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海外リブランディング成功事例に学ぶ4つの型:高級化・カジュアル化・テック企業化・サステナブル化

海外リブランディング成功事例に学ぶ4つの型:高級化・カジュアル化・テック企業化・サステナブル化

はじめに

海外では、歴史あるブランドが時代の変化に合わせて大胆な刷新に踏み切る事例が相次いでいます。ブランドの再構築、すなわちリブランディングに成功した企業はどのような判断を下し、何を変え、何を残したのか。この問いへの答えを持たないまま刷新に着手すると、看板を掛け替えただけで終わるリスクが高まります。

海外の成功事例を分析すると、リブランディングには「高級化」「カジュアル化」「テック企業化」「サステナブル化」という4つの型が見えてきます。本記事では、それぞれの型に該当する海外企業の具体的な取り組みを紹介しながら、自社に適した型の見極め方や失敗を避けるための視点を整理していきます。

リブランディングの定義と背景

リブランディングの定義と背景

リブランディングの本質

リブランディングとは、既存の企業やブランドを時代の変化や顧客ニーズの移り変わりに合わせて再構築する取り組みです。市場環境が大きく変わったり、ブランドの印象や影響力が以前ほど感じられなくなったときに、その魅力を再び高め、競争力を取り戻すための手段となります(参照*1)。

ここで押さえておきたいのは、リブランディングが単なるロゴや名前の変更ではないという点です。事業内容や提供価値が大きく変わっているにもかかわらず、社名やブランドイメージが昔のままだと、顧客からの理解にずれが生じ、成長を鈍らせてしまうことがあります。現状とのずれを見極め、ブランドの見直しを検討することが出発点となります(参照*2)。

つまりリブランディングの本質は、外見の刷新ではなく「自分たちは誰に、どんな価値を届ける存在なのか」という問いに立ち返ることにあります。この問いが曖昧なまま進めると、見た目だけが変わり中身が伴わない結果を招きかねません。

海外企業が刷新に動く理由

海外企業がリブランディングに踏み切る背景には、いくつかの共通した動機があります。製品やサービスが当初の想定を超えて進化した場合、過去の名前やイメージが足かせになることがあります。また、悪い評判が定着してしまい払拭できないと判断したときにも、ブランド名の変更を含む大規模な刷新が選択肢に上がります(参照*3)。

加えて、世代交代も大きな要因です。Z世代やミレニアル世代の価値観が多様化するなか、美容業界をはじめとするグローバル市場では、歴史あるブランドから新興ブランドまで、リブランディングの動きが加速しています(参照*4)。

海外企業にとってリブランディングは、過去の資産を捨てることではなく、変化した市場と自社の提供価値を再び接続するための経営判断です。

4つの型の全体像と判断基準

4つの型の全体像と判断基準

海外のリブランディング成功事例を俯瞰すると、刷新の方向性は大きく4つの型に分けることができます。「高級化型」はブランドの価格帯や世界観を上方へ引き上げる戦略、「カジュアル化型」は敷居を下げて日常に溶け込む存在へ移行する戦略、「テック企業化型」は事業ドメインの転換を社名やブランドに反映させる戦略、「サステナブル化型」は環境や社会への貢献をブランドの中核に据える戦略です。

型を選ぶ際に見直すべきは、ブランドの核となる「在り方」、つまりそのブランドが誰に対して、どのような価値を提供し、どんな存在であるべきかという本質的な問いです(参照*1)。名前やロゴの変更は、あくまでブランド戦略全体のなかに位置づけるべき取り組みであり、名前を変えること自体が目的化すると、看板を掛け替えただけで混乱や不信につながることがあります(参照*2)。

したがって、型の選択は「何を変えるか」ではなく「自社はどんな存在であるべきか」という問いから始める必要があります。

高級化型の事例と特徴

高級化型の事例と特徴

Jaguarのブランド再構築

高級化型リブランディングの代表的な海外事例が、英国の自動車メーカーJaguarです。Jaguarは2024年11月、ブランドの全面的な再構築を発表しました。新たに導入されたシンボルマークは、幾何学的な形状、左右対称、簡潔さといったモダニズムの特徴を強く打ち出しています。大文字と小文字を視覚的に調和させて融合するという意外性のあるデザインが特徴です(参照*5)。

さらに、新しいブランドアイデンティティでは色彩の大胆な活用が柱の一つになっています。画家のパレットから生まれた黄、赤、青の3色が基調となり、常にテクスチャーや動きを伴って表現されます。アートとの結びつきをブランドの価値観に埋め込むことで、従来の自動車メーカーの枠を超えた世界観を構築しています。

Jaguarの事例は、高級化型が単に価格を上げることではなく、ブランドの美意識や哲学そのものを引き上げ、新しい顧客層との接点をつくる戦略であることを示しています。

YSL Beautyの大胆なSNSリセット

もう一つの高級化型の海外事例として、イヴ・サンローラン・ボーテ(YSL Beauty)の取り組みがあります。YSL Beautyは2024年、フォロワー数1,100万人超のInstagramアカウントで投稿を全て削除し、ブランドの再構築を掲げたリブランディングに踏み切りました。投稿アーカイブを白紙に戻すこの決断は、「自由=LIBRE」というブランドの本質に立ち返る大胆な意思表明でした(参照*4)。

