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広告賞とデザイン賞の違いとは?評価されるポイントと代表的な賞をわかりやすく整理

広告賞とデザイン賞の違いとは?評価されるポイントと代表的な賞をわかりやすく整理

はじめに

自社の取り組みを社外に伝える手段として、広告賞やデザイン賞への応募を検討する企業が増えています。しかし、両者の違いを正確に把握しないまま応募先を選ぶと、自社の強みが審査基準とかみ合わず、労力に見合った成果を得にくくなります。

広告賞は広告コミュニケーションの戦略性や訴求力を、デザイン賞は造形・機能・社会性を軸に評価する点が大きな分かれ目です。この記事では、評価対象や審査プロセスの違いから代表的な賞の特徴、さらに企業が応募先を選ぶ際の考え方まで順を追って整理していきます。

広告賞とデザイン賞の根本的な違い

広告賞とデザイン賞の根本的な違い

評価対象の違い

広告賞が主に見ているのは「広告コミュニケーション」そのものです。広告電通賞は、優れた広告コミュニケーションを実践した広告主を顕彰することで広告主の課題解決の道を広げ、日本の産業・経済・文化の発展に貢献することを目指すとしています(参照*1)。つまり評価の中心にあるのは、広告を通じてターゲットの心を動かせたかどうか、という点です。

一方、デザイン賞が対象とする範囲はより広く、有形・無形を問いません。グッドデザイン賞は、かたちの有無にかかわらず人・社会・未来を豊かにするものを「グッド」と位置づけ、その考えを土台に審査を行っています(参照*2)。製品だけでなくサービスや活動、ビジネスモデルまでもが評価対象になるため、広告賞とは「何を見るか」の射程が根本的に異なります。

この違いは、応募する企業にとって出発点となる判断基準になります。伝え方の巧みさを問われるのか、それとも生み出したもの自体の価値を問われるのかによって、準備すべき素材やアピールの方向が変わってくるためです。

審査プロセスの違い

審査の進め方にも広告賞とデザイン賞では特徴的な差があります。海外の広告賞では議論に加えて投票で結果を決める方式が多いとされる一方、グッドデザイン賞は徹底的にディスカッションを重ねる方式をとっています。「これでいいのか」「なぜこれなのか」としつこいほど議論を深めるという運営スタイルが紹介されています(参照*3)。

デザイン賞の中でも、iFデザインアワードは独自の仕組みを持っています。最初にチームで評価基準を議論し、機能性やオリジナリティ、持続可能性など5つの軸で点数をつけ、一定の点数を超えたら賞を与える「絶対評価に近い形式」を採用しています。3人のチームで審査し、意見が割れれば徹底的に議論する上、他チームの結果を全員で確認し、異議があれば100人規模の議論が始まることもあります(参照*3)。

広告賞の審査における公正性の担保としては、カンヌライオンズの仕組みが参考になります。審査員は自分自身や自社、自社ネットワークに関連する作品には投票できず、自身が関わった作品が最終候補に残った場合は退室を求められます(参照*4)。このように、広告賞は利益相反の排除と投票制を、デザイン賞は長時間の合議と絶対評価を重視する傾向があり、審査のプロセスそのものが両者の性格を映し出しています。

広告賞で評価されるポイント

広告賞で評価されるポイント

戦略性とターゲットへの訴求力

広告賞の審査では、広告主の意図が受け手に正しく届いているかが問われます。広告電通賞の共通評価項目には「ターゲットのこころを動かす力があるか」「広告主の戦略が伝わるか」「チャレンジが感じられるか」「社会的多様性は保たれているか」の4項目が掲げられています(参照*5)。

フィルム広告部門ではさらに踏み込んだ視点が設けられており、「視聴者を惹きつけ、最後までスキップされずに見てもらえる表現になっているか」「視聴者の心を少しでもプラスに動かすことができているか」が問われます。加えて、その結果として「生活者と商品」「生活者とブランド」の間の良き関係を築くことに貢献できているかも評価軸に含まれています(参照*5)。

つまり広告賞においては、表現の巧みさだけでなく、その表現が戦略に裏打ちされているか、受け手との関係構築につながっているかまでが一体的に評価される構造です。

クリエイティビティと成果

広告賞のもうひとつの柱は、創造性と実際の成果を結びつけて評価する点です。カンヌライオンズのダイレクト部門は、大胆でデータに基づく仕事が受け手との意味ある個別のつながりを築き、測定可能なビジネス上の成果を生み出すことを評価対象としています(参照*6)。

さらにPR部門では、応募時に成果の証拠を提出する必要があり、検証可能な根拠によって裏付けることが求められます。この情報は審査員には共有されないものの、応募資料に記載された主張の検証に用いられます(参照*7)。

こうした仕組みは、広告賞が「良い表現をつくった」という自己申告だけでは完結しないことを示しています。企業が広告賞を狙う際には、施策の設計段階から成果の測定方法を組み込んでおくことが、応募書類の説得力に直結します。

