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広告コピーの選び方:事業会社の担当者が「良い案」を選定する評価軸と進め方

広告コピーの選び方:事業会社の担当者が「良い案」を選定する評価軸と進め方

はじめに

広告コピー案の選定は、基準を決めて進める必要があります。コピーライターから複数の広告コピー案が提示されたとき、事業会社の担当者はどのような基準で「良い案」を選べばよいのでしょうか。広告コピーの選び方を曖昧にしたまま進めると、社内の好みや声の大きさで結論が左右され、本来届けたいメッセージが生活者に届かないまま予算を消化する事態を招きます。

選定の精度を高めるには、評価軸を事前に定め、ブリーフで前提を揃え、テストで検証するという一連の流れを押さえることがポイントです。本記事では、広告コピーの選び方に必要な評価軸の立て方から、A/Bテストを使った検証手順、失敗しやすいパターンまでを順を追って解説します。

広告コピー選定が難しい理由

広告コピー選定が難しい理由

感覚的判断が招く失敗

広告コピーの選び方が属人的になりやすい最大の原因は、成果の言語化が不足している点にあります。多くの現場ではデザインやコピーが感覚や過去の成功体験に基づいて作られており、「なぜこの広告が成果を出したのか」「なぜ改善したのに悪化したのか」を言語化できないケースが少なくありません(参照*1)。

分析の枠組みを持たずに運用していると、どれが勝ちパターンで、なぜ勝ったのか、どう再現するかが曖昧なまま成果が偶発的なものにとどまります(参照*2)。つまり、感覚だけで選んだ広告コピーは「たまたま当たった」状態から抜け出せず、次の施策にも知見が蓄積されにくいのです。

社内合意が迷走する構造

広告コピーの選び方が難航するもう一つの背景は、社内に共通の評価軸がないまま合議に入る構造です。担当者の経験や勘に頼った評価では、関係者ごとに「良い」と感じる基準が異なり、会議のたびに結論が揺れ動きます。チーム内で共通の評価軸を持つことで意思決定のスピードが向上するという指摘もあります(参照*3)。

経営層は理念やブランド観で判断し、営業部門は顧客受けの良さで判断し、法務部門はリスクで判断する、という具合に視点が分散しがちです。こうした状態では、最終的に「誰が折れるか」で案が決まり、広告コピー本来の目的である生活者への伝達力が後回しになります。選定に入る前に評価軸を合意しておくことが、迷走を防ぐ前提条件といえます。

選定前に整えるブリーフの要件

選定前に整えるブリーフの要件

ブリーフに盛り込む7項目

広告コピーの選び方を誤らないために、選定作業の前段階であるブリーフの精度を高めておく必要があります。ブリーフとは、プロジェクトの目的・ゴール・課題・ターゲット・メッセージなどの要点を短い文書にまとめたもので、関係者の認識を揃えるために作成します(参照*4)。

効果的なブリーフに欠かせない要素として、次の7項目が挙げられています(参照*5)。

  1. プロジェクトの概要と事業目標
  2. ターゲットとペルソナ
  3. 主要メッセージとブランドの声
  4. 成果物と技術仕様
  5. スケジュールとマイルストーン
  6. 予算とリソース配分
  7. 成功指標とKPI

これら7項目が明文化されていれば、コピーライターへの依頼時にも、提出されたコピー案を評価する際にも「何をもって良いとするか」の土台が共有されます。ブリーフにはターゲットとなる層、目標、スケジュール、予算、プロジェクトのガイドラインと仕様など、あらゆる関連情報を盛り込むことが推奨されています(参照*6)。

USPと訴求軸の明文化

ブリーフの中でも、広告コピーの選び方に直結するのがUSP(独自の売り)と訴求軸の言語化です。USPとは、自社の商品やサービスが競合と異なるポイントを一言で表したものを指します。ブランドのビジュアル表現にはUSPが反映されていなければならず、それをクリエイティブ素材と連携させることでブランドの価値観や提供内容が明確に伝わるとされています(参照*7)。

