
この記事のまとめ
カンヌライオンズ2026のアウトドア部門では、1,410件のエントリーから合計40作品がライオンを獲得しました。
- グランプリにはブラジル発の「Field Barcode」が選ばれ、サッカーの試合会場のピッチ全体を104メートルのバーコードに変え、リアルタイムでクーポンを届けるという施策が高く評価されました。
- ゴールドには「Sunburnt Car」をはじめ7作品が選出され、シルバー13作品、ブロンズ19作品と続きます。
- 日本関連では、飲料ブランド「TIGRIS」の取り組みなどが紹介されています。
アウトドア部門の位置づけと概要
アウトドアライオンズの審査対象
カンヌライオンズにおけるアウトドア部門は、屋外空間で体験される広告表現を対象としたカテゴリーです。
審査の範囲には、道路沿いや高速道路、交通機関脇に設置される従来型の平面シートや静止デジタルビルボードなど、標準的なビルボード枠に向けて制作された作品が含まれます(参照*1)。
屋外という物理空間での接触を前提とするため、オンライン上の閲覧体験とは異なり、通行人や乗客の目を瞬時にとらえる表現力が求められます。
デジタル技術を活用した動的な屋外広告も年々増えていますが、アウトドア部門の根幹にあるのは「実世界で見られること」という原則です。こうした審査軸を踏まえて受賞作を見ていくと、各施策がどのように屋外空間ならではの強みを活かしたかが浮かび上がります。
2026年の応募・受賞数と審査体制
2026年のアウトドア部門には1,410件のエントリーが寄せられ、そこから40作品にライオンが授与されました。
内訳はゴールド7件、シルバー13件、ブロンズ19件です(参照*2)。
審査員長を務めたのは、Rethinkのグローバル最高クリエイティブ責任者であるAaron Starkmanです。審査員にはCareem、VML、McCann New Zealand、DAVID São Paulo、Publicis Dublin、Talented Agency、Garnier、Havas Paris、OUTFRONT Mediaなど世界各地の制作会社やメディア企業から10名が集まりました(参照*3)。
北中南米、欧州、中東、アジア太平洋、アフリカと幅広い地域から審査員が選ばれており、多様な視点で作品が評価される体制が組まれていたことがわかります。
グランプリ「Field Barcode」

Mercado Livre×GUT São Pauloの施策概要
グランプリに輝いた「Field Barcode」は、ブラジルの大手ECプラットフォームMercado Livreと制作会社GUT São Pauloによる施策です。
長期にわたる改修工事を終えたサンパウロのパカエンブー・スタジアムで、Mercado Livreがネーミングライツ契約を締結したことを記念して実施されました(参照*4)。
具体的には、ピッチを104メートルにわたってスキャン可能なバーコードとして塗装し、スタジアムのどの座席からでも、またテレビ中継のあらゆるカメラアングルからでも視認できるようにしました。お披露目されたのはコリンチャンス対ボカ・ジュニアーズ戦で、SBT、ESPN、Disney+を通じて生中継されました。
観客や視聴者は専用のウェブアプリでバーコードを読み取り、リアルタイムで25%割引のクーポンを受け取ることができました。その結果、53,000件を超えるクーポン利用と大きな売上につながっています(参照*5)。
審査員長が語る選出理由
審査員長のAaron Starkmanは、「Field Barcode」へのグランプリ授与について次のように述べています。
カンヌで審査員が集まる前から、サッカーのピッチが巨大なバーコードに変わった映像を見て心を奪われたこと、そして審査員たちも同じ反応を示してくれることを期待していたと語りました(参照*2)。さらに彼は、アウトドアとはオンラインではなく実世界で目にされるものだと強調しました。
歩みを止めさせる物理的な体験であり、世界で最も古いメディアが依然として人と人をつなぐ最も驚きに満ちた方法であることを証明している、と評しています。
サッカースタジアムという巨大な屋外空間そのものをメディアに転換した点が、アウトドア部門のグランプリにふさわしいと認められた形です。
ゴールド受賞作7選

