。企業やクリエイターにとって、ACC賞の特徴を正しく理解することは、自らのクリエイティブがどの基準で評価されるかを把握する第一歩になります。

1961年から現在への沿革

ACC賞は、1961年の「ACC CMフェスティバル」から、あらゆる領域のクリエイティブを対象とするアワードへと拡張してきました。1961年、第1回ACC CMフェスティバルが開催され、応募本数487本のなかから123本が入賞しました。1962年にはCMハンドブックシリーズの発行を通じてCMの啓発が進められ、日本テレビコマーシャルフィルム製作者連盟(現:日本アド・コンテンツ制作社連盟)が加盟して現在の体制が整いました。1963年には「CM合同研究会」が改組されて「全日本CM協議会(All Japan Radio & TV Commercial Council、略称ACC)」となり、第3回で初のグランプリが選出されています。同年にはACC会長賞も制定され、第1回目の贈賞が行われました(参照*3)。

2017年以降、ACC賞はCMの枠を超えた領域まで審査対象を広げています。その後、半世紀以上にわたりテレビ・ラジオCMの審査を続けてきたACC賞は、2017年に大きな転換を迎えます。「ACC CM FESTIVAL」を継承しつつ、あらゆる領域のクリエイティブを対象とした「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」へ名称を変更しました。このとき「メディアクリエイティブ部門」と「クリエイティブイノベーション部門」が新たに創設されています。さらに2018年にはインタラクティブ部門を改編し、「ブランデッド・コミュニケーション部門」へ名称を変更しました(参照*3)。CMの枠を超えてクリエイティブ全般を評価する賞へ進化してきた点が、ACC賞の沿革における特徴です。

全9部門の構成と特徴

全9部門の構成と特徴

フィルム・ラジオ系の伝統部門

ACC賞の応募部門のうち、最も歴史が深いのがフィルム部門とラジオ&オーディオ広告部門です。フィルム部門はAカテゴリー(テレビCM)とBカテゴリーに分かれ、フィルムクラフト部門が映像技術面を専門的に審査します。ラジオ&オーディオ広告部門もAカテゴリーとBカテゴリーの2構成です(参照*1)。

応募実績を見ると、フィルム部門Aカテゴリーが679本、Bカテゴリーが394本、フィルムクラフト部門が144本でした。ラジオ&オーディオ広告部門はAカテゴリー339本、Bカテゴリー42本となっています(参照*4)。フィルム部門Aカテゴリーだけで全応募総数2,263本の約3割を占めており、テレビCMが依然としてACC賞の中核であることがわかります。こうした伝統部門の応募規模の厚さは、ACC賞の特徴を語るうえで欠かせない要素です。

2017年以降の拡張部門

2017年のリニューアル以降、ACC賞は「独自性」「独創性」「世の中を動かす可能性をもったアイデア」を評価する部門を拡充しています。2017年のリニューアルを機に、ACC賞は「独自性」「独創性」「世の中を動かす可能性をもったアイデア」を評価する部門を新設しました。さまざまな業界の第一線で活躍するクリエイターや有識者が審査委員を務め、厳正な審査を経て受賞作品が決まります(参照*5)。

具体的には、マーケティング・エフェクティブネス部門、ブランデッド・コミュニケーション部門(A・B・Cの3カテゴリー)、PR部門、デザイン部門、メディアクリエイティブ部門、クリエイティブイノベーション部門が加わっています(参照*1)。直近の応募本数では、ブランデッド・コミュニケーション部門が3カテゴリー合計で256本、メディアクリエイティブ部門が108本、PR部門が95本、デザイン部門が99本、マーケティング・エフェクティブネス部門が72本、クリエイティブイノベーション部門が35本でした(参照*4)。CMという枠を超え、社会実装やテクノロジー活用まで審査対象に含める点が、現在のACC賞の特徴を際立たせています。