1,100万人のフォロワーが蓄積されたアカウントをリセットするという行為は、通常であれば大きなリスクを伴います。しかしYSL Beautyはあえて過去の資産を手放すことで、ブランドの純度を高める方向に舵を切りました。

高級化型のリブランディングでは、何かを「足す」だけでなく、蓄積されたものを「引く」という判断が求められる場面があります。JaguarもYSL Beautyも、過去の延長線上ではなく、ブランドの原点に立ち返ったうえで新しい世界観を提示したという点で共通しています。

カジュアル化型の事例と特徴

カジュアル化型の事例と特徴

Dunkin’のブランド名短縮戦略

カジュアル化型の海外リブランディング成功事例として、まず米国のDunkin’を取り上げます。Dunkin’ Donutsは、顧客から長年「Dunkin’」と親しみを込めて呼ばれてきました。「America Runs on Dunkin’」という象徴的なキャッチフレーズが導入されるよりも前から、その関係性は自然に生まれていたものです。この関係を公式に認めるかたちで、同社はグローバルフランチャイズ大会においてブランド名を「Dunkin’」に短縮すると発表しました。飲料を軸とした、外出先で手軽に利用できるブランドへの変革を掲げた一連の施策の一つです(参照*6)。

新しいブランド表現では、おいしいコーヒーを素早く届けるという価値に焦点を当てながらも、1973年に導入されたピンクとオレンジの配色やフォントを維持しています。つまり、ブランドの遺産を壊さず、顧客がすでに使っていた呼び名に公式ブランドを寄せるという手法です。

Dunkin’の事例は、カジュアル化型が「格を下げる」ことではなく、顧客との距離を縮め、日常に溶け込む存在へと移行する戦略であることを端的に表しています。

Avonのブランド再定義

カジュアル化型のもう一つの海外事例が、創業から135年の歴史を持つAvonです。Avonは2023年にグローバルでリブランディングを実施し、新たなブランドスローガンとして「自分の力を信じて(Embrace Your Power)」を掲げました。歴史あるブランドが、現代の価値観に即してアップデートした事例です(参照*4)。

視覚面でも大きな変化がありました。ブランドカラーは従来の紫がかったピンクから、より鮮やかで前向きな印象の「Power Pink」へ更新されました。ロゴはブランド名「AVON」を台座状の背景に配置したデザインとなり、すべての人に開かれたブランドとして、利用者一人ひとりの力を支え高める存在であることを視覚的に表現しています。

Dunkin’が「顧客がすでに使っていた言葉」に寄り添ったのに対し、Avonは「現代の利用者が大切にしている価値観」に寄り添ったという違いがあります。どちらも、ブランドの敷居を下げつつ本質的な提供価値を磨き直すカジュアル化型の好例です。

テック企業化型の事例と特徴

テック企業化型の事例と特徴

FacebookからMetaへの社名変更

テック企業化型の海外リブランディング成功事例として広く知られるのが、FacebookからMetaへの社名変更です。2021年10月のConnect 2021で、CEOのMark Zuckerbergは新社名「Meta」を発表しました。複数のアプリや技術を一つの企業ブランドのもとに統合し、メタバースの実現を通じて人々のつながり、コミュニティの発見、ビジネスの成長を支援することを目指すと表明しました(参照*7)。

一方で、テック企業化型には先行事例があります。かつてスマートフォンで一時代を築いたResearch in Motion(RIM)は、2013年にBlackBerryへ社名を変更しました。当時のCEO Thorsten Heinsは「一つのブランド、一つの約束」と語り、製品名として広く認知されていたBlackBerryに社名を一致させました(参照*3)。

RIMの事例が「すでに認知された製品名」に社名を合わせる方向だったのに対し、Metaの事例は「まだ実現していない事業領域」にブランドを先行させるという真逆のアプローチでした。テック企業化型のリブランディングは、事業ドメインの変化をブランド名に反映させるという点で共通しつつも、その方向性には大きな幅があります。

テック企業化の成功条件と失敗リスク

テック企業化型は4つの型のなかで、リスクが顕在化しやすい型でもあります。Metaの事例では、社名変更発表日の2021年10月28日時点でMark Zuckerbergの資産は1,180億ドルでした。しかし発表からおよそ2年後の時点では約965億ドルとなり、紙面上の損失は約220億ドルに達しました(参照*8)。

Metaのメタバース構想そのものは、既存の「人を中心としたプライバシー」プロジェクトを再提示したものだという指摘もあります(参照*9)。社名変更が事業の実態を伴わないまま先行すると、市場からの信頼を失うリスクがあることを、この事例は示しています。

テック企業化型のリブランディングでは、ブランドの約束と事業の実態を一致させることが不可欠です。名前の変更が市場や株主に「何が変わったのか」を明確に伝えられなければ、混乱と不信を招く可能性があります。