Sunburnt Car/TBWA Sydney
オーストラリアのTBWA/Sydneyが自動車整備チェーンmycar Tyre & Autoとともに手がけた「Sunburnt Car」は、アウトドア部門でゴールドを獲得しました。制作にはElevenおよびBOLT Sydney/ODD STUDIOSも参加しています(参照*6)。
このキャンペーンでは、オーストラリアの過酷な紫外線環境の危険性を伝えるために、車の内装を超リアルな「皮膚」で覆いました。
日光が人体に及ぼす影響を車のシートや内装で再現するという手法です。
1,410件のエントリーの中で、世界でゴールドを受賞したわずか7つのエージェンシーの一つとなりました。屋外環境そのものがもたらすリスクを、屋外広告というメディアで体感させるという構造が際立っています。
McDonald’s・Heineken・Heinzほか主要作品
ゴールドにはそのほか6作品が名を連ねました。
McDonald’sの「Bowling / Wedding / Gig」はロンドンのLeoが制作し、Heinekenの「Could Have Been a Heineken」はミラノのLePubが手がけています。
De’Longhiの「Tiny Coffee Shops」はマドリードのLola MullenLowe、Heinz Ketchupの「Coincidence?」はトロントのRethinkによるものです。
さらにBack Marketの「Let’s End Fast Tech」をパリのMarcelが、Coca-Colaの「The Last Coke in the Desert」をニューヨークのVMLが制作しました(参照*4)。
Heinekenの「Could Have Been a Heineken」では、デジタル屋外広告(DooH)の動画を活用し、延々と続くボイスメッセージを模した映像を掲出しました。
「一緒にビールを飲んで語り合ったほうがよかったのに」というメッセージを伝える構成です(参照*7)。
ゴールド受賞作は北米・南米・欧州・オセアニアにまたがっており、食品・飲料・テクノロジーなど業種も多岐にわたります。
シルバー・ブロンズ注目作品

シルバー受賞の注目キャンペーン
シルバーには13作品が選ばれ、なかでもデジタル屋外広告の省エネルギーに取り組んだイタリアのエネルギー企業Plenitudeによる「Dark Mode Ads」が目を引きます。
LePubと共同で、イタリア国内の自社店舗にあるLEDスクリーン向けに「ダークモード」仕様のビジュアルを制作し、スペインとフランスのDooHキャンペーンにも展開しました。
調査機関Certimacの検証によると、消費電力を最大74%削減できたケースもあったとされています(参照*7)。
そのほかシルバーには、カナダのFive CourageおよびThe Deliが手がけたNestlé Canadaの「KitKat Security Detail」や、オランダ・アムステルダムのOgilvyによるLoods 5 Homeの「Showroom on Ice」、オーストラリアのVML Sydneyと1001 Optometryによる「Magnif-Eye」などが含まれます(参照*8)。
省エネや空間演出など、屋外広告の社会的役割を拡張する視点が共通して見られます。
ブロンズ受賞の注目キャンペーン
ブロンズには19作品が選出されました。
ドイツのScholz & Friendsが制作したMcDonald’sの「McDelivery Speed Camera Ads」は、スピードカメラの設置場所付近に配達広告を展開するユニークな着想でブロンズを受賞しています。
デンマークのUncle Greyが手がけた通信会社Waooの「WiFi Invasion」も、日常的なWi-Fi体験を屋外広告に変換した施策として選ばれました(参照*8)。
フィンランドのUnited Imaginationsによる「Ukraine Air Raid Alerts – Emergency Broadcast System」は、UNICEFのウクライナ戦争被害者支援募金のために制作された作品です。
空襲警報をモチーフにした緊急放送形式の屋外広告で、社会課題を屋外メディアで訴求する手法が評価されました。
ブロンズ全体を通じて、地域密着型の表現から国際的な人道テーマまで、アウトドア部門の幅広さがうかがえます。
日本関連作品の受賞状況

