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D&AD Awards 2025受賞作品まとめ|受賞作から見る最新傾向

D&AD Awards 2025受賞作品まとめ|受賞作から見る最新傾向

はじめに

D&AD Awardsは、デザインと広告の世界で高い基準を持つ国際賞として知られています。2025年の審査では過去最多となる86カ国からの応募が集まり、クラフトの質と商業的なインパクトの両立が問われました。受賞傾向を把握しないまま制作に臨むと、世界水準の評価軸と自分たちのアウトプットとの間にずれが生じかねません。

D&AD Awards 2025では、デザインが事業成長や行動変容をどれだけ生み出したかが重視されました。本記事では、Black PencilやYellow Pencilの受賞作を中心に、審査員が注目した6つのトレンドやAI活用の実態まで、具体的な作品と評価コメントをもとに整理していきます。

D&AD Awards 2025の全体像

D&AD Awards 2025の全体像

過去最多86カ国からの応募規模

D&AD Awards 2025には、合計11,689件のエントリーが寄せられ、個別の作品数にすると30,000点を超える規模となりました。応募元は86カ国に及び、これはD&AD Awardsの歴史上もっとも多い数字です。地域別の内訳を見ると、アメリカとカナダが31%で最大の割合を占め、ヨーロッパ(イギリス・アイルランドを除く)が20%、イギリスとアイルランドが20%で続きます。中東・インドが5%、東南アジアが4%、オセアニアが5%、中南米が5%、中国が5%、日本・シンガポールが5%、アフリカが1%という構成です(参照*1)。

審査には330名の国際的な審査員がロンドンに集まり、デザイン、広告、クラフト、エンゲージメント&エクスペリエンス、ヘルス、ラグジュアリー、エンターテインメント、インパクトなどの部門にまたがる44の審査チームが編成されました。新たに「Creator Content」というカテゴリーが設けられ、ブランディング部門は「New Brand Identity」と「Brand Identity Refresh」の2つに分割されています。これは過去の応募数の多さに対応するための措置です(参照*1)。

Pencilの種類と授賞数

D&AD Awardsでは評価の高い順にBlack Pencil、White Pencil、Yellow Pencil、Graphite Pencil、Wood Pencilという等級が設けられています。さらに社会的インパクトを評価するFuture Impact Pencilも存在します。2025年の授賞数はBlack Pencilが3本、White Pencilが3本、Yellow Pencilが48本、Graphite Pencilが176本、Wood Pencilが434本、Future Impact Pencilが4本でした(参照*2)。

D&AD CEOのDara Lynchは、3本のBlack Pencilが授与されたことに触れ、革新的なアイデアには美的な魅力と具体的なインパクトの両方が求められると述べています。自動化の時代にあって、クラフトマンシップの復権がアイデアの丁寧な実行に真の卓越性があることを示していると語りました(参照*2)。

Black Pencil受賞3作品

Black Pencil受賞3作品

Designing Paris 2024の革新性

Black Pencilのひとつは、W Conran Designが手がけた「Designing Paris 2024」で、グラフィックデザイン部門での受賞です。審査員はこの作品をスポーツマーケティングにおけるブレイクスルーと評価しました。従来のスポーツマーケティングの美学を刷新し、遊び心がありながらスケーラブルなデザインである点、さらにヘリテージとスポーツを融合させた統一感のある独自の世界観を持つ点が高く評価されています(参照*2)。

2025年の審査全体を通じて、審査員はクリエイティブワークの商業的な実現可能性を重視しました。単にアイデアのためのアイデアではなく、そのアイデアがビジネスの成功や消費者の行動変容にどのようなインパクトをもたらすかが問われたのです。3つのBlack Pencil受賞作はいずれも、デザインが商業的な価値と行動変容を推進する力を示した作品でした(参照*2)。

A$AP Rocky – Tailor Swifの物語構造

2つ目のBlack Pencilは、Iconoclast LAが制作したA$AP Rockyの楽曲「Tailor Swif」のミュージックビデオです。審査員は、視覚的に人を惹きつける物語表現の力を示した作品だと評しました。この作品では音楽がナラティブと不可分に結びついており、後付けの演出ではありません(参照*3)。