サステナブル化型の事例と特徴

サステナブル化型の事例と特徴

IKEAのサステナビリティ戦略

サステナブル化型の海外リブランディング成功事例として、スウェーデン発の家具ブランドIKEAを取り上げます。IKEAはブランドの中核にサステナビリティを据え、2030年までに「人と地球にプラスの存在」になるという目標を掲げています。Inter IKEA GroupのCEO Torbjörn Lööfは、IKEAの規模と影響力を通じて10億人以上の人々が地球の限界のなかでより良い暮らしを送れるよう後押しすることが目標だと語りました(参照*10)。

この戦略は具体的な数値にも表れています。2023年度のIKEAのCO2排出量は約2,410万トンと推計され、前年度比で12%、基準年である2016年度比で22%の削減を達成しました。パリ協定に沿って地球の気温上昇を1.5度に抑える目標のもと、科学に基づく排出削減と、森林・農業・製品を通じた炭素の除去と貯蔵に取り組んでいます(参照*11)。

IKEAの事例は、サステナブル化型のリブランディングが理念の表明にとどまらず、測定可能な成果と事業成長の両立を目指すものであることを示しています。

innisfreeの自然派リブランディング

サステナブル化型のもう一つの海外事例として、韓国発の自然派ブランドinnisfreeがあります。innisfreeは2023年にグローバルでのリブランディングを実施しました。創業当初から掲げてきた「自然との共生」という理念はそのままに、Z世代やミレニアル世代を視野に入れた新たなビジュアル戦略へと舵を切り、サステナビリティや環境意識といった価値観への応答もあわせて打ち出しています(参照*4)。

IKEAが数値目標と科学的根拠を前面に出したのに対し、innisfreeは創業理念を維持しつつ、視覚表現と対象世代を更新するというアプローチを取りました。サステナブル化型のリブランディングにも、「データで証明する」方向と「理念を次世代の言葉に翻訳する」方向があることが見て取れます。

どちらの事例にも共通するのは、環境への取り組みをブランドの付加価値ではなく、ブランドそのものの定義として位置づけている点です。

型の選び方と注意点

型の選び方と注意点

自社に適した型の見極め方

4つの型を理解したうえで、実際にどの型が自社に適しているかを判断する必要があります。型の選択にあたっては、「自社のブランドが顧客からどう認識されているか」と「自社が目指す提供価値はどこにあるか」のギャップを見極めることが出発点です。事業内容や提供価値が大きく変わっているのに社名やブランドイメージが昔のままであれば、そのずれが成長を鈍らせる要因になり得ます(参照*2)。

また、リブランディングが顧客ロイヤルティに直接影響するとは限らないという研究結果も存在します。ある研究では、リブランディングはブランドイメージに対して有意な影響を与える一方、顧客満足度や顧客ロイヤルティには直接的な有意な影響が確認されなかったとされています(参照*12)。

この結果は、リブランディングだけで顧客との関係が改善されるわけではなく、サービス品質や顧客体験といった中身の充実があって初めてブランドイメージの刷新が成果につながる可能性を示唆しています。型の選択と同時に、ブランドの内実をどう高めるかを検討することが欠かせません。

リブランディングの失敗要因

海外のリブランディング成功事例の裏には、失敗に近づいた局面もあります。Metaの事例では、社名変更発表からおよそ1年後の2022年10月にMark Zuckerbergの資産は約370億ドルまで落ち込みました。第3四半期の業績が市場予測を下回ったことで、Meta株は大幅に下落しました(参照*8)。

社名変更には法的手続き、ロゴや各種ツールの更新、取引先や顧客への周知など多くの費用と労力がかかります。認知度の低下や混乱といったリスクも避けられないため、「なぜ今なのか」という理由を明確にし、戦略とストーリーを持って進めることが求められます(参照*2)。

加えて、リブランディングは成果がすぐに現れるものではありません。新たなブランドイメージが社会に浸透するまでには一定の時間が必要であり、短期間で効果を判断するのは適切ではないとされています(参照*1)。型の選択に加え、社内外に「なぜ変わるのか」を伝え続ける覚悟と時間軸の設計が、リブランディングの成否を分ける要素となります。

おわりに

海外のリブランディング成功事例を4つの型に整理すると、それぞれに共通する原則が浮かび上がります。高級化型は世界観の引き上げ、カジュアル化型は顧客との距離の再設定、テック企業化型は事業領域とブランドの一致、サステナブル化型は環境貢献のブランド定義への組み込みです。どの型を選ぶにしても、「自社は何のために存在するのか」という問いに向き合い、内側の意志を外側の表現に翻訳するプロセスが不可欠です。

リブランディングは看板の掛け替えではなく、経営者や担当者の想いを言語化し、社会との新しいつながりを生みだす営みです。本記事で取り上げた海外事例と4つの型を、自社の刷新を検討する際の判断材料として活用してみてください。

お知らせ

リブランディングや成功事例、海外展開を踏まえたコミュニケーション設計は、想いの言語化とコピーライティングで、新しい社会とのつながりを生む道筋を描きます。事業会社やスタートアップに伴走し、広報やネーミング等の戦略立案を担います。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

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