クリエイティブ最前線

国内外のクリエイティブ動向を
ピックアップするメディア

Red DotとiF DESIGN AWARDの違いを比較:評価基準・カテゴリ・受賞後の活用ポイント

Red DotとiF DESIGN AWARDの違いを比較:評価基準・カテゴリ・受賞後の活用ポイント

はじめに

デザイン賞の応募先を選ぶには、Red Dot AwardとiF DESIGN AWARDの評価基準やカテゴリ構成、審査の仕組みの違いを把握する必要があります。代表的な賞であるRed Dot AwardとiF DESIGN AWARDはどちらもドイツ発の権威ある賞ですが、評価基準やカテゴリ構成、審査の仕組みには明確な違いがあります。この違いを把握しないまま応募先を選ぶと、自社の強みが正しく評価されない結果につながりかねません。

両賞の違いを理解すると、応募の費用対効果を高め、受賞後の活用を最大化しやすくなります。本記事では、設立背景から評価基準、カテゴリ数、審査フロー、受賞企業の傾向までを比較し、応募時に押さえるべき判断基準を整理します。

Red Dot Awardの概要

Red Dot Awardの概要

設立経緯と運営母体

Red Dot Awardは約70年の歴史を持つデザイン賞で、1955年に審査員が初めて集まり、当時の優れたデザインを評価したことが始まりです。1990年代に入り、現CEOであるPeter Zec教授が賞の名称とブランドを確立しました。以来、「Red Dot」の称号は優れたデザイン品質を示す国際的なシンボルとして認知されています(参照*1)。

運営母体はドイツ・エッセンに拠点を置くノルトライン=ヴェストファーレン・デザインセンター(Design Zentrum Nordrhein Westfalen)です。Red Dot Awardはドイツの「iF DESIGN AWARD」およびアメリカの「IDEA賞」と並び、世界三大デザイン賞のひとつに数えられています(参照*2)。こうした位置づけから、製造業をはじめ幅広い業種の企業がブランド価値の証明手段として活用しています。

3つのディシプリン構成

Red Dot Awardはプロダクトデザイン、ブランズ&コミュニケーションデザイン、デザインコンセプトの3部門(ディシプリン)で構成されています(参照*2)。60年以上にわたり国際的な審査員団が毎年評価を行っており、革新性、機能性、長寿命性といった基準に基づいて厳格に審査が進められます(参照*3)。

プロダクトデザイン部門では51のカテゴリが設けられ、革新性、機能性、品質、人間工学、耐久性、象徴性など9つの基準で審査されます。2024年の応募総数は約20,000点に達しました(参照*4)。3つのディシプリンに集約されている分、各部門の審査基準が明確で、応募者にとっては自社製品がどの部門に適合するかを判断しやすい構造といえます。

iF DESIGN AWARDの概要

iF DESIGN AWARDの概要

設立経緯と運営母体

iF DESIGN AWARDは1953年から優れたデザインを評価し続けてきた賞で、設立以来、国際的なデザインコミュニティの一員として活動しています(参照*5)。運営母体はドイツ・ハノーファーに本拠を置くiF International Forum Designで、デザインの研究と教育に取り組む非営利組織であるiF Design Foundationが所有しています(参照*6)。

非営利財団が運営する点はiF DESIGN AWARDの大きな特徴です。毎年約11,000点の応募が70か国以上から寄せられており、世界最大級の独立系デザイン賞として知られています(参照*5)。Red Dot Awardと同じくドイツ発でありながら、運営形態や規模の点で異なる性格を持っています。

9つのディシプリン構成

iF DESIGN AWARDは9つのディシプリンで構成されています。具体的には、プロダクト、パッケージ、ブランディング&コミュニケーション、サービス&システム、ユーザーエクスペリエンス(UX)、ユーザーインターフェース(UI)、建築、インテリア建築、コンセプトの9分野です(参照*5)。Red Dot Awardの3部門と比べると、UXやUI、建築、インテリア建築など、デジタル体験や空間デザインの領域が独立した部門として設けられている点が際立ちます。

2026年度の応募では、9つのディシプリンにまたがる合計93のカテゴリが用意されています(参照*7)。この細分化により、製品単体だけでなく、サービス設計やユーザー体験そのものを評価対象とできる幅広さがiF DESIGN AWARDの特徴となっています。

