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Spikes AsiaとADFESTの違いを比較:位置づけ・部門・日本勢の受賞傾向まで

Spikes AsiaとADFESTの違いを比較:位置づけ・部門・日本勢の受賞傾向まで

はじめに

アジア太平洋地域には複数の広告賞が存在し、その代表格がSpikes AsiaとADFESTです。両者はともにアジア発の広告祭ですが、運営母体・開催地・部門構成・評価の位置づけはそれぞれ異なります。違いを正しく理解しないまま応募先を選ぶと、自社の強みを十分にアピールできない可能性があります。

Spikes Asiaはシンガポールを拠点とする広告祭であり、ADFESTはタイ・パタヤで開催される広告祭です。それぞれが独自の部門やランキング上の扱いを持ち、日本勢の受賞傾向にも差が見られます。本記事では、両賞の概要から部門構成、日本勢の具体的な受賞事例までを比較しながら、その違いを整理します。

Spikes Asiaの概要

Spikes Asiaの概要

運営母体と開催地

Spikes Asiaは、カンヌライオンズを運営するLIONSが手がけるアジア太平洋地域向けの広告祭です。LIONSはInformaグループの一部であり、国連・EU・英国・米国政府が課す貿易制裁や銀行の関連制限を含む適用法令に準拠して事業を運営しています(参照*1)。

開催地は毎年シンガポールです。アジア太平洋地域における高いクリエイティビティを讃えることを目的に掲げ、地域最大級の広告祭として位置づけられています(参照*2)。カンヌライオンズの運営ノウハウを背景に持つ点は、他のアジア地域の広告祭とは異なる特徴といえます。

対象エリアと応募資格

Spikes Asiaへの応募資格は3つの条件のいずれかを満たす作品に与えられます。1つ目は、アジア太平洋地域向けに制作され、同地域の企業が制作・プロデュースした作品です。2つ目は、アジア太平洋地域向けに制作され、同地域外の企業が制作・プロデュースした作品です。3つ目は、アジア太平洋地域の企業が制作・プロデュースしたグローバル展開の作品です(参照*1)。

この仕組みにより、アジア太平洋地域に拠点を持つ企業だけでなく、同地域向けの作品を手がける海外企業にも門戸が開かれています。逆に、アジア太平洋地域の企業がグローバル向けに制作した作品も応募可能であるため、対象範囲は比較的広く設計されています。

ADFESTの概要

ADFESTの概要

設立背景と運営方針

ADFESTは1998年に設立された広告祭で、「アジア唯一の国際広告祭」を標榜しています。ADFEST Lotus Awardsは、WARC Creative 100 Rankingsに含まれる7つの地域広告祭の1つであり、Campaign Brief Asia Creative Rankingsに含まれる12の広告祭の1つ、そしてThe Drum World Creative Rankingsに含まれる22の賞の1つでもあります(参照*3)。

こうした複数の国際ランキングへの掲載実績は、ADFESTが地域の広告祭として一定の評価基盤を築いていることを示しています。Spikes Asiaがカンヌライオンズの系譜に連なるのに対し、ADFESTは独自の成り立ちを持つ点が両者の出発点における大きな違いです。

開催地と参加資格

ADFESTはタイ・パタヤのRoyal Cliff Hotels Groupを会場として開催されています。2026年の開催は3月19日から21日までの3日間で、1,000人を超える業界関係者が集まりました(参照*4)。

参加資格は地域限定の設計です。ADFESTは地域広告祭であるため、アジア・太平洋地域、オーストラリア、ニュージーランド、中東地域に拠点を持つ企業の作品のみが応募対象となります(参照*5)。Spikes Asiaが地域外の企業にも応募を認めるのとは対照的に、ADFESTは域内企業に限定しており、この応募資格の違いは両賞を選ぶ際の実務上の判断材料になります。

位置づけと業界評価の違い

位置づけと業界評価の違い

国際ランキングでの扱い

Spikes Asiaは「地域最古かつ最も権威ある広告賞」として業界メディアに取り上げられています(参照*6)。カンヌライオンズの運営組織が直接手がけていることから、グローバルの広告業界において同賞の結果が広く参照される傾向にあります。

一方、ADFESTはWARC Creative 100 Rankings、Campaign Brief Asia Creative Rankings、The Drum World Creative Rankingsという3つの国際ランキングに含まれている点を公表しています(参照*3)。両賞ともに国際的なランキングで一定の評価を得ていますが、Spikes Asiaがカンヌライオンズとの連携を強みとするのに対し、ADFESTは複数の独立したランキングへの掲載実績を根拠とする点に違いがあります。

規模感とエントリー数の差

ADFESTの2026年のエントリー総数は1,405件で、2025年の1,641件から減少しました。ただし、Digital Craft、Direct、INNOVA、Lotus Roots、Outdoor Lotusの5部門では前年より増加しています(参照*7)。

Spikes Asiaについては、2026年の受賞発表時に注目された傾向として、独立系エージェンシーの受賞が前年比44%増加したことが挙げられます。さらにCreative Effectiveness部門へのエントリーが前年比34%増となりました(参照*8)。ADFESTが総エントリー数の推移を示している一方、Spikes Asiaでは受賞や部門別の動向が示されており、両賞で注目される指標には違いがあります。