映像にはシュルレアリスムやミーム文化を参照したシーンがちりばめられ、デジタルカルチャーへの言及が全編を通じて展開されます。物語構造そのものが音楽と映像の関係を再定義しており、ミュージックビデオというメディアの可能性を広げた点が受賞の決め手となりました。商業的インパクトと行動変容の両立を審査員が重視したD&AD Awards 2025において、エンターテインメント領域のクラフトが高く評価された象徴的な事例です。

Spreadbeatsの技術的独創性

3つ目のBlack Pencilを獲得したのは、FCB New Yorkが手がけた「Spreadbeats」です。この作品はミュージックビデオの可能性とその意図の両方を押し広げたと評価されました。Spotifyがクライアントに送付するメディアプランの表計算シートの中に、直接コーディングしてミュージックビデオを作り上げるという手法が採られています(参照*3)。

表計算ソフトの行と列がダイナミックに動くキャンバスへと変わり、ファイルサイズはわずか10MBです。メディアプランナーが日常的に使うExcelのツールだけで制作されている点が、技術的独創性の核心にあります。既存のプラットフォームにブランドが入り込む事例として、ツールの制約を逆手に取った発想力が際立つ作品です。

注目のYellow Pencil・話題作

注目のYellow Pencil・話題作

D&AD Awards 2025では合計48本のYellow Pencilが授与されました。Yellow PencilはD&ADにおけるゴールド相当の評価にあたり、厳しい審査を経て選ばれるものです。日本からもYellow Pencilを受賞した作品があり、Cannes Lionsでのゴールドや、ONE SHOWでの3部門ゴールド、CLIOでのグランプリなど複数の国際賞を横断して高く評価された実績が報告されています(参照*4)。

話題作のひとつとして、FCB New Yorkが手がけたMichelob Ultraの「Lap of Legends」が挙げられます。この作品ではAI、AR、機械学習といった先端技術を活用し、実在のF1レーサーとバーチャルドライバーが競う「史上初のリアル対バーチャルF1レース」を実現しました。6名のレーシングアイコンの合計720以上のレースデータを深層分析し、デジタル上の人格を構築しています(参照*5)。

D&ADの理事であるLisa Smithは、多くのブランドがアイデンティティを刷新している現状に触れつつ、審査の難しさを指摘しました。あまりに多くの応募作が既存のデザインコードやトレンドに従い、カテゴリーに関係なく画一的な印象を与えていたといいます。受賞に至ったのは、期待される枠を超え、インスピレーションを与え、しっかりと作り込まれ、目的に真に適合した作品だったと述べています(参照*2)。

6つのトレンドに見るクラフト傾向

6つのトレンドに見るクラフト傾向

Sea Change DesignとBrand DNA

D&AD Awards 2025の審査員は、優れたビジュアルやクラフトだけでなく、デザインが事業成長・変革・行動変容にもたらすインパクトを評価軸に据えました。「事業成長・変革・行動変容を重視する傾向(Sea Change Design)」が、審査の前提として示されています。グラフィックデザイン部門の審査員長であるPum Lefebureは、クラフトは非常に大切だがデザイナーはCEOのように考える必要があるとし、デザインは人々の思考・行動・世界の見方を変えなければならないと語っています(参照*5)。

D&AD Awards 2025のトレンドレポートでは、ブランドアイデンティティにおいて文化的な関連性と独自性が不可欠であると位置づけています。受賞作品はトレンドや既存のデザインコードに寄りかかるのではなく、ブランドのDNA(Brand DNA)を深く掘り下げることで、画一化が進む環境のなかでも際立つブランディングを実現しました。ブランドの歴史と現代性をつなぎ、形式を大胆に実験する姿勢が共通して見られます(参照*5)。