評価基準の違い

評価基準の違い

Red Dotの4原則

Red Dot Awardの審査は、4つの基本原則に基づいて応募作品を評価します。その4原則は「機能の質」「魅力の質」「使用の質」「責任の質」です(参照*1)。製品が持つ実用性と、ユーザーを引きつける造形美、使いやすさ、そして社会的・環境的な責任まで、デザインを多角的にとらえる構造になっています。

プロダクトデザイン部門ではさらに細分化され、革新性、機能性、品質、人間工学、耐久性、象徴性などの9つの基準で審査が行われます(参照*4)。4原則はすべてのディシプリンに共通する上位概念であり、部門ごとに具体的な評価項目が設定される二層構造を採用しています。応募の際は、まず4原則のどこに自社の強みが位置づけられるかを見極めることが出発点になります。

iF Designの5基準とサステナビリティ

iF DESIGN AWARDの審査は「アイデア」「フォルム(造形)」「ファンクション(機能)」「ディファレンシエーション(差別化)」「サステナビリティ(持続可能性)」の5つの基準で行われます。サステナビリティは全体評価の5分の1を占め、他の4基準と同等の比重で評価されます(参照*6)。

この変更は、従来のImpact基準に代わって導入されました。以前のImpact基準には商業的な考慮が含まれていましたが、新たなサステナビリティ基準は社会的・環境的要因のみに焦点を当てています(参照*6)。2025年度の最終審査はハンブルクのSchuppen 52で3日間にわたって行われ、専門家がこの5基準に基づいて最終候補作品を精査しました(参照*8)。

Red Dotの「責任の質」とiF Designの「サステナビリティ」はどちらも環境・社会への配慮を含みますが、iF Designでは明確に評価全体の20%という配分が公表されている点が異なります。サステナビリティへの取り組みを訴求したい企業にとって、iF Designの基準構成は自社の姿勢を直接的に評価へ反映させやすい設計です。

カテゴリ・審査プロセスの比較

カテゴリ・審査プロセスの比較

カテゴリ数と対象領域の差

Red Dot Awardのプロダクトデザイン部門は51のカテゴリで工業製品を対象としています(参照*9)。一方、iF DESIGN AWARDは9つのディシプリンにまたがる93のカテゴリを設け、プロダクトやパッケージだけでなく、サービスデザイン、UX、UI、建築、インテリア建築まで網羅しています(参照*7)。

Red Dotは3つのディシプリンに集約することで審査対象を絞り込んでいるのに対し、iF Designは領域を広く分割することで、デジタルサービスや空間設計の分野でもエントリーしやすい構造を採っています。製品単体の完成度を競いたい場合と、体験設計や空間まで含めた総合的なデザイン力を示したい場合とでは、適合するカテゴリの数と種類が大きく変わります。

審査フローと費用体系

iF DESIGN AWARD 2026の登録料は提出時期に応じた3段階制が採用されています。早期締め切りの2025年6月27日までに登録すると300ユーロ、通常締め切りの9月26日までは400ユーロ、最終締め切りの11月5日までは500ユーロとなります。早期登録は最終期限と比較して200ユーロの差があり、合計で100ユーロずつ段階的に上がる仕組みです(参照*10)。

受賞後の掲載料も部門によって異なり、プロダクト&パッケージデザインは3,300ユーロ、その他の部門は2,900ユーロです(参照*10)。Red Dot Awardの費用体系は公式登録ガイドの形では公開されていない部分がありますが、応募数は2024年に約20,000点に達しており、両賞ともに登録料と受賞後の掲載・活用コストを合算して検討する必要があります。応募時期の早い段階で計画を立てるほど、コスト面の選択肢が広がります。

受賞作品の傾向と企業事例

受賞作品の傾向と企業事例

両賞を同時受賞する企業の特徴

Red Dot AwardとiF DESIGN AWARDの両方を同じ年に受賞する企業は、組織的なデザイン体制を持つ傾向があります。LIXILは2023年にRed Dot Award: Product Designで7点、iF DESIGN AWARDで13点、合計20点を受賞しました。2011年以降にLIXILブランドが国内外で受賞したデザイン賞は累計600点を超えています。同社は総勢120名以上のグローバルデザインチームを擁し、日常的にデザイン品質の向上に取り組んでいます(参照*11)。

