クリエイティブ最前線

国内外のクリエイティブ動向を
ピックアップするメディア

ACC賞2025受賞作品まとめ|各部門の注目作と2025年トレンド

はじめに

国内広告の一年を象徴するACC賞は、広告やクリエイティブに関わる人にとって欠かせない指標です。ACC賞2025ではどのような作品が高く評価され、広告表現にどんな変化が見られたのか。この問いに対する答えは、応募総数2,263本の中から選ばれたグランプリ作品群に凝縮されています。

本記事では、ACC賞2025の主要受賞作品と部門別の注目作、そして審査で評価されたポイントや2025年ならではの広告トレンドを順に取り上げます。

ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSとは

ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSとは

65年の歴史と位置づけ

ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSは、テレビ・ラジオCMの質的向上を目的に1961年から開催されてきた「ACC CM FESTIVAL」を前身とする広告賞です。2017年にあらゆる領域のクリエイティブを対象としたアワードへリニューアルし、日本最大級のアワードとして広く認知されています(参照*1)。

2025年の開催は第65回にあたり、応募総数は2,263本にのぼりました(参照*2)。テレビCMだけでなく、デジタル領域やデザイン、社会課題に根ざしたプロジェクトまで幅広い作品が集まっており、広告産業全体の「今」を映し出すアワードとしての役割を担っています。

全9部門と審査体制

ACC賞2025は、フィルム、フィルムクラフト、ラジオ&オーディオ広告、マーケティング・エフェクティブネス、ブランデッド・コミュニケーション、PR、デザイン、メディアクリエイティブ、クリエイティブイノベーションの全9部門で構成されています。各部門の審査会は2025年8月下旬から10月上旬にかけて実施され、さまざまな業界の第一線で活躍するクリエイターや有識者、著名人など延べ114名の審査委員が厳正な審査を行いました(参照*3)。

延べ100名を超える審査体制は、特定のジャンルや表現手法に偏らない多角的な評価を可能にしています。広告主、制作者、そして社会をつなぐ視点が審査の土台に据えられている点は、ACC賞2025の特徴として押さえておきたい要素です。

総務大臣賞/ACCグランプリ一覧

総務大臣賞/ACCグランプリ一覧

フィルム部門:史上稀なWグランプリ

フィルム部門Aカテゴリーは大接戦となりました。15秒から180秒の長尺まで、さまざまな「面白い」と「何これ」がせめぎ合う展開が続き、最終決戦はコミケのボディメンテとソフの上さまに絞られました。何度議論と投票を繰り返しても決着がつかず、結果として史上稀に見るWグランプリが誕生しています(参照*3)。

一方、Bカテゴリーは終始「ぶっちぎり」の展開でした。「通帳の人」がポールトゥウィン、つまりスタートから首位を明け渡さないままグランプリを獲得しています(参照*4)。審査の過程で意見が割れるほどの拮抗は、2025年のフィルム作品の層の厚さを物語っています。

ブランデッド・コミュニケーション部門

ブランデッド・コミュニケーション部門Aカテゴリーでは、大阪・道頓堀の金龍ラーメンによる「道頓堀 金龍のしっぽ Project」がグランプリを受賞しました。立体看板のしっぽ部分が隣の土地にはみ出ていると訴えられ撤去を迫られた際、しっぽ断面のデザインや龍の看板への涙の装飾、カニの立体看板へのしっぽの設置など複数のアイデアを、立体看板制作会社やかに料理店とのコラボレーションで実現しています。ネガティブなニュースを大阪らしいユーモラスな物語に昇華させたこの取り組みは日本全国で話題となり、金龍ラーメンのブランド好意度を大きく向上させる成果につながりました(参照*5)。

Cカテゴリーのデジタル・ソーシャルクラフトでは、低遅延ネットワーク構想IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)を活用した「IOWN×Perfume」がグランプリに選出されました。視覚・聴覚にとどまらず人間の五感すべてがつながるコミュニケーションの実現をめざす内容です(参照*6)。テクノロジーとエンターテインメントの掛け合わせが、ブランデッド・コミュニケーションの可能性を広げた事例といえます。

その他部門のグランプリ作品

マーケティング・エフェクティブネス部門では、石川県の能登半島地震における広報活動が、最高賞の総務大臣賞/ACCグランプリを受賞しました(参照*7)。記録が残る2001年以降、石川県内の企業や自治体がこの最高賞を受賞するのは初めてのことです(参照*7)。災害というきわめて困難な状況下で、地域の消費を喚起する広報が成果を上げた点が高く評価されています。

クリエイティブイノベーション部門では、ヘラルボニーが手がける「HERALBONY Art Prize」が総務大臣賞/ACCグランプリに輝きました。応募団体にはヘラルボニーのほか6D、ium、Re:design、スーパー・ファクトリー、Advalay、サニーサイドアップが名を連ねています(参照*8)。複数の企業が連携し、新しい価値を社会に届けるプロジェクトが最高賞を獲得した形です。

部門別の注目受賞作

部門別の注目受賞作

メディアクリエイティブ部門

メディアクリエイティブ部門のグランプリは「PLAY THE PRESERVATION – 遊べば遊ぶほど保全が進む-」が獲得しました。世界遺産である軍艦島にフォーカスし、デジタルデータで再現された島全体のコンテンツをオンラインゲーム「Fortnite」のステージに構築することで、課金収益の一部を島の保全資金に充てるエコシステムを実現しています(参照*9)。

