
はじめに
日本には数多くの広告賞が存在し、それぞれが異なる視点から広告やデザインの価値を評価しています。広告賞への理解が浅いと、自社の取り組みをどこに応募すべきか判断しにくくなり、せっかくの成果を発信する機会を逃してしまいかねません。
広告賞は、総合系・コピー系・デザイン系・効果系の大きく4つに分類でき、それぞれ審査の軸が異なります。本記事では、日本の主要な広告賞やデザイン賞を一覧で取り上げ、各賞の特徴や分類ごとの違い、活用のメリットまでを順を追って解説します。
日本の広告賞の定義と役割

広告賞が果たす社会的機能
広告賞とは、特定の期間に公開・実施された広告やコミュニケーション施策を審査し、優れた作品を表彰する制度です。受賞によってクリエイターや企業の仕事が広く認知され、業界全体の品質向上につながる仕組みとして機能しています。
JAA広告賞は、生活者視点から優れた広告を表彰し、広告の健全な発展に寄与することを目的としています。広告を「企業と消費者のコミュニケーション手段」として位置づけ、消費者に活力を与え、経済の発展を促進し、さらに文化をも創造する社会生活に必要不可欠なものであるとしています(参照*1)。
こうした目的からも分かるように、広告賞は単に作品の優劣を決める場ではありません。社会と企業、そして生活者をつなぐコミュニケーションの質を高めるための指標としての役割を担っています。
広告賞の歴史的背景
日本の広告賞は、戦後のメディア発展とともに歩みを重ねてきました。テレビやラジオの普及に合わせて映像・音声表現を評価する賞が生まれ、やがて紙媒体やデジタル領域を含む多様な賞へと広がっています。
ADC(正式名称:Tokyo Art Directors Club)は1952年に設立され、日本を代表するアートディレクターで構成される団体として、ビジュアル表現の評価基盤を築いてきました(参照*2)。ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSは、1961年にテレビ・ラジオコマーシャルの質を高めることを目的として設立されたACC CM FESTIVALを起源としています(参照*3)。
1952年のADC設立、1961年のACC前身の誕生という流れを見ると、日本の広告賞は60年以上の歴史を持つことが分かります。メディア環境の変化に応じて評価対象が拡張されてきた点が、日本の広告賞を理解するうえでの出発点となります。
広告賞の4分類と全体像

総合系・コピー系・デザイン系・効果系
日本の広告賞は、評価する領域の違いから大きく4つに分類できます。総合系は映像・グラフィック・デジタルなど複数メディアを横断して優れたクリエイティブを選ぶ賞です。コピー系はキャッチフレーズやボディコピーといった言葉の力を評価し、デザイン系はビジュアルの造形力や視覚伝達の質を審査します。そして効果系は、広告が実際にもたらしたビジネスや社会への成果に焦点を当てます。
具体的には、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSは全分野のクリエイティビティを対象とする日本有数の総合系の賞で、総応募数2,263作品のなかから受賞作が選ばれた実績があります(参照*3)。一方、日経広告賞は新聞広告を中心にクリエイティブ性や話題性、社会性など多角的な視点で評価が行われる賞です(参照*4)。
このように分類を把握しておくと、自社の強みや施策の性質に合った広告賞を選びやすくなります。映像表現に自信があるなら総合系、言葉の精度で勝負するならコピー系、といった判断基準を持てるためです。
分類ごとの審査視点の違い
分類が異なれば、審査で重視されるポイントも変わります。総合系の賞では、メディアを横断した企画力や実行力が問われます。コピー系では、短い言葉のなかにどれだけ発見や共感を込められるかが評価の軸です。デザイン系では、造形としての完成度と伝達力が重視されます。
グッドデザイン賞の審査では、色彩や形状など目に見える部分だけでなく、その根底にある目的達成に向けたプロセスや思想、意義といった目に見えにくい要素を含め、さまざまな面を考慮して総合的に判断が行われます(参照*5)。日本パッケージデザイン大賞では、生産や流通、環境などの包装材料としての面だけでなく、デザイン的な価値や商品づくりの観点にも重きを置きながら、パッケージデザイナーの目で作品を評価することが大きな特徴です(参照*6)。
審査視点を事前に理解しておくことで、応募時にどの要素を訴求すべきかが明確になります。
主要広告賞一覧と各賞の概要

ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS
ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSは、日本における総合系広告賞の代表格です。1961年にテレビ・ラジオコマーシャルの質的向上を目的として設立されたACC CM FESTIVALを起源に持ち、現在はフィルムや音声にとどまらず、あらゆる分野のクリエイティビティを対象としています(参照*3)。
審査は、第一線で活躍するクリエイターや専門家、クリエイティブ業界の著名人で構成される審査員団によって厳正に行われます。ある年の総応募数は2,263作品に達しており、日本有数の規模を持つ広告賞であることが分かります。
テレビCMの時代から始まり、デジタルや体験型施策まで評価対象を広げてきた経緯は、日本の広告表現の変遷そのものを映しています。総合系の広告賞として、幅広い領域のクリエイティブ力を試す場となっています。
宣伝会議賞・広告電通賞・朝日広告賞
宣伝会議賞は、月刊「宣伝会議」が主催する広告表現のアイデアコンテストで、キャッチフレーズまたは絵コンテ・字コンテ形式で作品を募集しています。63回目となった年度では、一般部門30社、中高生部門15社から課題協賛を受けました。一般部門のグランプリには賞金100万円が授与されるほか、コピーゴールドやビデオ&オーディオゴールドには各30万円、シルバーには5万円が贈られます。中高生部門のグランプリにはギフトカード10万円分が副賞として用意されており、プロ・アマを問わず広く門戸が開かれています(参照*7)。
広告電通賞は第79回を数え、プリント広告、オーディオ広告、フィルム広告、OOH広告、ブランドエクスペリエンス、エリアアクティビティ、イノベーティブ・アプローチ、SDGs特別賞といった応募部門が設けられています(参照*8)。朝日広告賞は第74回を迎えており、「朝日新聞読者賞」のWEB投票にはどなたでも参加できる仕組みが特徴です(参照*9)。
いずれも長い歴史を持ち、回を重ねるごとに評価の対象や部門構成を時代に合わせて更新してきた賞です。自社の施策に合った部門があるかどうかを確認してみてください。
TCC賞・東京ADC賞・東京TDC賞
TCC賞は、東京コピーライターズクラブが主催するコピー系の広告賞で、言葉の力を軸にした広告表現を評価する場です。コピーライターにとっての登竜門として知られています。
東京ADC賞は、1952年に創立された東京アートディレクターズクラブが主催する賞で、ポスター、新聞、雑誌、テレビ、ウェブなど多種のジャンルの作品のなかから、アートディレクターを中心に構成される約80名のADC会員の審査により、優れた作品が選出されます。ある年の審査では、約6,000の応募のなかから受賞作および年鑑掲載作品が厳選されました(参照*10)。
東京TDC賞は「文字や言葉の視覚表現」を軸に開催するグラフィックデザインの国際賞で、1990年より毎年開催され、36回目を迎えています。ある年度の応募では国内外から3,605作品(国内1,649作品、海外1,956作品)が寄せられ、国際的な参加が半数を超える規模となっています(参照*11)。
JAA広告賞・日経広告賞
JAA広告賞は、日本アドバタイザーズ協会が主催する広告賞で、生活者視点から優れた広告を表彰することを通じて、時代に即したコミュニケーションの在り方を模索し、広告の健全な発展に寄与することを目的としています。企業の広告主側の視点が色濃く反映されている点が、クリエイター主導の賞との違いです(参照*1)。
日経広告賞は、日本経済新聞社が主催する広告賞で、広告の社会的な意義や独創性、訴求力を評価し顕彰する賞です。新聞広告を中心に、クリエイティブ性や話題性、社会性など多角的な視点で評価が行われます(参照*4)。
JAA広告賞が生活者との関係性を重視する一方、日経広告賞は経済紙ならではの社会的意義や訴求力に重きを置いています。自社の広告がどちらの審査軸と親和性が高いかを見極めることが、応募先選定の一つの基準になります。
デザイン賞・パッケージ賞の主要アワード

グッドデザイン賞・JAGDA賞
グッドデザイン賞は、有形無形を問わずさまざまなものごとをデザインの対象としています。日用品や家電製品、自動車などの工業製品をはじめ、住宅や施設などの建築物、各種のサービスやアプリケーション、地域づくりなどのコミュニケーション活動、ビジネスモデルや研究開発の取り組みなど、身の回りを構成するあらゆる対象が「デザイン」として応募され、受賞しています(参照*5)。
審査では、色彩や形状といった目に見える部分だけでなく、目的達成に向けたプロセスや思想、意義など目に見えにくい要素まで含めて総合的に判断される点が特徴です。JAGDA賞は、日本グラフィックデザイン協会が主催するデザイン賞で、グラフィック領域に特化した評価を行っています。