審査で評価されるポイント

審査で評価されるポイント

身体的な感動と独創性

ACC賞の審査では、左脳的なロジックよりも右脳的な感覚が重視される場面があります。フィルム部門の審査委員長は、同部門は最も歴史が古く、最も身体的な「気持ち良さ」を審査する部門であると述べています。審査委員たちの生理的な反応がすべてだという考え方です(参照*1)。

2017年のリニューアル以降に新設された部門では、「独自性」「独創性」「世の中を動かす可能性をもったアイデア」が評価軸として明確に掲げられています(参照*5)。つまり、伝統部門では映像や音声がもたらす「身体的な感動」が問われ、拡張部門ではアイデアの新しさと社会に届く力が問われるという二層構造があります。ACC賞の特徴を理解するには、この二つの評価軸が同居している点を押さえることが大切です。

社会実装とマーケティング成果

ACC賞では表現の美しさや面白さだけでなく、実社会でどのような成果を生んだかも審査対象になります。PR部門の審査委員長は、「多様なステークホルダーの視点を入れられているか、社会課題にどう取り組み合意形成をしていくか」が高い評価につながるとコメントしています。別の審査委員も、「確定申告もメディアになるのかという発見があり、ファクトドリブンだった」と述べ、事実を起点にした設計力を評価しました(参照*6)。

マーケティング・エフェクティブネス部門では、ビジネス成果そのものが審査の中心になります。ある受賞作品の審査講評では、「生活者や社員と向き合うことで、トラベルサイトの口コミは上昇し、黒字化したストーリーはまるで映画のようです」と、経営成果に直結するプロセスが高く評価されました(参照*2)。クリエイティブの力を社会やビジネスの変化として実証できるかどうかが、ACC賞における評価の分かれ目になっています。

歴代受賞作品の傾向

歴代受賞作品の傾向

フィルム部門の変遷と秒数論争

フィルム部門では、作品の「秒数」が近年の議論の焦点になっています。審査委員長の講評によると、ゴールド以上の受賞作品に15秒や30秒が多く並ぶ結果となり、これは「とても健全なこと」と表現されました。短い秒数のなかで身体的な気持ち良さを凝縮できる作品が高く評価される傾向が浮かび上がっています(参照*7)。

一方、グランプリに輝いたのはカロリーメイトの120秒作品で、しかも4年連続の受賞でした。審査委員長自身が「おいおい、話がおかしいじゃねーか!となる、そのお気持ちよく分かります」とユーモアを交えて語っており、短尺が評価される流れのなかで長尺が頂点を取る矛盾が率直に示されています(参照*7)。秒数の長短ではなく、観る人の身体に残る感動の深さが最終的な判断基準になるという点が、フィルム部門の特徴を物語っています。

社会課題解決型作品の台頭

近年のACC賞では、社会課題と正面から向き合う作品がグランプリを獲得する流れが顕著です。ヘラルボニーは、クリエイティブイノベーション部門で総務大臣賞/ACCグランプリを受賞しました。同社は2022年から毎年1月31日を「異彩の日」として、異彩が当たり前に存在する世界に向けた企業アクションを実施しています。2023年には、契約アーティストの両親から届いた「息子が扶養の基準を超え、確定申告をすることになった」というエピソードをきっかけに企業広告を制作しました(参照*8)。

さらに、同社が日本ダウン症協会と共同で発表した意見広告「いつか『偏見』も、除去されますように。」はメディアクリエイティブ部門でファイナリストに選出されています(参照*8)。こうした受賞の流れからは、事業活動の延長線上にある社会的なメッセージが、審査委員の共感と高い評価を得ていることが読み取れます。経営者の想いを起点に「内から外へ」発信する姿勢が、ACC賞の審査でも力を持つ領域です。

代表的な受賞事例

代表的な受賞事例

カロリーメイトのグランプリ4連覇

フィルム部門Aカテゴリー(テレビCM)において、大塚製薬のカロリーメイト「光も影も」が総務大臣賞/ACCグランプリを受賞しました。カロリーメイトのテレビCMは、2021年、2022年、2023年に続く4年連続のグランプリであり、ACC賞の歴史のなかでも際立つ快挙です(参照*9)。

