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ADFEST 2025受賞作品まとめ|アジア太平洋の広告クリエイティブ最新事例と傾向

ADFEST 2025受賞作品まとめ|アジア太平洋の広告クリエイティブ最新事例と傾向

はじめに

アジア太平洋地域の広告クリエイティブを評価する祭典ADFESTは、1998年から続く歴史ある国際広告祭です。地域固有の文化や社会課題を反映した作品が集まるこの場を見逃すと、アジア発の表現潮流やビジネスにつながるヒントを把握しづらくなります。

ADFEST 2025では「COLLiDE」をテーマに掲げ、多様性と共創から生まれる可能性が示されました。本記事では、開催概要から主要受賞作品、日本勢の実績、国別傾向、そしてアジア広告のトレンドまでを整理します。

ADFEST 2025の概要

ADFEST 2025の概要

テーマ「COLLiDE」の意図

ADFEST 2025のテーマは「COLLiDE」でした。このテーマは、Guan Hin Tayの著書「Collide: Embracing conflict to boost creativity」(Penguin Random House SEA刊のベストセラー)に着想を得ており、Kentaro Kimuraの後押しによって選ばれました。共創の力と、多様性を受け入れることで広がる可能性を強調する意図が込められています(参照*1)。

ADFESTはアジアのブランドマーケティングコミュニケーションにおける創造性の象徴であり、アジア文化を毎年祝う場として位置づけられています。異なる背景や視点がぶつかり合う「衝突」を肯定的に捉え、そこから新しい表現を生み出そうという姿勢が、2025年のプログラム全体を貫くテーマとなりました。

開催規模とエントリー数

ADFEST 2025は2025年3月20日から22日までの3日間、タイ・パタヤのRoyal Cliff Hotels Groupで開催されました。56都市から900名を超えるデリゲートが参加し、27のセッションに55名のスピーカーが登壇したほか、10名の講師による7つのワークショップも実施されています(参照*2)。

Lotus Awardsへのエントリー総数は1,641件で、2024年の1,587件から増加しました。Brand Experience、Commerce、Design、Entertainment、Media、Outdoor、PRの7カテゴリーで前年を上回るエントリーが寄せられています(参照*3)。エントリー数の伸びは、アジア太平洋地域における広告クリエイティブへの関心の高まりを裏づける数字といえます。

主要受賞作品

主要受賞作品

Grande受賞作の一覧

ADFEST 2025では複数のカテゴリーでGrande(最高賞)が授与されました。Film Lotus部門では、Leo Thailand(バンコク)がKrungsri First Choice「What the Fast!」でGrandeを獲得しています。審査員は、Film部門のエントリー数と受賞作の多さがこの地域の旺盛な創造力を示しており、ユーモアの多用が楽観と笑いの力への信念を映していると述べました(参照*4)。

Design Lotus部門では、Star Reacher Advertising / Leo Malaysia(クアラルンプール)がHeinekenの「Heineken Hidden in Plain Sight」でGrandeを受賞しました。審査員は「アイデアが大胆であっただけでなく、クライアントはさらに大胆だった。大きなメディア課題を解決するために生み出されたソリューションだ」と評価しています(参照*3)。

Creative Strategy部門では、Havas Creative India(ムンバイ)がThe Times of Indiaの「The Ink of Democracy」でGrandeを受賞しました。また、Effectiveness部門ではBBDO India(ムンバイ)がAriel Indiaの「HomeTeams #ShareTheLoad」で同賞を獲得しています。さらにINNOVA LotusのGrandeはMcCann Worldgroup India(ムンバイ)がBuckaroo Footwearの「Fit My Feet」で獲得し、Grande for HumanityはFinch / SuperMassive(シドニー)の「36 Months ‘Raising the Age of Social Media Citizenship’」に贈られました(参照*4)。