富士フイルムグループもiF Design Awardで23製品、Red Dot Design Awardで27製品を受賞した年があり、さらにIDEAでもミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H2S」「FUJIFILM X-H2」がBronzeを獲得しています。日本国内ではグッドデザイン賞を1983年から41年連続で受賞しています(参照*12)。両賞を併せて受賞する企業に共通するのは、複数の評価軸に耐えうるデザインプロセスを組織として備えている点です。

受賞製品に見るデザイン潮流

近年の受賞製品には、1つの製品が複数のデザイン観点から評価される事例が見られます。富士フイルムの「instax Pal」は、プロダクトデザイン(製品そのもの)、ユーザーインターフェースデザイン(専用アプリ)、パッケージのグラフィックデザイン(製品パッケージ)の3つのデザイン分野で受賞しました。1つのアイテムが複数分野で受賞に至ったのは同社初の事例です(参照*13)。

タカギのシャワーヘッド「キレイストシャワーミスト」はRed Dot Design Award 2025を受賞し、iF Design Awardに続いて2つ目のデザイン賞獲得となりました(参照*4)。こうした事例が示すのは、製品単体のかたちの良さだけでなく、アプリやパッケージを含む体験全体を設計している製品が、両賞で高く評価される潮流が存在するということです。

応募時の判断基準と注意点

応募時の判断基準と注意点

自社に合った賞の選び方

Red Dot Awardは3つのディシプリン・51カテゴリ(プロダクトデザイン部門)で工業製品の完成度を競う構成であるのに対し、iF DESIGN AWARDは9つのディシプリン・93カテゴリでサービスやUX、建築まで対象を広げています。自社のデザインが物理的な製品に集中している場合はRed Dotの審査基準に合致しやすく、デジタル体験や空間デザインまで含む場合はiF Designのカテゴリのほうが適合する可能性があります。

LIXILや富士フイルムのように、両賞に並行して応募する企業は、製品だけでなくブランド体験やパッケージまで統合的にデザインしている点で共通しています(参照*11)。応募先を選ぶ際には、自社のデザイン領域と各賞のディシプリン構成を照合し、もっとも強みが伝わるカテゴリがどちらの賞にあるかを確認してみてください。

費用対効果とよくある失敗

デザイン賞への応募に対する意識を調査した研究では、否定的な回答が肯定的な回答の3倍以上の頻度で確認されました(否定的回答の頻度74、肯定的回答の頻度22)。否定的な回答のうち、もっとも多く挙げられたのは「審査基準の質への懸念」(頻度22)で、次いで「高額な参加費」も比較的多く見られました(参照*14)。

この調査では、審査基準の質、デザイン評価における判断の妥当性、参加費、そして受賞デザインの質といった要因が、デザイン賞に対する態度を形成していることが明らかにされています(参照*14)。応募前に、登録料と受賞後の掲載費を合算した総コストを算出し、受賞がもたらすブランド効果や取引先への訴求力と比較する視点を持つことが、費用対効果の判断には欠かせません。

おわりに

Red Dot Awardは3ディシプリン・4原則を軸に製品の完成度を厳格に評価し、iF DESIGN AWARDは9ディシプリン・5基準でサステナビリティやデジタル体験まで幅広く対象としています。評価基準の構成、カテゴリの細分度、費用体系のそれぞれに明確な違いがあるため、自社のデザイン資産と照らし合わせて応募先を選ぶことが成果につながります。

両賞の違いを踏まえたうえで、どの基準で自社の強みがもっとも評価されるかを見極め、応募時期やコスト計画を含めた戦略的な判断に役立ててみてください。

お知らせ

RedDot・IFの違いは審査視点や表現価値にあり、受賞が示すコミュニケーションの本質は、企業の想いを言語化するインナー・コピーライティングでこそ真価を発揮します。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

クリエイティブ最前線 クリエイティブ最前線

メルマガ登録はこちら

クリエイティブ情報や広告制作に役立つ情報を配信する
メールマガジンを配信しています。お気軽にご登録ください。