グッドデザイン賞の対象範囲の広さは、デザインという概念が製品の見た目にとどまらないことを示しています。自社の事業やサービスが応募対象になるかどうか、改めて確認する価値があります。
日本パッケージデザイン大賞・日本タイポグラフィ年鑑
日本パッケージデザイン大賞は、公募により広く作品を募集し選考するコンペティションで、1985年から隔年で開催されています。パッケージデザインの社会的地位向上をめざし、優れた仕事を評価する場として歴史を重ねてきました。2025年度は総数1,000点の応募があり、一次審査では65名の審査員が10部門の入選作品417点を選出し、二次審査では協会会員審査員11名に前回大賞受賞者1名と外部特別審査員5名を加えた17名の討議によって、合計35点の入賞作品が決定されました(参照*12)。
日本タイポグラフィ年鑑は、1969年に「日本レタリング年鑑」としてスタートし、通算発行で46冊目を迎えています。作品は広く海外からも一般公募で受け付けており、会員から選ばれた審査委員と前年度のグランプリ受賞者による厳正な審査を経て、全出品作品のなかから「グランプリ」1点、「学生グランプリ」1点、部門ごとの「ベストワーク賞」、審査委員が個人の視点で評価した「審査委員賞」が授与されます(参照*13)。
パッケージデザインやタイポグラフィは、消費者が最初に手に取る接点であり、ブランドの印象を左右する領域です。それぞれ専門性の高い審査員が評価にあたる点に、これらの賞の存在意義があります。
広告賞を知る・活用するメリット

広告賞への応募や受賞は、企業やクリエイターにとって複数のメリットをもたらします。まず、第三者の審査を通じて自社のクリエイティブ力を客観的に測れる点があります。受賞実績は対外的な信頼の証となり、取引先や採用の場面で説得力を持ちます。
国内外の受賞が連鎖する事例もあります。実際に、ある広告作品がACC TOKYO CREATIVITY AWARDSや東京ADC賞に加え、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル2023のインダストリークラフト部門でグランプリを受賞し、D&ADのアートディレクション部門でブラックペンシルを獲得しました。さらにThe One Show、クリオ賞、ロンドン国際広告賞などを含め、70以上の賞を受賞しており、国内外で高い評価を得ています(参照*14)。
このように国内の広告賞での受賞が、国際的な評価の連鎖につながる事例があります。日本の広告賞を起点に海外の賞にも展開することで、自社のブランド価値を多方面から高める道筋を描けます。さらに、宣伝会議賞のように一般部門のグランプリに賞金100万円が授与される賞もあり、金銭面での還元が得られる場合もあります(参照*7)。
応募・選定時の注意点

広告賞に応募する際は、対象作品の公開期間と審査費用の2点を事前に確認することが欠かせません。多くの賞では、審査対象となる作品の公開・実施期間が厳密に定められています。
たとえば広告電通賞の第79回では、対象作品を2025年4月1日から2026年3月31日に公開・実施された作品とし、ブランドエクスペリエンスとエリアアクティビティの2部門は2025年3月1日から2026年3月31日に実施された施策を対象としています(参照*8)。東京ADC賞でも、ある年度の審査では2024年6月1日から2025年5月31日の間に発表・公開・リリースされた約6,000の応募から受賞作が選ばれました(参照*15)。
費用面では、グッドデザイン賞の場合、一次審査料16,500円、二次審査料71,500円、受賞パッケージ料181,500円で、合計269,500円が必要になります(参照*16)。賞によって審査料の体系は異なるため、応募前に公式サイトで費用と対象期間を必ず確認してください。
おわりに
日本の広告賞は、総合系・コピー系・デザイン系・効果系と多岐にわたり、それぞれが異なる審査視点で広告やデザインの価値を評価しています。自社の強みや施策の特性に合った賞を選ぶことが、成果を正しく伝える第一歩です。
広告賞への取り組みは、外部からの評価を得るだけでなく、自社のコミュニケーションを見つめ直す機会にもなります。「内から外へ」、まずは自分たちの仕事をどの軸で語るかを定め、最適な広告賞に挑んでみてください。
お知らせ
日本の広告賞で評価される表現力は、企業の想いを言語化するインナー・コピーライティングで社会とのつながりを築きます。経営者のビジョンを言語化し、広報やPRと連携して伝達力を高めます。
株式会社ユー&ミーは、経営者・起業家・担当者が持つ想いの言語化「インナー・コピーライティング」を通じて、社会との新しいつながりを生みだします。事業会社からベンチャー企業・スタートアップまで、BtoCからBtoBまで、幅広い企業やサービスのコミュニケーション開発に携わってきました。