先述のとおり、ゴールド以上では15秒・30秒の短尺作品が多数を占めるなか、グランプリ作品は120秒の長尺です。短い秒数が「健全」と評される状況においてなお4連覇を果たしている事実は、秒数を超えた表現力と身体的な感動がACC賞のフィルム部門で最も重視されることを裏づけています。ブランドとして一貫した世界観を持ち続けることの価値を、この事例は示しています。

座ってイイッスPROJECTとNo No Girls

PR部門やブランデッド・コミュニケーション部門では、社会の課題に切り込むプロジェクト型の作品がグランプリを獲得しています。マイナビバイトの「座ってイイッスPROJECT」は、アルバイト中の「立ちっぱなし」問題の解決を目指す取り組みで、応募総数2,323件のなかからPR部門の総務大臣賞/ACCグランプリを受賞しました。さらにデザイン部門でACCゴールド、ブランデッド・コミュニケーション部門BカテゴリーでACCブロンズも同時に獲得しています(参照*5)。

翌年度には、BMSGがプロデューサーにちゃんみなを迎えて開催したガールズグループオーディション「No No Girls」が、応募総数2,263件のなかからPR部門の総務大臣賞/ACCグランプリと、ブランデッド・コミュニケーション部門Bカテゴリー(ソーシャルインフルーエンス)の総務大臣賞/ACCグランプリをダブル受賞しました(参照*10)。いずれも商品やサービスの宣伝にとどまらず、社会との接点を自らつくり出した点が共通しており、ACC賞の特徴である「世の中を動かすアイデア」の評価軸を体現した事例です。

企業・制作会社が学べること

企業・制作会社が学べること

ACC賞の受賞事例を見ると、企業や制作会社が学べるポイントは大きく二つに分かれます。一つは、経営の現場で生まれた想いやストーリーをクリエイティブの起点にすることです。マーケティング・エフェクティブネス部門のグランプリでは、一次審査で満票を獲得した作品が、「本来はサブ要素の朝食をホテル名に掲げた覚悟も大きい」「生活者や社員と向き合うことで口コミは上昇し、黒字化した」と評されています(参照*2)。経営者の覚悟が表現を通じて外に届き、事業成果にまでつながったプロセスが審査で高く評価されたわけです。

もう一つは、CMという枠に閉じず、PRやデザイン、イノベーションなど複数の部門にまたがって成果を示す視点です。座ってイイッスPROJECTのようにPR・デザイン・ブランデッド・コミュニケーションの3部門で同時に評価された事例は、一つの企業アクションが多面的に審査される可能性を示しています。ACC賞は国内で最も規模が大きく権威のあるアワードのひとつとして知られており(参照*11)、全9部門を俯瞰したうえで自社の取り組みがどの部門にフィットするかを見極めることが、応募戦略の出発点になります。「内から外へ」というコミュニケーションの設計思想は、ACC賞が評価する軸とも重なる考え方です。

おわりに

ACC賞は、1961年のCMフェスティバルから始まり、現在は全9部門でクリエイティブ全般を審査する国内最大級のアワードへと発展しました。その特徴は、身体的な感動を問う伝統的な評価軸と、社会実装やマーケティング成果を測る新しい評価軸が共存している点にあります。

自社の想いを言語化し、社会との接点をどう設計するか。ACC賞の歴代受賞事例には、その問いに応えるヒントが数多く含まれています。本記事で整理した部門構成や審査の観点を手がかりに、自社のクリエイティブ戦略を見直す機会にしてみてください。

お知らせ

ACC賞の特徴を踏まえ、受賞作に見られる表現力や戦略性は、企業の想いを言語化するインナー・コピーライティングとも通じます。ユー&ミーの手法が企業内外のコミュニケーションを深化させます。

株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

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