注目のGold受賞作品

Gold受賞作にも注目すべき事例が並びました。Lotus Roots部門のGrandeは、BBDO Bangkok(バンコク)がMercedes-Benzの「The Meaning of Benz」で獲得しています。審査員は「Lotus Rootsはその土地ならではの文化を讃えるカテゴリーであり、この作品が世界のどこか別の場所でも成立するかという問いを最優先にした」と選定理由を説明しました(参照*4)。

日本勢ではDentsu Inc.(東京)がDigital Craft部門でVisiongramの「Visiongram」によりGoldを受賞しています。さらに日光市の「Journey Around Your Health」、Ad Museum Tokyoの「It Works」、The Ad Museum Tokyoの「Morning is Born」でも計3つのGoldを獲得しました(参照*3)。こうしたGold作品は、テクノロジーの活用から文化的洞察まで幅広いアプローチを示しています。

日本勢の受賞実績

日本勢の受賞実績

dentsuの4年連続Network of the Year

dentsuはADFEST 2025でNetwork of the Yearを獲得し、4年連続の受賞となりました。ADFESTが2010年に同賞を設けて以来、dentsuによる受賞は通算9回目です。2025年は合計43のLotus Awardsを獲得しており、ネットワーク全体としての安定した成果がうかがえます(参照*5)。

Dentsu Inc.(東京)は、Agency of the YearとEast Asia Agency of the Yearにも選ばれました。ネットワーク賞とエージェンシー賞を同時に獲得した形であり、クリエイティブの質と量の両面で評価されたことになります(参照*2)。

日本発の主要受賞作品

Dentsu Inc.以外にも、日本の広告グループは複数の賞を持ち帰りました。Hakuhodo DY Groupは、ADFEST 2025 Lotus Awardsで合計9賞を獲得しています。内訳はGold 1件、Silver 5件、Bronze 2件、Lotus Roots 1件です(参照*6)。

ADKグループは「Electric Salt」と「GODZILLA TWIN SAGA」の2作品で合計4賞を受賞しました。INNOVA LOTUS(Gold相当)をはじめ、SilverとBronzeを含む受賞です(参照*7)。日本は国別受賞数でも44賞と首位に立っており、複数のグループがバランスよく貢献した結果が反映されています。

国別の受賞傾向

国別の受賞傾向

受賞数上位5カ国の特徴

ADFEST 2025の国別受賞数は、日本が44賞で首位、次いでインドが39賞、シンガポールが33賞、タイが32賞、フィリピンが21賞という順でした(参照*8)。上位5カ国に東アジア、南アジア、東南アジアの国がまんべんなく含まれており、特定地域への偏りが小さい点が特徴的です。

インドはGrande受賞作を複数輩出しており、Creative StrategyやEffectivenessなど戦略系カテゴリーでの強さが目立ちました。タイはFilm部門のGrandeを地元エージェンシーが獲得しています。フィリピンはIndependent Agency of the YearをGigil Manilaが受賞しており、独立系エージェンシーの存在感を示しました。各国の強みがカテゴリーごとに分かれている傾向は、アジア太平洋地域のクリエイティブの多層性を映し出しています。

地域別Agency of the Yearの分布

ADFEST 2025では、地域別にAgency of the Yearが授与されました。East AsiaはDentsu Inc.(東京)、Middle EastはBigTime Creative Shop(リヤド)、OceaniaはOgilvy(シドニー)、South AsiaはBBDO India(ムンバイ)、Southeast AsiaはOgilvy Singapore(シンガポール)がそれぞれ受賞しています(参照*2)。

Independent Agency of the YearはGigil Manila(マニラ)が獲得し、2位以下にはBigTime Creative Shop(リヤド)、Good People Network(ジャカルタ)、SuperMassive(シドニー)、CJ WORX(バンコク)、Motion Sickness(オークランド)が続きました。グローバルネットワーク系と独立系の双方が各地域で成果を出しており、中東やオセアニアのエージェンシーの台頭もうかがえます。

Spikes Asiaとの比較

Spikes Asiaとの比較

アジア太平洋地域を対象とする広告祭としては、ADFESTのほかにSpikes Asiaが知られています。ADFESTは非営利団体として運営されており、アジア太平洋およびMENA地域のクリエイティブ産業を育成・支援することを掲げています。世界的な広告評価指標であるWARC Creative 100 Rankingsに含まれる、世界7つの地域広告祭のひとつです(参照*1)。