デザイン賞で評価されるポイント

デザイン賞で評価されるポイント

造形・機能・ユーザー体験

デザイン賞では、見た目の美しさだけでなく、使いやすさや技術的な裏付けが問われます。ひろしまグッドデザイン賞の審査では「意匠性」として形状・色彩・模様の総合的な美しさ、「技術・機能性」として適切な技術・機能を有し安全・品質が十分に考慮されていること、「事業性」として生活者のニーズに応えていることが基本的要素として設定されています(参照*8)。

iFデザインアワードでは、機能性・オリジナリティ・持続可能性など5つの軸でポイントをつける仕組みが採られています(参照*3)。造形だけを取り出して評価するのではなく、使う人がどのような体験を得られるかを複数の軸で横断的に捉える点が、デザイン賞に共通する特徴です。

広告賞が「伝え方」を評価するのに対し、デザイン賞は「つくったもの自体の質」をこうした多面的な基準で測ります。応募にあたっては、造形・技術・ユーザーの利便性をバランスよく説明する準備が求められます。

社会性と持続可能性

近年のデザイン賞では、社会に対する配慮や持続可能性が審査の中核に位置づけられる傾向が明確になっています。iFデザインアワードでは「持続可能性」を審査の中核基準のひとつに据え、エネルギー消費やサプライチェーンの管理、製品のライフサイクル、リサイクル性、素材の選定などの観点から審査を行ったとされています。この持続可能性は82あるカテゴリーの評価基準において重要な位置を占めており、今後もデザイン価値の評価に取り入れていく方針が示されました(参照*9)。

キッズデザイン賞もまた、社会性を軸に据えた賞です。「子どもたちが安全・安心に日々を暮らせる」「子育てに誰もが参加し、当事者となる社会をつくる」など4つのゴールを掲げ、それらを実現するための優れた製品・サービス・空間・活動・研究を顕彰しています(参照*10)。

デザイン賞で求められる「社会性」は抽象的な理念ではなく、エネルギーや素材、安全、子育てといった具体的な課題への応答です。企業がデザイン賞を目指す場合、自社の取り組みがどの社会課題に応えているのかを明確に言語化することが、審査員に伝わる応募書類の条件になります。

広告賞とデザイン賞が重なる領域

広告賞とデザイン賞が重なる領域

広告賞とデザイン賞は評価軸が異なる一方で、ひとつのプロジェクトが両方の領域にまたがるケースも出てきています。「MANGA MANNERS」というプロジェクトは、日本のマンガを活用してマナー啓発を「注意喚起」から「楽しく学ぶ体験」へとデザインした取り組みで、グッドデザイン賞を受賞しました。審査員からは「おもてなしとルール遵守という二つの日本の慣習を融合した新しい手法として、多文化共生や国際交流の場で広く展開される可能性を持つ」と評価されています(参照*11)。コミュニケーション設計の巧みさと体験のデザインが一体となった好例です。

また、毎日広告デザイン賞の受賞作にも、広告とデザインの境界が溶けた事例があります。コミック『ちゃんと吸えない吸血鬼ちゃん』の新聞広告は、新聞紙面に腕を置くことで吸血の寸前を疑似体験できる仕掛けを施した体験型の広告で、読者自らの身体の関与を促し、新聞という媒体の特性を活かしたと紹介されています(参照*12)。

グッドデザイン賞の審査基準は、時代に合わせて拡張し変形していると指摘されています。以前なら「それはアートでしょ」「趣味でしょ」と切り捨てられていたようなものが議論の末に受賞作として残ることが増えているという見方が示されています(参照*3)。広告的なコミュニケーション力とデザイン的な体験設計が交差する領域は、今後さらに広がっていくと考えられます。

代表的な広告賞の特徴

代表的な広告賞の特徴

カンヌライオンズ

カンヌライオンズは、世界規模で広告・コミュニケーション領域の創造性を評価する賞です。ダイレクト部門では、大胆かつデータに基づく仕事が受け手との意味ある個別のつながりを築き、測定可能なビジネス上の成果を生み出すことを評価しています(参照*6)。

審査の公正性を保つ仕組みも明確に定められています。審査員は自分自身や自社、自社ネットワークに関連する作品には投票できません。自身が関わった作品が最終候補に残った場合は退室を求められ、残りの審査員だけで投票が行われます(参照*4)。

カンヌライオンズの特徴は、クリエイティビティとビジネス成果の両立を厳格に求める点です。応募時に成果の検証可能な証拠の提出が求められる部門もあり、表現力だけでなく実効性が問われる構造になっています。

広告電通賞・ACC賞・毎日広告デザイン賞

日本国内の代表的な広告賞として、まず広告電通賞があります。1947年12月に創設された日本で最も歴史ある総合広告賞で、取り扱い広告会社や制作会社にかかわらず、すべての広告主に応募資格があります。選考は全国の広告主・媒体社・クリエイター・有識者ら約500名から構成される選考委員によって行われます(参照*1)。