部門・カテゴリ構成の比較

部門・カテゴリ構成の比較

共通する主要部門

Spikes AsiaとADFESTの部門構成を並べると、両賞に共通する領域が複数あります。Spikes Asiaの2026年グランプリ授与部門には、Film、Design、Direct、Outdoor、PR、Media、Entertainment、Film Craft、Digital Craft、Creative Strategy、Creative Effectivenessなどが含まれています(参照*8)。

ADFESTの2026年Lotus部門にも、Film Lotus、Design Lotus、Direct Lotus、Outdoor Lotus、PR Lotus、Media Lotus、Entertainment Lotus、Film Craft Lotus、Digital Craft Lotus、Creative Strategy Lotus、Effective Lotusが並びます(参照*5)。名称は異なるものの、映像・デザイン・ダイレクト・屋外広告・PR・メディア・エンターテインメント・制作技術・戦略・効果測定といった基幹領域は、両賞でほぼ重なっています。

Spikes Asia固有の部門

Spikes Asiaには、ADFESTの部門一覧に見られない独自カテゴリが存在します。2026年のグランプリ授与部門として、Gaming、Glass: The Award for Change、Grand Prix for Good、Healthcare、Innovation、Integrated、Music、Social & Creator、Creative B2B、Creative Commerce、Creative Dataなどが挙げられています(参照*8)。

たとえばGlass: The Award for ChangeやGrand Prix for Goodのようにテーマ性を持つ部門がある点や、ゲーム・音楽・B2Bなどの領域を独立して評価する点は、Spikes Asiaの特徴です。

ADFEST固有の部門

ADFESTには、同祭ならではの部門がいくつか設けられています。代表的なのがLotus Rootsです。これは地域の文化・宗教・信仰・伝統・言語・洞察・文脈といった地元の価値観を体現する作品に授与される賞で、各地域の豊かな遺産と文化的価値を守り称えることを目的としています(参照*9)。

もう一つの特徴的な部門がINNOVA Lotusです。市場に劇的な影響を与えた独自のアイデア・技術・デザイン・アプリケーション・クリエイティブ資産に授与され、最終選考に残った作品はADFESTの会場で審査員と参加者に向けたプレゼンテーションが求められます(参照*10)。さらに2026年からは新たな特別賞としてIndependent Network of the Yearが追加されたほか、Mobile Lotusの下位カテゴリがDigital & Social Lotusに統合され、Entertainment Lotusにはミュージック&オーディオ、ゲーム、スポーツの下位カテゴリが拡充されました(参照*11)。

日本勢の受賞傾向と注目事例

日本勢の受賞傾向と注目事例

Spikes Asiaでの日本勢

Spikes Asia 2026では、日本の代理店やクリエイティブ企業が複数のグランプリを獲得しました。Creative Effectiveness部門ではTBWA\HAKUHODOがマクドナルドの「No Smiles」でグランプリを受賞し、Creative Strategy部門では電通がゼスプリインターナショナルジャパンの「The Missing Verse: Completing the Bento Symphony」でグランプリに輝いています。Design部門では資生堂クリエイティブが高松市の「Best After 2055」でグランプリを獲得しました(参照*8)。

電通はグランプリに加え、シルバー2個、ブロンズ6個の計9つの賞を受賞しており、Creative EffectivenessとCreative Strategyの両部門で最も多くのポイントを獲得した代理店に贈られる「Strategy & Effectiveness Agency of the Year」の第2位にも選ばれました(参照*2)。また、TBWA\HAKUHODOはAgency of the Year by MarketのJapanで受賞しています(参照*12)。

ADFESTでの日本勢

ADFEST 2026においても、日本勢は審査・受賞の両面で存在感を示しました。審査員団は17都市から56名で構成され、その座長を電通のグローバル最高クリエイティブ責任者である佐々木康晴氏が務めました(参照*7)。受賞面では、資生堂クリエイティブが「Ogi-Miso, Best after 2055」でゴールドを獲得し、電通がニッカウヰスキーの「No Labels」でグランデ(最高賞)を受賞しています。さらに博報堂グラビティが「Craftman.Ships」で受賞を果たしました(参照*7)。

ADFESTには若手向けのプログラムであるYoung Lotusも設けられています。2名1チーム制で、1年以上の広告関連実務経験が求められ、国内選考で日本代表チームが選出されます。タイ・パタヤ現地でのワークショップや課題制作、プレゼンテーションはすべて通訳なしの英語で行われるため、相応の英語力が必要です(参照*13)。受賞実績だけでなく、次世代の育成機会としてもADFESTは日本の広告業界と接点を持っています。

おわりに

Spikes AsiaとADFESTは、ともにアジア太平洋地域のクリエイティビティを評価する広告祭でありながら、運営母体・応募資格・部門構成・規模感に明確な違いがあります。Spikes Asiaはカンヌライオンズ直系の体系と幅広い応募資格を持ち、ADFESTは域内企業限定の資格と地域文化に根差した独自部門を備えています。

日本勢は両賞でグランプリ級の受賞実績を積み重ねており、それぞれの賞が求める方向性を理解したうえで応募先を選ぶことが、成果を最大化する手がかりになります。自社の作品がどちらの評価軸に合致するかを見極め、エントリー戦略を検討してみてください。

お知らせ

Spikes AsiaとADFESTの違いを踏まえ、地域性や審査基準が示す受賞傾向から企業の伝え方を見直し、想いの言語化やコピーライティングで新たな社会とのつながりを戦略的に描きます。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

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