Spikes Asia 2025ではオーストラリアとインドがそれぞれ5つのGrand Prixを獲得し、カザフスタンが史上初めて2つのGrand Prixを受賞しました。Special Awardsでは、Asia-Pacific Agency of the YearにColenso BBDO(オークランド)、Ogilvy(シンガポール)、McCann(グルガオン)が選ばれ、Network of the YearにはOgilvy、dentsu、TBWA Worldwideが名を連ねています(参照*9)。

ADFESTがLotus Rootsのようにローカル文化を深く掘り下げるカテゴリーを設けているのに対し、Spikes Asiaはより広域のネットワーク競争が前面に出る傾向があります。両祭典でdentsuやOgilvyといったネットワークが上位に入っている一方、ADFESTではGigil ManilaやBigTime Creative Shopなど独立系エージェンシーの受賞が際立ちました。両方の受賞結果を併せて確認することで、アジア太平洋のクリエイティブ地図をより立体的に捉えることができます。

受賞作に見るアジア広告トレンド

受賞作に見るアジア広告トレンド

ローカル文化の再解釈

ADFEST 2025の受賞作には、地域固有の文化を広告表現に昇華する動きが見られました。Lotus Roots部門のGrandeを獲得したBBDO BangkokのMercedes-Benz「The Meaning of Benz」はその代表例です。審査員は「Lotus Rootsは、グローバルな会話の中で誤解されたり見過ごされたりしがちな独自の文化を讃えるカテゴリーだ」と述べ、「この作品が世界のどこか別の場所でも成立するかという問いを最優先にした」と選定基準を明かしています(参照*4)。

ADFEST 2025の受賞作について個人的な分析を行ったある観点では、「ブランド資産の発見」や「課題と仕組みのクリエイティビティ」といったテーマが提示されています(参照*10)。ローカルの文脈をどれだけ深く理解し、それを普遍的な表現へと変換できるかが、アジア発の広告作品に問われている視点だといえます。

アクセシビリティとサステナビリティ

ADFEST 2025で新設されたSustainable Lotus部門は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を意識した作品を評価するカテゴリーです。初年度にもかかわらず55件のエントリーが集まり、審査の結果Bronze 4件、Silver 4件、Gold 2件、Grande 1件が授与されました(参照*4)。

アクセシビリティの観点では、INNOVA Lotus GrandeのBuckaroo Footwear「Fit My Feet」が象徴的です。インドでは130万人が先天性内反足に苦しみ、靴を履くことが困難な状況にあります。高額な外科手術や靴を購入する余裕がない人々に向けて、2.4ドルのカスタマイズ可能なビーチサンダルキットを販売し、十分なサービスを受けられない層を支援すると同時に、インドの靴職人に新しい収益モデルを生み出しました(参照*10)。技術の華やかさではなく、創意工夫で社会課題に向き合う作品が高く評価された点は、アジア広告の方向性を考えるうえで見逃せない動きです。

おわりに

ADFEST 2025は、テーマ「COLLiDE」のもと、多様な文化の衝突と共創がクリエイティブの原動力になることを改めて示しました。ローカル文化の再解釈、アクセシビリティ、サステナビリティといった領域で新たなカテゴリーや受賞作が生まれ、アジア太平洋地域の広告表現の幅はさらに広がっています。

2026年のADFESTでは、こうした潮流がどのように深化し、新しいテーマや参加国の変化としてあらわれるのかが注目されます。アジア発のクリエイティブに携わる方は、ぜひ各受賞作の詳細にも目を通してみてください。

お知らせ

ADFEST 2025に向けた表現の磨き方は、経営者の想いを言語化するインナー・コピーライティングで、社会とつながるコミュニケーション戦略へとつなげます。事業会社からスタートアップまで現場での実践と組合せが効果を高めます。

株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

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