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Clio Awardsとは?特徴・部門・受賞作品の傾向をわかりやすく解説

はじめに

広告やマーケティングの世界には数多くの国際賞がありますが、そのなかでも長い歴史と独自の評価軸を持つ存在がClio Awardsです。自社のクリエイティブを世界基準で見直したいとき、あるいは受賞作から業界の潮流をつかみたいとき、この賞の仕組みを知らないままでは比較の物差しが曖昧になりかねません。

Clio Awardsは、創造性を最優先する審査基準と、広告にとどまらない多領域への広がりに特徴があります。本記事では、その定義と歴史から主な部門構成、受賞作品の傾向、さらに他の国際広告賞との違いまでを順に解説します。

Clio Awardsの定義と歴史

Clio Awardsの定義と歴史

1959年創設の経緯と名称の由来

Clio Awardsは1959年に創設された、広告におけるクリエイティブの卓越性を世界規模で称える国際コンペティションです。The One Show、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルと並び、世界三大広告賞の1つに数えられています(参照*1)。

「Clio」という名称は、ギリシャ神話に登場する歴史の女神クレイオーに由来します。広告という表現活動を歴史に刻む、という意志が込められた命名といえます。1959年の設立当初は広告作品を対象としていましたが、その後長期にわたり時代の変化とともに対象領域を拡大してきました(参照*2)。

広告賞から多領域プラットフォームへの進化

Clio Awardsは広告賞として出発しましたが、現在ではスポーツ、ファッション、音楽、エンターテインメント、ヘルスなど多様な専門領域で活躍する人材と作品を表彰するまでに発展しています(参照*3)。たとえばClio Musicは2014年に設立された5つの専門部門の1つであり、音楽とブランドをつなぐクリエイティブを独立して評価しています(参照*4)。

Clio Awardsは年次表彰にとどまらず、世界中の広告作品を収録するデータベース「Ads of The World」や、コンテンツ配信を行う「Muse by Clio」を通じて、年間を通じてクリエイティビティを発信し続けています(参照*3)。単なる年次表彰にとどまらず、クリエイティブ産業全体の発信基盤としての役割を担っている点が、Clio Awardsの進化を物語っています。

Clio Awardsの特徴と審査基準

Clio Awardsの特徴と審査基準

クリエイティビティ最優先の評価軸

Clio Awardsの審査基準は、原則としてクリエイティビティです。クリエイティブ効果(Creative Effectiveness)、クリエイティブ・ビジネス変革(Creative Business Transformation Medium)、クリエイティブ戦略(Creative Strategy)の3部門を除き、すべてのプログラムで創造性が第一の評価軸に据えられています(参照*5)。

審査員が検討する問いとして、「この作品は大胆か、革新的か、人を鼓舞するか」「この作品は業界をどのように前進させるか」「この作品を表彰することで業界に何を示したいか」といった項目が挙げられています(参照*5)。つまり、単なる完成度の高さではなく、業界に対してどのような方向性を提示できるかという視座が求められます。こうした評価軸は、大胆で想像力に富んだ作品を称える姿勢と一致しており、受賞がトレンドの追随ではなくトレンドの創出を意味する、とされています(参照*6)。

民主的な審査プロセスと受賞制限なし

Clio Awardsの審査プロセスは「democratic(民主的)」と形容されています。すべての審査員が対等な発言権を持ち、多数決によって受賞が決定されます(参照*5)。特定の審査委員長の意向に左右されにくい構造であることが、この賞の特徴の1つです。

もう1つの大きな特徴は、授与するトロフィーの数に上限も下限も設けていない点です。審査員団は、特定のメディアやカテゴリーにおいて適切と判断した数だけ受賞作を選ぶ権限を持っています(参照*7)。つまり、応募作の水準が高ければ多くの賞が出る年もあれば、基準に達しない場合は受賞なしとなるカテゴリーもあり得ます。量ではなく質で結果が変わる仕組みです。

Grand・Gold・Silver・Bronzeの賞体系

Clio Awardsの賞はGrand、Gold、Silver、Bronzeの4段階で構成されており、さらにShortlist(最終選考通過)を加えた5段階のポイント制度が設けられています。Grand受賞で20ポイント、Goldで10ポイント、Silverで6ポイント、Bronzeで3ポイント、Shortlistで1ポイントが付与されます(参照*7)。

このポイントを集計し、年間で最も高い得点を獲得したネットワーク、エージェンシー、独立系エージェンシー、広告主、プロダクション会社に対して「Of the Year」の称号が贈られます(参照*7)。個々の作品だけでなく組織としての総合的なクリエイティブ力が可視化される仕組みです。

主な部門と専門領域

主な部門と専門領域

広告本賞のメディアタイプ一覧

Clio Awards本賞への応募は、Product/Service(製品・サービス)、Public Service(公共サービス)、Business-to-Business(企業間取引)の3つのエントリータイプに分かれています(参照*8)。応募者はまず自分の作品がどのタイプに該当するかを選び、そのうえで該当するメディアとカテゴリーに出品します。

メディアタイプの1つとして、Creative Disruption(創造的破壊、旧名Innovation)があります。この部門は、特定のメディアを特に独創的または予想外の方法で活用し、慣習に挑み、メディアの使い方そのものを再定義する作品を対象としています。大胆で革新的なアプローチによって既存の常識を覆し、マーケティングや広告が社会に現れる方法を再構築する取り組みが評価されます(参照*9)。こうした部門の存在が、Clio Awardsが既存の枠組みにとどまらないクリエイティブを歓迎していることを示しています。