訴求軸とは、時短・節約・安心・達成感など、どの便益を中心に据えるかという観点です(参照*2)。USPと訴求軸がブリーフに明記されていれば、提出された複数のコピー案を並べたとき、「この案はUSPを正しく反映しているか」「訴求軸がぶれていないか」という判定が言葉の好き嫌いではなく論点に基づいて行えます。

良いコピーを見極める5つの評価軸

良いコピーを見極める5つの評価軸

ターゲットの課題への共感度

広告コピーの選び方で最初に確認すべき評価軸は、そのコピーがターゲットの課題にどれだけ寄り添えているかです。広告主が「伝えたい情報」と、利用者にとって「刺さる情報」がずれているケースは多く見られます。企業視点の強みではなく、利用者の不安・欲求・期待に寄り添った表現でなければ、広告はスルーされてしまいます(参照*1)。

コピー案を並べたとき、「自社が言いたいことを言っている案」と「ターゲットが抱える悩みに応えている案」は一見似ているようで出発点が異なります。ブリーフで定めたペルソナの課題リストと照合し、コピーの主語が企業側ではなく生活者側に立っているかを確かめることが、この評価軸の実務的な使い方です。

USP・便益の伝達力

2つ目の評価軸は、USPと便益が短い言葉のなかで正確に伝わっているかどうかです。たとえば、ある写真プリントとフレームを扱うブランドについて2つのコピーが比較されています。一方は「殺風景な自宅の壁を素敵に装飾する、ワイルドプリントや華やかなフレームを幅広く取り扱っています」と表現し、もう一方は「写真プリントやフレームを販売する会社で、家庭向けの商品を販売しています」と表現しました。前者が優れているのは、ブランドが販売しているものを明確に説明し、独自のメリットを強調し、他のブランドとの差別化を図っているからです(参照*7)。

広告コピーの選び方としては、各案を読んだ瞬間に「何が他と違うのか」「それによって自分の生活がどう変わるのか」が浮かぶかどうかを基準にすると、USPの伝達力を判定しやすくなります。

ブランドトーンとの一貫性

3つ目の評価軸は、コピーの言葉づかいや世界観がブランド全体のトーンと一致しているかです。短い言葉の中に「伝えたいこと」が明確に組み込まれているかどうかが、良いコピーの条件として挙げられています(参照*8)。

ブランドトーンとは、そのブランドが発するすべてのメッセージに通底する口調や雰囲気のことです。たとえば日頃「信頼性と安心感」を軸に発信しているブランドが、突然くだけた口調で軽さを前面に出したコピーを採用すると、既存顧客が感じてきた印象と齟齬が生じます。ブリーフに記載した「ブランドの声」の項目と照合し、トーンの逸脱がないかを確認することが、この評価軸の実践方法です。

行動喚起の具体性

4つ目の評価軸は、読み手が広告に接触した後にとるべき行動が具体的に示されているかです。クリエイティブ分析における要素の1つとして、冒頭1〜2秒で注意を引く「フック」の型が挙げられており、質問型・数字型・共感型などの分類で比較することが有効とされています(参照*2)。

フックで注意を引いた後、「次に何をすればいいか」が曖昧なコピーは離脱を生みやすくなります。広告コピーの選び方としては、コピー案ごとに「読者はこの言葉を読んだ直後に何を行うか」を書き出し、最も行動に結びつきやすい案を評価する方法が実務に取り入れやすいといえます。

法令・広告規約への適合

5つ目の評価軸は、法令や広告規約に違反する表現が含まれていないかどうかです。具体的な確認項目として、「業界最安値」「絶対に」「100%」などの断定表現がないか(景品表示法)、健康食品や化粧品で「治る」「改善する」などの表現がないか(薬機法)、根拠のない「No.1」「他社より○○倍」などの比較表現がないか(景品表示法・広告媒体のポリシー)が挙げられています(参照*9)。

広告コピーの選び方において、法令適合は表現の巧みさとは別の軸で確認しなければなりません。どれほど訴求力のあるコピーでも、景品表示法や薬機法に抵触すれば広告審査落ちや法的リスクを伴います。選定会議の場では、上記のチェック項目をリスト化し、法務部門と連携して事前に除外する運用が実効的です。