Unmistakably HumanとRadical Candour

2024年に「The Human Toolkit」として注目されたトレンドの延長線上に、2025年は「まぎれもなく人間的(Unmistakably Human)」という傾向が浮かび上がりました。受賞作の多くは、不合理さ、不条理さ、奇妙さ、感情のゆらぎといった「人間らしさ」の本質を正面から受け入れています。手づくり感への反骨的な回帰が見られ、コンセプトにも実行にも「人」が宿る仕事が高く評価されました(参照*5)。

もうひとつのトレンドとして「過激な率直さ(Radical Candour)」が挙げられています。これは誠実さをブランド戦略に変え、信頼を獲得するというアプローチです。飾らない率直さが消費者との関係構築において有効であることを、受賞作品群が示した形になります(参照*6)。

自動化が進む時代にあって、人間の不完全さや正直さにこそ差別化の源泉があるという視点は、制作における判断基準のひとつとして参考になります。

Emotive ScreenとFull Service Creator

「感情を動かすスクリーン(Emotive Screen)」のトレンドでは、ゲームが文化の周辺領域から中心へ移行した動きが取り上げられています。世界で34億人のプレイヤーを擁するゲームは、2025年には現実の社会課題に正面から向き合う新たな目的を帯びるようになりました。受賞作品のなかには、認識を変え、偏見に挑み、包摂性を高めながら、感情に深く響くものがありました(参照*5)。

「フルサービス・クリエイター(Full Service Creator)」のトレンドは、ソーシャルメディア上のクリエイターの影響力拡大と関連しています。消費者の61%が、ブランド広告よりもクリエイターの推薦を信頼しているという2025年の調査データが示されています。大きな影響力を持つクリエイターたちが成熟期を迎え、マーケティングのルールを書き換えつつある状況を、D&ADが新設した「Creator Content」カテゴリーの受賞作が鮮明に映し出しました(参照*5)。

AI活用と制作への示唆

AI活用と制作への示唆

D&AD Awards 2025では、AIを自己申告で使用したとするショートリスト・受賞作品の割合が7.6%でした。2024年の9.3%から減少しており、審査員からはAIに関する知的財産権の問題や法的リスクへの懸念が聞かれました(参照*5)。

AIの活用に対する評価の質も変化しています。R/GAのBen Cooperは、AIを使っていること自体が評価される段階は過ぎたと指摘します。いまや問われているのは、どれだけうまく使いこなしているか、そしてAIが実際に作品の質を高めているかどうかです。2025年の受賞作においてAIが意味のある形で存在するとき、それは見出しになるような要素ではなく、世界観の構築、感情への訴求、文化的な切迫感といった、より大きな何かを支える見えないインフラとして機能していたと述べています。作品が受賞に至ったのは、人間にしかもたらせない視点、審美眼、物語力、リスクを取る姿勢があったからだと語りました(参照*5)。

D&AD CEOのDara Lynchも、自動化の時代において真の卓越性はアイデアの丁寧な実行にあると強調しています。見た目が良いだけでは足りず、持続的な印象を残すことが真のクリエイティブ・エクセレンスだとしました(参照*2)。AIを道具として使いこなしつつ、人間ならではの判断と実行力をどう磨くかが、制作の現場で問われる局面に入っています。

おわりに

D&AD Awards 2025は、クラフトの質と商業的なインパクトの両立、人間らしさへの回帰、ブランドDNAの深掘りといった明確な評価軸を示しました。AIの役割は「見えないインフラ」へと変わりつつあり、人間にしか担えない視点と実行が受賞の決定打となっています。

D&AD Awards 2026では、八木義博がアートディレクション部門の審査員長に選出されており、2026年5月に英国で授賞式が開催される予定です(参照*7)。2025年の受賞傾向を踏まえたうえで、次年度の審査がどのような方向へ向かうのか、引き続き注視していく価値があります。

お知らせ

D&AD 2025で注目されるクリエイティブ潮流を踏まえ、インナー・コピーライティングで経営者の想いを言語化し、事業やブランドのコミュニケーション戦略へと自然につなげます。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

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