ACC賞にはマーケティング・エフェクティブネス部門が設けられており、広告の表現面だけでなく、マーケティング施策としての成果にも目を向けた審査が行われています(参照*13)。

毎日広告デザイン賞は1931年に商業美術振興運動の一環として創設されました。「一般公募・広告主課題の部」と「広告主参加作品の部」の2部門からなり、後者は毎日新聞に掲載された広告を対象とする部門です(参照*12)。日本国内の広告賞はそれぞれ成り立ちや審査の力点が異なるため、自社の広告がどの媒体・どの評価軸に適しているかを見極めて応募先を選ぶことが大切です。

代表的なデザイン賞の特徴

代表的なデザイン賞の特徴

グッドデザイン賞

グッドデザイン賞は1957年に創設された、日本を代表するデザイン評価制度です。製品・建築・ビジネスモデル・サービス・地域活動・教育活動など、有形無形を問わない多様な分野を評価対象としています。ある年度には5,225件の応募のうち1,619件が受賞作品として選出されました(参照*11)。

審査では、かたちの有無にかかわらず「人、社会、そして未来を豊かにするもの」を「グッド」と位置づけ、4つの視点に基づいて評価が行われます(参照*2)。

グッドデザイン賞の受賞対象が幅広い点は、企業にとって応募のハードルを下げる要素でもあります。製品を持たない企業でも、サービスや活動が「社会を豊かにするデザイン」として評価される可能性がある点は、他のデザイン賞と比べても際立った特徴です。

iFデザインアワード・キッズデザイン賞

iFデザインアワードは1954年に始まったドイツ発の賞で、レッドドットデザイン賞やアメリカのIDEA賞と並び世界三大デザイン賞のひとつに数えられています。ある年度には66の国と地域から約11,000件の作品がエントリーされました。最高の栄誉である「iFゴールドアワード」には75件が選出され、そのうち日本企業・日本人の受賞は12件でした(参照*9)。

iFデザインアワードでは「持続可能性」を審査の中核基準のひとつに据え、エネルギー消費やサプライチェーンの管理、製品のライフサイクル、リサイクル性、素材の選定などの観点から審査を行ったとされています(参照*9)。機能性やオリジナリティに加えて、社会的な責任を問う姿勢が鮮明です。

国内に目を向けると、キッズデザイン賞は子どもの幸福を軸にした独自の顕彰制度です。「子どもが参画して、みんなで次の社会をつくる」「子どもたちが感性や創造性豊かに育つ」「子どもたちが安全・安心に日々を暮らせる」「子育てに誰もが参加し、当事者となる社会をつくる」という4つのゴールを掲げ、製品・サービス・空間・活動・研究を対象としています(参照*10)。国際的な舞台で自社のデザイン力を示したい場合はiFデザインアワード、子どもや子育てに関わる事業を展開している場合はキッズデザイン賞と、事業の方向性に合わせた選択が可能です。

企業が狙うべき賞の選び方

企業が狙うべき賞の選び方

広告賞とデザイン賞のどちらを目指すかは、自社が「伝え方」を評価してほしいのか、「つくったもの自体の価値」を評価してほしいのかで分かれます。広告電通賞が掲げるように、広告賞は「優れた広告コミュニケーションを実践した広告主を顕彰する」ことで課題解決の道を広げる性格を持っています(参照*1)。広告施策の戦略性や成果を社外に示したい企業にとって、広告賞は自社の実行力を証明する場になります。

一方、デザイン賞はプロダクトやサービスそのものの質を社会に問う場です。持続可能性や安全性、ユーザー体験といった多面的な評価基準は、企業の開発思想やものづくりの姿勢を対外的に伝える手段として機能します。

賞の選定にあたって参考になるのは、賞そのものを「行き先を示してくれる地図」のように捉える見方です(参照*3)。現在の自社の立ち位置を確認するだけでなく、どの方向に進みたいかという経営の意志に沿って応募先を選ぶことで、賞への挑戦が組織の進む方向と一致します。

おわりに

広告賞はコミュニケーションの戦略性と成果を、デザイン賞は造形・機能・社会性を軸に評価します。両者の違いを把握した上で、自社が何を伝えたいのか、何を証明したいのかを明確にすることが、賞の選定における出発点です。

評価基準や審査プロセスは賞ごとに異なり、近年は広告とデザインの境界が重なる領域も広がっています。自社の経営方針や事業の方向性と照らし合わせながら、最も力を発揮できる場を選んでみてください。

お知らせ

広告賞やデザイン賞の違いを明確にすると、評価軸や表現の差が見え、企業の想いを言語化するコピーの重要性が高まります。戦略的なコミュニケーション設計やネーミング開発、PRにつなげることで受賞やブランド価値の伝達力が強化されます。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

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