A/Bテストで選定精度を上げる手順

A/Bテストで選定精度を上げる手順

仮説設計とKPI設定

評価軸に沿って候補を絞り込んだ後、最終的な広告コピーの選び方として有効なのがA/Bテストです。A/Bテストとは、2つ以上のパターンを実際の配信環境で比較し、どちらが目標指標で優れるかを検証する手法を指します。まず、このテストで何を明らかにしたいのか、最終的にどのような成果(KGI/KPI)を改善したいのかという目的を明確にします。次に「AパターンよりBパターンのほうが、○○の理由で△△の指標が改善するだろう」という仮説を具体的に設定します。この仮説がテストの方向性を定め、結果を分析する際の基準となります(参照*10)。

バナー広告の場合、まず優先してテストすべき要素としてキャッチコピーが挙げられており、悩み訴求・ベネフィット訴求・数字訴求・限定訴求など複数の軸を比較するのが効果的とされています(参照*11)。仮説を立てる段階で「どの訴求軸同士を比べるのか」を明示しておくと、テスト後に結果を解釈しやすくなります。

テスト実行と統計的有意差の確認

仮説とKPIが決まったら、テストを実行し、結果の差が偶然ではないかどうかを統計的に判定します。テスト結果が「偶然の誤差」ではなく「本当の差」であるかを判定するのが統計的有意差という概念です。95%信頼度は「偶然でこの差が出る確率は5%以下」という水準で通常のA/Bテストの基準とされ、99%信頼度は「偶然でこの差が出る確率は1%以下」という水準でより厳密な判断が必要な場合に用いられます(参照*12)。

広告コピーの選び方にA/Bテストを組み込む際、サンプル数が足りない段階で「勝ちパターン」を断定してしまうのはよくある落とし穴です。信頼度が基準に達するまではテスト期間を延長し、途中経過だけで配信を切り替えないことが結果の信頼性を保つうえでポイントです。テスト結果が有意差を満たした時点で、仮説と照合しながら採用案を確定するという流れが、データに基づく選定の実務的な手順になります。

選定時の注意点と失敗パターン

選定時の注意点と失敗パターン

広告コピーの選び方で陥りやすい失敗パターンをあらかじめ知っておくと、選定会議での判断ミスを減らせます。まず注意すべきなのが、希少性や緊急性の過剰な強調です。「今すぐ申し込まないと損」「残りわずか」といった表現を過度に多用すると、利用者は次第に不信感を抱くようになり、心理的な圧迫感は購買後の後悔や解約、クレームにつながりやすくなります(参照*1)。一時的にクリック数が伸びるコピーであっても、ブランド価値や広告成果を大きく損なうのであれば選定候補から外す判断が求められます。

次に、AIを活用してコピー案を生成するケースが増えていますが、AIによる事実の捏造には特に注意が必要です(参照*9)。AIが出力した数値や事例がそのまま正確とは限らないため、ファクトチェックの工程を省略しないことが前提となります。

さらに、過去に成果が出たコピーを横展開する際にも落とし穴があります。成果を生んだ本質的な要因まで変えてしまうと別のクリエイティブになり、勝ちパターンが再現できません。逆に差し替え可能な要素を変えずに量産すると、同じクリエイティブを繰り返し配信することになり広告の疲弊を早めます(参照*2)。この「何を残し、何を変えるか」の切り分けが、選定後の運用精度を左右します。

おわりに

広告コピーの選び方は、感覚ではなく構造で決まります。ブリーフでUSPと訴求軸を明文化し、5つの評価軸で候補を絞り、A/Bテストで統計的に検証するという手順を踏むことで、属人的な判断から脱却した選定が可能になります。

経営者や担当者が持つ想いを言葉にする「内から外へ」のプロセスは、社内のブリーフ作成から始まっています。評価軸を社内で共有し、選定の一つひとつに根拠を持たせることが、広告コピーを通じて社会との新しいつながりを生みだす出発点です。

お知らせ

広告コピーの選び方で迷うなら、ターゲットと想いを言語化する視点が鍵です。インナー・コピーライティングで企業の価値を言葉にし、広報やネーミングまで一貫したコミュニケーション設計へつなげます。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。

コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。

監修者

梅田悟司(うめださとし)

コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了

1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。

ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。

武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。

CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。

著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。

参照

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