ゴールドには、味の素の「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」が選ばれました。この作品はPR部門でブロンズ、ブランデッド・コミュニケーション部門デジタル・ソーシャルクラフトでもブロンズを受賞しており、複数部門にまたがる評価を得ています(参照*10)。ゲーム空間や音といった従来型の広告枠の外側にある媒体を活用した作品が、メディアクリエイティブ部門の上位を占めた点が特徴的です。

デザイン・クリエイティブイノベーション部門

デザイン部門の受賞ラインアップは、バラエティに富んだ構成が際立ちました。審査では、医療系のようなソーシャルインパクトの高いプロジェクトだけが上位を独占することなく、国スポのような地方発で日本の歴史と未来をつなぐデザイン、ヒプノシスマイクのような新しいエンターテインメントコンテンツの仕組み、フードロスを減らすための涙目シールなど、多様なプロジェクトが受賞しています。「社会を動かすアイデアを鮮やかに形にしている」という共通項が見られるほか、2025年からはプロジェクトの背景やインパクトの大小とは関係なく純粋にクラフトの品質に対して贈賞するデザイン・クラフト賞もスタートしました(参照*11)。

クリエイティブイノベーション部門では、医療・地方・社会などさまざまな課題に対して新しいサービスやアイデアがどのように変革をもたらすかが重視されました。創造性の力で社会を前進させ、世界に羽ばたくプロダクトやサービスを応援したいという想いが審査の軸に据えられています(参照*8)。両部門に共通するのは、表層的な美しさだけでなく、社会的な課題と接続するデザインやイノベーションが評価の中心に置かれた点です。

審査で評価されたポイント

審査で評価されたポイント

「心を動かす力」と社会的メッセージ

ACC賞2025の全体を通じて、多種多様なジャンルの作品が選出されていることが特徴でした。審査の議論を重ねるなかで見えてきた評価基準は3つあります。クラフトのためのクラフトではなく「人の心を動かすことができる作品」であること、「社会へのメッセージ性を内包した作品」であること、そして「愛がある作品」であることです(参照*3)。

技術的な完成度だけでは最高評価に届かず、受け手の感情や社会に対する問いかけが求められた点は、広告コミュニケーションの本質をあらためて浮き彫りにしています。企業が発信するメッセージにおいても、内側にある想いをどれだけ真摯に言語化できるかが、受け手の共感を左右する要素になっています。

広告とコンテンツの境界の融解

広告・コンテンツ・事業の境界が曖昧になり一体化する傾向は、2025年にさらに強まったとされています。ブランデッド・コミュニケーション部門が設立当初から掲げているコンセプトは「その他、募集。」であり、3つのグランプリ作品はいずれもその流れを象徴する存在で、広告の未来の片鱗と可能性を見せてくれるものばかりだと総評されています(参照*12)。

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)×Perfumeの取り組みも、テクノロジーの力で離れた空間が1つになる未来のコミュニケーションの形を誰もが想像できる形へと昇華させ、新たなプレゼンテーション体験の境地を切り拓いたことが高く評価されました(参照*6)。従来の「広告枠」に収まらない体験設計が評価を集めた2025年の傾向は、送り手が「何を伝えるか」だけでなく「どの接点で、どんな体験として届けるか」まで構想する必要性を示しています。

2025年に見えた広告トレンド

2025年に見えた広告トレンド

ACC賞2025では、従来の「メディアの定義」が変わりつつあるという認識が強まっています。メディアクリエイティブ部門にエントリーされた108の作品を全体的に俯瞰すると、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といった旧来メディアは確かに存在しているものの、街や自販機、看板、電車の窓、ゲーム、店、壁といった非常にローカライズされた場所やモノがメディアとして使われている作品が実に多く見られました(参照*9)。

クリエイティブイノベーション部門でも、世の中にどのような新しい価値を生み出し社会変容につなげられるかが審査の中心に据えられました。医療、地方、社会などさまざまな課題に対して、新しいサービスやアイデアがどのように変革をもたらすかが議論されています(参照*8)。メディアの再定義と社会課題への接続という2つの軸が、ACC賞2025全体を貫くトレンドとして浮かび上がっています。経営者やブランド担当者にとっては、自社の想いをどの接点でどんな形にして届けるかという問いが、これまで以上に求められる局面に差しかかっています。

おわりに

ACC賞2025は、広告とコンテンツ、そして事業の境界が溶け合う時代の到来を受賞作品の形で示しました。心を動かす力、社会的メッセージ、メディアの再定義という3つの視点は、2026年以降のクリエイティブを構想するうえで大きな手がかりになります。

次回のACC賞では、こうした流れがさらにどう深化するのかに注目が集まります。自社の内側にある想いを言語化し、社会との新しいつながりを生み出す起点として、ACC賞の動向を引き続き追うことができます。

お知らせ

ACC賞×2025の動向を踏まえ、受賞を目指す企業の想いや戦略をインナー・コピーライティングで言語化し、広告やPRへとつながるコミュニケーション戦略に結びつける伴走支援が重要です。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

クリエイティブ最前線 クリエイティブ最前線

メルマガ登録はこちら

クリエイティブ情報や広告制作に役立つ情報を配信する
メールマガジンを配信しています。お気軽にご登録ください。