日本関連で紹介された作品として、飲料ブランド「TIGRIS」を手がけた博報堂の「Condensed Identity」が挙げられます。
飲料パッケージの裏面ラベルという法定表示スペースをブランドの「顔」に変えるという発想で注目されました。専用のコンデンスド書体と多言語タイプ、モジュール設計を駆使し、情報密度の制約を拡張可能なアイデンティティへ転換しています。SKU数は2から20に拡大し、卸売は400%増加したと報告されています(参照*9)。
ニッカウヰスキーの「DEAR DIFFERENCE」は電通が制作し、竹鶴ピュアモルトの奥行きを、絵の具の実験から生まれた微細なアナログドットで表現しました。ウイスキーのブレンドの調和と創業者の人生を、印刷物から空間体験まで一貫して視覚化した施策です。
またセレクトショップSHIPSの50周年を記念した「CRAFTMAN.SHIPS」では、博報堂グラビティが制作を担い、実際の従業員が青い糸で手刺繍したグラフィックと約500枚の刺繍布によるストップモーション映像を展開しました。
「青いまま、前に進む」というコンセプトを職人の手仕事で体現した作品です。
受賞作から読む5つの傾向

2026年のアウトドア部門受賞作を俯瞰すると、5つの傾向が浮かび上がります。
- 物理空間そのものをメディア化する発想。グランプリの「Field Barcode」がサッカーピッチを104メートルのバーコードに変えたように、既存の建築物や施設をそのまま広告媒体に転換する施策がゴールド以上で複数見られました。
- 屋外広告にデジタル技術を重ねたインタラクティブ体験の拡張。バーコード読み取りによるリアルタイムクーポンのように、DooHとモバイル体験を組み合わせた作品が評価を集めました。
- 社会課題や環境配慮との接続。「Dark Mode Ads」は消費電力を最大74%削減し、「Sunburnt Car」は紫外線リスクを体感させるなど、屋外広告を通じて公益性を示す作品がシルバー・ゴールドで目立ちます。
- ブランドの手仕事や職人性の可視化。日本の「CRAFTMAN.SHIPS」に象徴されるように、人の手による制作過程をアウトドア表現として見せる作品も見られます。
- グローバル食品・飲料ブランドの存在感。McDonald’s、Heineken、Heinz、Coca-Colaといった世界的ブランドがゴールドに並び、屋外広告がマス向けコミュニケーションの主戦場であり続けていることを示しています。
審査員長が「世界で最も古いメディアが、依然として人をつなぐ最も驚きに満ちた方法だ」と評したとおり、アウトドア部門の受賞作は、物理空間でしか生まれない接触の力を多角的に証明した作品群といえます(参照*2)。
おわりに
カンヌライオンズ2026のアウトドア部門は、1,410件のエントリーから40のライオンが贈られ、サッカーピッチを巨大バーコードに変えた「Field Barcode」がグランプリに輝きました。
スタジアム、車、店舗のLEDスクリーン、そして街頭と、それぞれの物理空間でしか成立しない表現が高く評価されています。
屋外広告というメディアの原点である「実世界で人の目をとらえる」力は、デジタルとの掛け合わせや社会課題への接続によってさらに広がりを見せています。
来年の受賞作がどのような空間体験を切り拓くのか、アウトドア部門の動向は引き続き注視する価値があります。
お知らせ
カンヌライオンズ、2026、アウトドアの潮流を受けて、インナー・コピーライティングで企業の想いを言語化し、新たな社会とのつながりを共創します。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。
コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。
監修者
梅田悟司(うめださとし)
コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了
1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。
ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。
武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。
CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。
著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。
参照
- (*1) Outdoor | Lions | Awards | Cannes Lions
- (*2) 73rd Cannes Lions International Festival of Creativity announces first winners
- (*3) Cannes Lions announces 2026 Awarding Jury line-up
- (*4) Cannes Lions 2026: Outdoor winners
- (*5) note(ノート) – Cannes Lions 2026 Day 1 Report: Turning Cars into Frogs, Fields into Barcodes, and Tidal Power into Space Exploration
- (*6) Advertising Council Australia – Australia claims Gold and Silver on opening day of Cannes Lions 2026
- (*7) invidis – Cannes Lions: The 2026 Outdoor Winners
- (*8) https://www.reasonwhy.es/media/library/ganadores-outdoor-cannes-lions-2026.pdf
- (*9) note(ノート) – Cannes Lions 2026 Design Category Winners: A Complete Summary (All winners from Grand Prix to Bronze, with mini-deconstructions and actual ad links)