Entertainment・Sports・Health・Music領域

Clio Entertainmentは、エンターテインメント・マーケティングにおけるクリエイティブの卓越性を評価するプログラムで、1971年に設立されました。キーアート、デザイン、トレーラー、オーディオビジュアルなどのカテゴリーを擁しています(参照*10)。Clio Sportsは、スポーツマーケティングに特化した部門であり、スポーツとファンの間に結びつきを生み出す作品を称えています(参照*11)。

Clio Healthは2009年に設立され、健康・ウェルネス領域のマーケティングとコミュニケーションを対象としています。消費者の高度なニーズに応えつつ、急速に拡大するグローバル市場の課題と機会に向き合うクリエイティブを評価しています(参照*3)。Clio Musicは2014年に導入され、音楽が消費者とブランドを世界規模で結びつける力に焦点を当てています。マーケターやコミュニケーターの創造的貢献を表彰し、アイデアの競争と業界内の意味ある関係の構築を推進しています(参照*12)。

受賞作品に見る近年の傾向

受賞作品に見る近年の傾向

データ活用とインフルエンサー施策の台頭

近年のClio Awardsでは、データの創造的な活用とインフルエンサーを起用した施策が高い評価を得ています。2025年の授賞式では、SpotifyとJCDecauxがそれぞれ4つのGrand Clioを獲得し、最多受賞となりました。Spotifyは「Spreadbeats」キャンペーン(FCB New York制作)でCreative Use of Data、Design、Design Craft、Directの4部門を制し、JCDecauxは「Meet Marina Prieto」キャンペーン(David Madrid制作)でCreative Effectiveness、Creative Strategy、Out of Home、Use of Influencersの4部門で受賞しています(参照*13)。

さらに、TikTokで「demure」という言葉を広めた美容クリエイターのJools Lebronが、創造性とソーシャルの影響力で消費者の行動を変えた功績により、Clio Breakthrough Awardを受賞しました(参照*13)。データドリブンな発想と個人の発信力を組み合わせた作品が、審査員の票を集めていることがうかがえます。

社会課題・公共性を訴求する作品群

受賞作品のもう1つの傾向として、社会課題や公共性に根ざしたクリエイティブが存在感を増しています。2025年のGrand Clio Awardsでは39のGrand Clioが授与され、受賞作はスペイン、日本、ニュージーランド、ブラジル、イタリア、オランダ、フランス、韓国、ドイツ、イギリス、インド、中国、カナダ、アメリカと14か国にわたりました(参照*2)。

Clio Awardsでは、AIの広告における変革的な力を示す作品を称える取り組みも始まっています。GoogleがClio Awardsと連携した取り組みとして示されています(参照*14)。世界各地の多様な文化背景から生まれる作品が評価の対象となることで、ローカルな社会課題をグローバルなクリエイティブへと昇華する流れが見て取れます。

注目のGrand Clio受賞事例

注目のGrand Clio受賞事例

Grand Clioを複数獲得した事例として、まずCeraVeの「Michael CeraVe」キャンペーンがあります。Ogilvy PRが手がけたこの作品は、Product/ServiceのFilmおよびUse of Influencersの2部門でGrand Clioを獲得しました。同じく2部門で受賞したのが、FCB New York制作のMichelob Ultra「Lap of Legends」で、Creative Use of DataとDigital/Mobileで評価されています。さらに、Colenso BBDOが制作したPedigreeの「Adoptable」はInnovationとDirectの2部門で、Dentsu Digitalが制作したThink Name Projectの「Sato 2531」はCreative Use of DataとPublic Relationsの2部門で、それぞれGrand Clioを手にしました(参照*13)。

日本発の「Sato 2531」がPublic Service領域で受賞している点は、社会課題をテーマにしたクリエイティブが国境を越えて評価される好例です。また、Product/ServiceのFilm Craft部門では、Ogilvy Shanghaiが制作したViatrisの「Make Love Last」がGrand Clioを獲得しており、アジア圏からの受賞が複数あった点も見逃せません(参照*2)。

他の国際広告賞との比較

他の国際広告賞との比較

Clio Awardsは、The One Showやカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルとともに世界三大広告賞の1つに位置づけられています(参照*1)。三賞はいずれもクリエイティブの卓越性を評価しますが、Clio Awardsには固有の強みがあります。受賞することが「象徴的な作品群の系譜に連なること」を意味し、トレンドを追うのではなくトレンドを生みだす存在として世界に示す効果があるとされています(参照*6)。

さらに、Clioの受賞は優秀なクリエイティブ人材の採用にも寄与し得るとされ、クライアントや協業相手にとっては卓越したアイデアを生みだせる証として機能します。過去の受賞者や審査員とのつながりが生まれるコミュニティも、メンターやパートナーを得る機会につながります(参照*6)。加えて、世界中のマーケターにとって境界を押し広げるアイデアの追求を促し、コミュニティを1つにまとめる旗印であり続けている点が、Clio Awardsの立ち位置を際立たせています(参照*15)。

おわりに

Clio Awardsは、1959年の創設以来、クリエイティビティを最優先する審査基準と民主的な審査プロセスを貫きながら、広告にとどまらない多領域へ活動を広げてきました。受賞作の数に上限を設けない仕組みや、Grand・Gold・Silver・Bronzeのポイント制度は、質に基づく評価をかたちにしたものです。

データ活用やインフルエンサー施策、社会課題への取り組みなど、受賞作品の傾向は時代とともに変化しています。自社のクリエイティブを世界水準で見つめ直す際、Clio Awardsの評価軸と受賞事例は有力な手がかりとなるはずです。

お知らせ

Clio Awardsの特徴であるクリエイティブなストーリーテリングと受賞基準の言語化は、経営者の想いを言葉にするインナー・コピーライティングと響き合い、社会との新しいつながりを生む視点も含まれます。

株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

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