コピーライティングを軸として、広告・広報・PR・ネーミング開発・書籍プロデュースなどの手段を組み合わせたコミュニケーション戦略の策定を得意としています。コピーライティングに関する業務に加えて、講演や研修、メディア取材の問い合わせも、お気軽にご連絡ください。
監修者
梅田悟司(うめださとし)
コピーライター/ワークワンダース株式会社 取締役CPO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
博士(学術)東京科学大学 環境・社会理工学院 博士後期課程修了
1979年生まれ。電通、ベンチャーキャピタルでのスタートアップ支援を経て現職。企業の根幹となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定、コーポレート・メッセージ構築の第一人者として、経営層の思考の言語化を得意とする。
ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション統括などを担当。核融合スタートアップ「Helical Fusion」をはじめ、次世代スタートアップ企業のブランド戦略の立案に従事する。
武蔵野大学では、日本初となるアントレプレナーシップ学部の立ち上げにおいて、教員としても着任する傍ら、コピーライティングを中心としたコミュニケーション・ブランディングに携わっている。
CM総合研究所が選ぶコピーライターラインキング・トップ10に5年連続選出。カンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。
著書に、シリーズ累計35万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』『きみの人生に作戦名を。』(日本経済新聞出版社)などがある。4ヶ月半におよぶ育児休暇を取得し、その経験を踏まえた『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)を執筆。100を超えるメディアで取り上げられ、大きな話題となる。
参照
- (*1) 公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 – JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール|賞・コンクール|公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会
- (*2) ginza graphic gallery (ggg) – ART DIRECTION JAPAN 2025 EXHIBITION
- (*3) 株式会社ヘラルボニー – “HERALBONY Art Prize” won the Grand Prix in the Creative Innovation category at the “ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS.”
- (*4) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – プルークス制作の日本郵船様の新聞広告が「第74回日経広告賞」インフラ部門で最優秀賞を受賞!
- (*5) JDP – GOOD DESIGN AWARD
- (*6) 公益社団法人日本パッケージデザイン協会(JPDA) – 日本パッケージデザイン大賞
- (*7) 日本最大級の公募広告賞「宣伝会議賞」グランプリ決定!2月18日に贈賞式をYouTubeで生配信
- (*8) 電通ウェブサイト – 広告電通賞
- (*9) 朝日広告賞 – 第74回 朝日広告賞
- (*10) TYO – 2025年度 ADC賞で受賞!
- (*11) ギンザ・グラフィック・ギャラリー|プレスリリース・広報用ダウンロードシステム|ARTPR
- (*12) 公益社団法人日本パッケージデザイン協会(JPDA) – 2025年度受賞作品
- (*13) タイポグラフィ年鑑2026エントリーサイト
- (*14) DENTSU INC. – “MY JAPAN RAILWAY”-Delivering the Value of Railways with Warm Digital Stamps
- (*15) Flowplateaux – Selected for “Tokyo ADC Award / The Art Direction in Japan 2025”
- (*16) GOOD DESIGN AWARD – GOOD DESIGN AWARD